2023年版 渡辺松男研究14【寒気氾濫】(14年4月)まとめ
『寒気氾濫』(1997年)50頁~
参加者:崎尾廣子、鈴木良明、曽我亮子、N・F、
藤本満須子、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:鈴木良明 司会と記録:鹿取 未放
123 シベリアより寒気氾濫しつつきて石の羅漢の目を閉じさせぬ
(レポート)
シベリア方面から寒気団が日本へ南下して、西高東低の冬型の季節になる。本歌は、その寒気団の南下の影響を真っ先に受ける山間部の描写である。石の羅漢には様々な表情があるのだが、その中で黙想している羅漢の顔が、突然の寒さに「うー寒い」と思わず目を閉じたように見えたのだ。何も感じないはずの「石」の羅漢、その目を閉じさせた、という表現に、「寒気氾濫」のすさまじさが強く伝わってくる。(鈴木)
(当日発言)
★この歌から歌集の題をとったと作者が書いていたよね。(藤本)
★羅漢が目を閉じたのは「うー寒い」よりはもう少し深い哲学的な思いという印象でう
けとっていたんですが。(鹿取)
★石の羅漢を持ってきたのが渡辺さんの推敲の結果で、寒気氾濫に対して何をぶつける
か、これに定着するまで悩んだんじゃないですかね。(N・F)
★石の仏は歌の世界ではよくある素材で、斎藤史さんとか詠っていますし、ここで悩ん
だとは思わないですが。松男さん、山をよく歩かれるし、群馬県の育ちですから石に
彫られた羅漢というのはとても身近な存在だと思われます。吉川宏志さんが石の仏を
詠った好きな歌があります。正確に覚えていないのですが、仏を彫った石が風化して
しまうことを、ただの石にかえると言わないで、仏がこの石を去っていくという表現
が非凡だと思っています。(鹿取)
※鹿取の発言の歌。
秋雨に目鼻おぼろになりながら仏はやがてこの石を去る
吉川宏志『曳舟』(2006年)
『寒気氾濫』(1997年)50頁~
参加者:崎尾廣子、鈴木良明、曽我亮子、N・F、
藤本満須子、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:鈴木良明 司会と記録:鹿取 未放
123 シベリアより寒気氾濫しつつきて石の羅漢の目を閉じさせぬ
(レポート)
シベリア方面から寒気団が日本へ南下して、西高東低の冬型の季節になる。本歌は、その寒気団の南下の影響を真っ先に受ける山間部の描写である。石の羅漢には様々な表情があるのだが、その中で黙想している羅漢の顔が、突然の寒さに「うー寒い」と思わず目を閉じたように見えたのだ。何も感じないはずの「石」の羅漢、その目を閉じさせた、という表現に、「寒気氾濫」のすさまじさが強く伝わってくる。(鈴木)
(当日発言)
★この歌から歌集の題をとったと作者が書いていたよね。(藤本)
★羅漢が目を閉じたのは「うー寒い」よりはもう少し深い哲学的な思いという印象でう
けとっていたんですが。(鹿取)
★石の羅漢を持ってきたのが渡辺さんの推敲の結果で、寒気氾濫に対して何をぶつける
か、これに定着するまで悩んだんじゃないですかね。(N・F)
★石の仏は歌の世界ではよくある素材で、斎藤史さんとか詠っていますし、ここで悩ん
だとは思わないですが。松男さん、山をよく歩かれるし、群馬県の育ちですから石に
彫られた羅漢というのはとても身近な存在だと思われます。吉川宏志さんが石の仏を
詠った好きな歌があります。正確に覚えていないのですが、仏を彫った石が風化して
しまうことを、ただの石にかえると言わないで、仏がこの石を去っていくという表現
が非凡だと思っています。(鹿取)
※鹿取の発言の歌。
秋雨に目鼻おぼろになりながら仏はやがてこの石を去る
吉川宏志『曳舟』(2006年)