2024年度版 渡辺松男研究40(2016年7月)
『寒気氾濫』(1997年)
【明快なる樹々】P136~
参加者:泉真帆、M・S、鈴木良明、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:泉 真帆 司会と記録:鹿取 未放
337 明快な樹と君はいう冬の日に欅のもとを行くあかるさよ
(レポート)
君は欅のことを明快な樹だという。葉を落とした欅の木のもとを、うたがわず行く君を作者は憧れを持って見ている。作者はものごとをなかなか単純には割り切れず、渾沌や逡巡する思いの中に闘い戸惑い生きているのだろう。君をまぶしく感じている作者のすがすがしい心を思う。(真帆)
(当日意見)
★「君をまぶしく感じている作者のすがすがしい心を思う」とレポートにありますが、
ここでは君はいなくてもいいと思います。たとえば「明快な樹とわれは言う」だと歌
が扁平になるから君を登場させているだけですね。それで歌に奥行きが出た。松男さ
んの手法だと思っています。(慧子)
★馬場あき子だったら「たれか言ひたる」っていう手法ですね。ほんとうは自分で思っ
ているんだけど、それを「たれか言ひたる」と第三者をわざと登場させる。この歌で
も君は架空の人でもいいとは思うけど、現実の人がいても面白い。感性も知力も美意
識も詩的な力も作者と同等でないと言えない言葉だと思うのですが、そういう明晰な
君が恋人だったりしたら楽しいかな。そういう明快な木のもとをふたりでゆく明る
さ。(鹿取)
★あと、レポーターは「作者はものごとをなかなか単純には割り切れず」と書いてい
て、それはきみは 明快な樹だというけど、〈われ〉はそう単純に割り切れないので
は、と言いたいようだけれど、そこは違うと思います。〈われ〉も明快な樹だと
思っている、だから非在のきみに言わせているというような慧子さんの意見も出て
くる訳です。(鹿取)
『寒気氾濫』(1997年)
【明快なる樹々】P136~
参加者:泉真帆、M・S、鈴木良明、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:泉 真帆 司会と記録:鹿取 未放
337 明快な樹と君はいう冬の日に欅のもとを行くあかるさよ
(レポート)
君は欅のことを明快な樹だという。葉を落とした欅の木のもとを、うたがわず行く君を作者は憧れを持って見ている。作者はものごとをなかなか単純には割り切れず、渾沌や逡巡する思いの中に闘い戸惑い生きているのだろう。君をまぶしく感じている作者のすがすがしい心を思う。(真帆)
(当日意見)
★「君をまぶしく感じている作者のすがすがしい心を思う」とレポートにありますが、
ここでは君はいなくてもいいと思います。たとえば「明快な樹とわれは言う」だと歌
が扁平になるから君を登場させているだけですね。それで歌に奥行きが出た。松男さ
んの手法だと思っています。(慧子)
★馬場あき子だったら「たれか言ひたる」っていう手法ですね。ほんとうは自分で思っ
ているんだけど、それを「たれか言ひたる」と第三者をわざと登場させる。この歌で
も君は架空の人でもいいとは思うけど、現実の人がいても面白い。感性も知力も美意
識も詩的な力も作者と同等でないと言えない言葉だと思うのですが、そういう明晰な
君が恋人だったりしたら楽しいかな。そういう明快な木のもとをふたりでゆく明る
さ。(鹿取)
★あと、レポーターは「作者はものごとをなかなか単純には割り切れず」と書いてい
て、それはきみは 明快な樹だというけど、〈われ〉はそう単純に割り切れないので
は、と言いたいようだけれど、そこは違うと思います。〈われ〉も明快な樹だと
思っている、だから非在のきみに言わせているというような慧子さんの意見も出て
くる訳です。(鹿取)