2025年度版 馬場あき子の外国詠49(2012年2月実施)
【ロイス川の辺りで】『太鼓の空間』(2008年刊)176頁
参加者:N・I、井上久美子、崎尾廣子、曽我亮子、
藤本満須子、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:N・I 司会とまとめ:鹿取 未放
355 ロイス川の白鳥に餌をやりゐしがはぐれたり紛れたり雨のスイスに
(当日意見)
★ロイス川の長さや大きさが伝わってくる。(崎尾)
★こういう観光地だから白鳥の餌が売られているのだろう。354番歌(白鳥の貌つくづくみればおぢいさんいぢわる教師あり大方はをとめ)にあるようにおじいさん貌や意地悪な教師貌など白鳥はいろんな貌をしているものだと面白がって餌をやっていて、ふと気がついたら周囲に同行者はいなくなっていた。「雨のスイスに」とは随分大きく出ているが、見知らぬ国で迷子になり、雨さえ降っていて心細いのだろう。反面、迷子になったことを楽しむような気分が「はぐれたり紛れたり」の弾んだ畳みかけのリズムに表れているし、はぐれた自分を面白がってもいるようだ。(鹿取)
(後日意見)(2016年)
最新歌集『渾沌の鬱』(2016年刊)には「芭蕉より一茶に人気ありといふフランスにけふ初雪が降る」という、やはり国名を詠み込んだ歌がある。(鹿取)