かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 147

2021-01-05 20:24:37 | 短歌の鑑賞
   ブログ版 渡辺松男研究 17  2014年6月
       【Ⅱ 宙宇のきのこ】『寒気氾濫』(1997年)62頁~
       参加者:泉真帆、鈴木良明、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
         レポーター:鈴木 良明 司会と記録:鹿取 未放
            
 
147 存在をむきだしにせよ冬の山に烏山椒の棘(とげ)甲走る

 【レポート】現存在こそ、生けるものの原点であるから、その存在をむきだしにして生きよというのである。烏山椒は棘が多いのが特色だが、特に冬の山では落葉して、幹、枝などの棘が一層露わになり、その存在を強くアピールする。その意味で「音声が細く、高く、鋭くひびく」という意味の「甲走る」を棘の形容として用いたところ、巧みである。(鈴木)
 ※烏山椒(カラスザンショウ)ミカン科の落葉高木。幹、枝、葉軸などに棘があり、香りが特有。葉
は、羽状複葉で20対内外の小葉からなり、夏に、淡緑色小さい5弁花を円錐花序に密 につける。  
        

 
        (発言)      
★これは今までの歌より分かりやすい。存在をむきだしにせよという所と、棘甲走るという強い言
 い方がよく合っている。素直な一首。(泉)
★棘甲走るとしたところがすばらしい。(慧子)
★渡辺さんは山歩きしているから木や草や茸の名前を何でもよく知っていて、ダンコウバイとか烏
 山椒とか普通知らない植物が自然に出てくる。(鈴木)
★この歌は、この一連の最後に意識しておいているのですか?(泉)
★そうでしょうね。最初は「ぬるぬるの根」とか言っているし、ここは割と直接的に「存在をむき
 だしにせよ」とか言っていますが、やはり実存とか存在のありようとか考えている一連なのでし
 ょうね。もっともそれ考えていない歌、渡辺さんの歌にはないけど。また、それが人間のことだ
 けじゃないので、動物も植物も同じ次元で存在のありようを考えているんでしょう。それは渡辺
 さんにとってはごく普通の自然体の考えなんで。(鹿取)
★渡辺さんは頭で作る人じゃないから、体に自然に入っていて歌っているから。ただ、歌の解説す
 るときはこちらは仕方ないからメルロ=ポンティとか持ち出すわけだけど。(鈴木)

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