2024年度版 2024年版 渡辺松男研究33(15年12月実施)
【全力蛇行】『寒気氾濫』(1997年)112頁~
参加者:泉真帆、M・S、曽我亮子、藤本満須子、鹿取未放
レポーター:泉 真帆 司会と記録:鹿取 未放
271 声を張り上げるものこそ中心ぞ日輪へ鳴く葦切の口
(レポート)
【鑑賞】二句の終わりから三句にかけ叫ぶように「‥ものこそ中心ぞ」と詠っているが、この「声を張り上げるもの」とは何か。強く主張するものの喩か、渾身で唱える者の喩か、はたまた葦叢の葦の枯れ枝にとまり鳴いている一羽の葦切そのものか。鳴いている一羽の葦切の命こそが、この葦叢の中心だと思えたのだろう。決死の覚悟に主張している運動家のすがたにも見える。いずれにせよ一心に生きる命への讃歌ではないだろうか。(真帆)
(当日意見)
★歌の内容が大きいですよね。歌柄が大きい。(曽我)
★「運動家のすがたにも見える」という鑑賞ですが、私にもそのように見えます。日輪
というのは政府とか会社の上役とか、そういう人の叫びを葦切の口としてとらえてい
るんじゃないかと。(M・S)
★どういうところから運動家の姿を連想されるんですか。(藤本)
★日輪という絶対者のようなものに向かって一生懸命声を上げている、お前が中心だよ
と言っているようにも見えて。(真帆)
★そうすると何か世俗的な歌になってしまうでしょう。(藤本)
★これは比喩の歌ですか?(曽我)
★比喩ではないと思います。(鹿取)
★「声を張り上げるものこそ中心ぞ」っていう上句が分かりにくかったのですけれど。
「声を張り上げる」のは葦切ですよね。葦切が日輪に向かって一生懸命鳴いて声を張
り上げている、それこそ生きている世界の中心だ、っていうことですかねえ。
(藤本)
★「葦切の口」って止め方がどうかなあと思って、そこを教えて欲しいです。(真帆)
★この歌は大好きな歌です。韻律が面白いですね。初句から2句へかけて句跨りになっ
ていて、ちょっと読みづらいですね。これはわざと韻律を壊しているんでしょうか
ね。言葉に張りがあって強い歌です。比喩ではなく葦切そのものを詠んでいると思い
ます。生殖の為、生きるために一生懸命声を張り上げている、それも小さな葦切が日
輪に向かって声を張り上げている。声を張り上げているお前が中心なんだぞって、葦
切の応援歌みたいになってる。結句の体言止めによって、小さな鳥の口に歌を収斂さ
せている。真帆さんが最後に書いているように、命の讃歌だと思います。(鹿取)
【全力蛇行】『寒気氾濫』(1997年)112頁~
参加者:泉真帆、M・S、曽我亮子、藤本満須子、鹿取未放
レポーター:泉 真帆 司会と記録:鹿取 未放
271 声を張り上げるものこそ中心ぞ日輪へ鳴く葦切の口
(レポート)
【鑑賞】二句の終わりから三句にかけ叫ぶように「‥ものこそ中心ぞ」と詠っているが、この「声を張り上げるもの」とは何か。強く主張するものの喩か、渾身で唱える者の喩か、はたまた葦叢の葦の枯れ枝にとまり鳴いている一羽の葦切そのものか。鳴いている一羽の葦切の命こそが、この葦叢の中心だと思えたのだろう。決死の覚悟に主張している運動家のすがたにも見える。いずれにせよ一心に生きる命への讃歌ではないだろうか。(真帆)
(当日意見)
★歌の内容が大きいですよね。歌柄が大きい。(曽我)
★「運動家のすがたにも見える」という鑑賞ですが、私にもそのように見えます。日輪
というのは政府とか会社の上役とか、そういう人の叫びを葦切の口としてとらえてい
るんじゃないかと。(M・S)
★どういうところから運動家の姿を連想されるんですか。(藤本)
★日輪という絶対者のようなものに向かって一生懸命声を上げている、お前が中心だよ
と言っているようにも見えて。(真帆)
★そうすると何か世俗的な歌になってしまうでしょう。(藤本)
★これは比喩の歌ですか?(曽我)
★比喩ではないと思います。(鹿取)
★「声を張り上げるものこそ中心ぞ」っていう上句が分かりにくかったのですけれど。
「声を張り上げる」のは葦切ですよね。葦切が日輪に向かって一生懸命鳴いて声を張
り上げている、それこそ生きている世界の中心だ、っていうことですかねえ。
(藤本)
★「葦切の口」って止め方がどうかなあと思って、そこを教えて欲しいです。(真帆)
★この歌は大好きな歌です。韻律が面白いですね。初句から2句へかけて句跨りになっ
ていて、ちょっと読みづらいですね。これはわざと韻律を壊しているんでしょうか
ね。言葉に張りがあって強い歌です。比喩ではなく葦切そのものを詠んでいると思い
ます。生殖の為、生きるために一生懸命声を張り上げている、それも小さな葦切が日
輪に向かって声を張り上げている。声を張り上げているお前が中心なんだぞって、葦
切の応援歌みたいになってる。結句の体言止めによって、小さな鳥の口に歌を収斂さ
せている。真帆さんが最後に書いているように、命の讃歌だと思います。(鹿取)
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