かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 96

2020-09-15 18:55:10 | 短歌の鑑賞
   渡辺松男研究11(2014年1月)
       【『精神現象学』】『寒気氾濫』(一九九七年)四〇頁~
        参加者:崎尾廣子、鈴木良明、渡部慧子、鹿取未放
        レポーター:鈴木良明 司会と記録:鹿取 未放



   ランドマークタワーは、左端に切れて写っていないが、こんな場所に建っている


          左端がランドマークタワー、日が落ちた後


                   

96 『精神現象学』的巨大ビルを染め真鍮色の日は落ちてゆく

          (レポート)
 真鍮色は、黄色っぽいのだが、なつかしくあたたかみのある山の夕陽とはちがい、よそよそしくつめたい人工的な色彩だ。そのような日が、「『精神現象学』的巨大ビル」、すなわち人間の煩悩・欲情等が作り出したビルであり、※その中身も業務・文化・商業など雑多で不統一なものを内包している巨大ビル、の輝きを象徴するかのように染めて、やがて沈んでいったのである。作者は、このような思いを抱きながら「精神現象学的」という言葉を選んだに違いない。(鈴木)
※『精神現象学』は、初版に異常なほど誤植が多く、目次の内容が不統一、序文がふたつあ  るなど制作過程の混乱とヘーゲル自身の立場の動揺がからまって、混乱に満ち、難解。  


      (発言)
 ★『精神現象学』は、学生時代、読書会やったけど、私はほとんど理解できなかったです。
  それにしても、ここでなぜ精神現象学が二重括弧でくくられているのか、疑問です。本
  の大きさとかなら他にも大部の著作はあるので、この歌では当然本の内容について言っ
  ているのだろうとは思いますが。(鹿取)
 ★私は解説本で読んできたんだけど、それでも分かりにくかった。渡辺さん自身もこの難
  解な本の不統一な感じが頭にあってこの歌になったのではないか。意馬心猿のようなも
  のが作り上げたビルであり、雑多で不統一という両方があったのではないか。(鈴木)

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