かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

清見糺の短歌鑑賞 223,224

2022-10-12 09:51:06 | 短歌の鑑賞
     ブログ版 清見糺の短歌鑑賞    
                     鎌倉なぎさの会  鹿取 未放


223 食道の癌見てしよりたんじゅんなうんめいろんしゃとなりてやすけし
          2003年6月作

 何事にも積極的にはたらきかける気力を失ったときの妙な安堵感。ひらがな表記の微妙さと「やすけし」の己に言い聞かすような言葉がかなしい歌である。
   

224 くもりよのぢべたすれすれすべりゆくわれのけしんのごくらくトンボ
                 2003年6月作

 癌で2回目の入院をした頃の作品。「くもりよ」は世界の政治情勢も指しているが、軽くはない癌で入院を余儀なくされている自分の運命でもあろう。そういう暗い世を、自分の化身である極楽トンボが地べたすれすれにかろうじて飛んでいる。作者の死後に振り返ってこの歌を見るせいか、暢気者を罵っていう「ごくらくトンボ」が自分を突き放す働きを担いきれておらず、かえって哀れさを誘われる。

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