渡辺松男研究37(2016年4月実施)
【垂直の金】『寒気氾濫』(1997年)124頁~
参加者:石井彩子、泉真帆、M・S、鈴木良明、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:泉 真帆 司会と記録:鹿取 未放
304 幽霊を真上から見てみたきなりぞくぞくと闇を泳ぐ幽霊
(レポート)
(解釈)幽霊を真上からみて見たいものだ。きっとぞくぞくと闇を泳ぐ幽霊たちがいるにちがいない。
(鑑賞)前の303番(こちら向きにおみなの祈る絵をみれば祈るおみなの背後は怒濤)を受けているのではないだろうか。この連作ではタテとヨコに動くものに目を向けている。闇にいる霊はヨコに這うように泳ぐ。(真帆)
(当日発言)
★幽霊って前から来たり横から来るからぞっとする。それで作者はユーモラスに上から見て高みの
見物をしてみたいなと考えたのじゃないかな。泳ぐ烏合の衆のようにぞくぞくとやってくる幽霊
たちを上から見る。(慧子)
★これ空中を泳いでいるんですよね、確かに向こうにボーと立っているから幽霊は怖いので、泳い
でいたらきっと怖くないよね。「ぞくぞくと」は怖さの形容の意味もあるけど、「泳ぐ」と両方
に掛かっているのかな。(鹿取)
★幽霊って足が無いのよね。それで上から見るとまるで泳いでいるように見える。そういう視点の
面白さ。時空を超えている訳です。「ぞくぞくと」は怖い意味ではなくて、何かそういう泳ぐ形
の形容。(石井)
★ぞくぞくは集団の意味だと百鬼夜行みたいで楽しいけど、あれはお化けで幽霊ではないか。で
も、この歌、書いてある通りに読んで楽しくて好きですよ。(鹿取)
★人間界に置き換えると人間界もそんなものかと。(石井)
★松男さんは上から見る視点が斬新ですね。横から見たら怖くても上から見たら全然怖くない。ま
さに高みの見物ですよ。ぞくぞくはたくさんいるってこと。面白い歌ですよ。(鈴木)
(後日意見)(2016年5月)
せなけいこ作の絵本『ねないこだれだ』に空を飛ぶオバケが登場するという記事を読んだ。(朝日新聞1016年5月7日夕刊)絵本は読んでいないので、読み聞かせのYouTubeを見てみた。最後は夜更かしする子自身がオバケになって、他のオバケに手を繋がれて夜空を飛んでいくお話しだ。絵本なので「オバケ」となっているが、絵のイメージはいわゆる幽霊である。「オバケは怖いけれど楽しい存在でもある」とせな氏は言っている。1969年刊行以来、読み継がれているそうだが、刊行時、渡辺松男は十代半ばだ。もしかしたらこの本を読んだ経験があったかもしれない。刊行当時でなくとも子育て時代に手にした可能性もある。もちろん、渡辺松男は自在に想像力を馳せることのできる作者なので、この本に触れていなくても闇を泳ぐ幽霊の歌など充分に作ることは出来る。しかし、この絵本に触れた経験が反映していると考えてみるのも逆におもしろいかもしれない。(鹿取)
【垂直の金】『寒気氾濫』(1997年)124頁~
参加者:石井彩子、泉真帆、M・S、鈴木良明、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
レポーター:泉 真帆 司会と記録:鹿取 未放
304 幽霊を真上から見てみたきなりぞくぞくと闇を泳ぐ幽霊
(レポート)
(解釈)幽霊を真上からみて見たいものだ。きっとぞくぞくと闇を泳ぐ幽霊たちがいるにちがいない。
(鑑賞)前の303番(こちら向きにおみなの祈る絵をみれば祈るおみなの背後は怒濤)を受けているのではないだろうか。この連作ではタテとヨコに動くものに目を向けている。闇にいる霊はヨコに這うように泳ぐ。(真帆)
(当日発言)
★幽霊って前から来たり横から来るからぞっとする。それで作者はユーモラスに上から見て高みの
見物をしてみたいなと考えたのじゃないかな。泳ぐ烏合の衆のようにぞくぞくとやってくる幽霊
たちを上から見る。(慧子)
★これ空中を泳いでいるんですよね、確かに向こうにボーと立っているから幽霊は怖いので、泳い
でいたらきっと怖くないよね。「ぞくぞくと」は怖さの形容の意味もあるけど、「泳ぐ」と両方
に掛かっているのかな。(鹿取)
★幽霊って足が無いのよね。それで上から見るとまるで泳いでいるように見える。そういう視点の
面白さ。時空を超えている訳です。「ぞくぞくと」は怖い意味ではなくて、何かそういう泳ぐ形
の形容。(石井)
★ぞくぞくは集団の意味だと百鬼夜行みたいで楽しいけど、あれはお化けで幽霊ではないか。で
も、この歌、書いてある通りに読んで楽しくて好きですよ。(鹿取)
★人間界に置き換えると人間界もそんなものかと。(石井)
★松男さんは上から見る視点が斬新ですね。横から見たら怖くても上から見たら全然怖くない。ま
さに高みの見物ですよ。ぞくぞくはたくさんいるってこと。面白い歌ですよ。(鈴木)
(後日意見)(2016年5月)
せなけいこ作の絵本『ねないこだれだ』に空を飛ぶオバケが登場するという記事を読んだ。(朝日新聞1016年5月7日夕刊)絵本は読んでいないので、読み聞かせのYouTubeを見てみた。最後は夜更かしする子自身がオバケになって、他のオバケに手を繋がれて夜空を飛んでいくお話しだ。絵本なので「オバケ」となっているが、絵のイメージはいわゆる幽霊である。「オバケは怖いけれど楽しい存在でもある」とせな氏は言っている。1969年刊行以来、読み継がれているそうだが、刊行時、渡辺松男は十代半ばだ。もしかしたらこの本を読んだ経験があったかもしれない。刊行当時でなくとも子育て時代に手にした可能性もある。もちろん、渡辺松男は自在に想像力を馳せることのできる作者なので、この本に触れていなくても闇を泳ぐ幽霊の歌など充分に作ることは出来る。しかし、この絵本に触れた経験が反映していると考えてみるのも逆におもしろいかもしれない。(鹿取)
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