かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 54

2023-06-05 11:25:57 | 短歌の鑑賞
 2023年版渡辺松男研究⑦(13年7月)『寒気氾濫』(1997年)
    【八月十五日うつそみ、パーフェクト・エッグ】
     参加者:崎尾廣子、鈴木良明、曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:渡部慧子


54 乳白色の湯船に首を浮かばせて首はただよいゆくにもあらず

          (まとめ)
 情景は面白いけれど、この一連の中でどういう意図を持っているのか、難しい。乳白色の温泉もたくさんあるようだが、入浴剤もまたたくさん出回っている。景を詠むのが主眼の歌ではないので、温泉の大浴場でも家のこじんまりした湯船でもいいのだが、「浮かばせて」の連想で「海にお船を浮かばせて行ってみたいなよその国」という歌を思い出した。船ならよその国に行けるが、湯船に首を浮かばせてみてもどこにもゆけない。一連から考えると、ただ珍しい湯に浸かって浮かれている歌ではないだろう。この世に縛り付けられたうつそみは、たとえ気持ちよく湯船に浸かっていても結局どこにも逃れてゆけないということか。(鹿取)

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