かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男の一首鑑賞 410

2022-01-20 17:04:41 | 短歌の鑑賞
  渡辺松男研究49(2017年5月実施)『寒気氾濫』(1997年)
    【睫はうごく】P164~
     参加者:泉真帆、T・S、曽我亮子、A・Y、渡部慧子、鹿取未放
     レポーター:泉 真帆 司会と記録:鹿取未放


410 みずからのひかりのなかにわく涙きみのそとへそとへあふれだす

    (レポート)
「きみのそとへそとへ」が作者らしい表現だとおもう。前の歌を受け、山肌がすこしずつ崩れるように、君の内側から君の涙は外へあふれる。愛しい君の涙は「ひかりのなかにわく涙」と輝いてみえ、作者をもその光と一体になっているようだ。(真帆)


    (当日発言)
★上の句がいいと思いました。光りも涙も切り離せないものなのですね。(慧子)
★このきみはいとしい人なんでしょうかね。(A・Y)
★そうですね、「そとへそとへ」あたりを考えるともう少し抽象的な読みもできるように思うので
 すが。(鹿取)
★冷静に考えると主語はひかりなのかなという気がしてきました。ひかりみずからがひかりがひか
 りを生むように。(真帆)
★みずからは誰ですか? (T・S)
★ひかりです。(慧子)
★408番歌に「地球から遠ざかりゆく月の面君のおでこのようにかがやく」とあって相聞とも読
 めますから、恋人みずからが内面にたたえているひかりが持ちこたえられないようにいっぱいに
 なる、思いの純真さが涙となってあふれ出すというように読んでもいいのではないでしょうか。
 また、この一連光りがテーマですから抽象的に読んでもいいと思います。そういう二重性を持た
 せているのかもしれませんね。(鹿取)


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