2024年版 渡辺松男研究23
【眉間】『寒気氾濫』(1997年)79頁
参加者:泉真帆、かまくらうてな、渡部慧子、鹿取未放、
S・Iと鈴木良明は紙上参加
レポーター: 泉 真帆 司会と記録:鹿取 未放
186 作業着のままだしぬけに「宇宙図をみせろ」といって弟がくる
(レポート)
二〇〇七年から、文部科学省が全国の学校等に配布しているものに「宇宙図」がある。当歌集は一九九七年刊なのでこれとは違うが、兄である作者と、弟と、待ちに待った「宇宙図」が入手できたときの一場面と読んだ。宝島の地図を奪うに似た「だしぬけに」の気配。連作「眉間」の一首と読むと、祖父とともに農作業をしている弟かもしれない。(真帆)
(紙上意見)
◆弟は地を這うような(例えば日々の株価を気にするといった)現実社会で汲汲とした
暮らしをしているのだが、だしぬけに作業着、つまり背広姿で兄のもとにやってき
た。兄は宇宙に思念を向けることが好きで、宇宙の進化や起源が判る宇宙図を部屋の
壁に貼っていて、毎日眺めているのだろう。この兄のロマンチックな性格は、現実派
の弟とは合わないので疎遠だったのかもしれない、弟の「宇宙図をみせろ」で兄弟が
近づいたのである。その後は兄弟仲良く宇宙図をみているのだろうか。(S・I)
◆宇宙図―縦軸に宇宙誕生から現在までの時間の流れ、横軸に空間の広がりを表現した
もの。地上での作業をしていた弟が、だしぬけにこのような「宇宙図を見せろ」と
言ってくる、飛躍、意外性が面白い。(鈴木)
(当日意見)
★S・Iさんは作業着が背広だという解釈ですが、ふつつ背広を作業着とは呼ばないで
しょう。また、背広と宇宙図の取り合わせはギャップがあまりなくて面白くない。
この歌集『寒気氾濫』では冒頭二首めから弟の歌が出てきて、たとえば四首めは「お
みなには吃る弟がトラックの巨きさとなりきりて飛ばすよ」という歌です。この歌集
の弟像は一貫してブルーカラーという設定です。もちろん、現実に弟さんがいるか、
いてもどんな仕事をしているかは関係ありません。ただ設定上は現場で働いている弟
が作業着のまま、何だか急に宇宙図に興味をもって突然やってきた。お兄さんは常に
宇宙図を見ていることを知っている弟さんなんですね。その弟をいいねえと面白
がっている場面かなと。宇宙図そのものが無限に開いているので、そういうのびやか
さもありますね。(鹿取)
★宇宙図を見せろが脅迫めいた感じだけど、今すぐ見たいという気持ちの表れ。作業着
と宇宙図のアンバランスは鹿取さんが言ったとおり。(慧子)
★私は渡辺さんの歌集を全く持っていません。一首鑑賞の時でも歌集全体を見渡した鑑
賞でないといけないのでしょうか?(うてな)
★難しい問題ですね。一首のみの鑑賞でいいと思います。たまたま私は全部の歌集持っ
ているのでどうしても全体をみて言いたくなるのですけれど。(鹿取)
★S・Iさんが「兄のロマンチックな性格は、現実派の弟とは合わない」と書いていらし
て、全体を見るとそうなのかなあと。(うてな)
★いや、S・Iさんもこの歌集はもっていらっしゃらないので、この一首から判断された
んだと思います。(鹿取)
【眉間】『寒気氾濫』(1997年)79頁
参加者:泉真帆、かまくらうてな、渡部慧子、鹿取未放、
S・Iと鈴木良明は紙上参加
レポーター: 泉 真帆 司会と記録:鹿取 未放
186 作業着のままだしぬけに「宇宙図をみせろ」といって弟がくる
(レポート)
二〇〇七年から、文部科学省が全国の学校等に配布しているものに「宇宙図」がある。当歌集は一九九七年刊なのでこれとは違うが、兄である作者と、弟と、待ちに待った「宇宙図」が入手できたときの一場面と読んだ。宝島の地図を奪うに似た「だしぬけに」の気配。連作「眉間」の一首と読むと、祖父とともに農作業をしている弟かもしれない。(真帆)
(紙上意見)
◆弟は地を這うような(例えば日々の株価を気にするといった)現実社会で汲汲とした
暮らしをしているのだが、だしぬけに作業着、つまり背広姿で兄のもとにやってき
た。兄は宇宙に思念を向けることが好きで、宇宙の進化や起源が判る宇宙図を部屋の
壁に貼っていて、毎日眺めているのだろう。この兄のロマンチックな性格は、現実派
の弟とは合わないので疎遠だったのかもしれない、弟の「宇宙図をみせろ」で兄弟が
近づいたのである。その後は兄弟仲良く宇宙図をみているのだろうか。(S・I)
◆宇宙図―縦軸に宇宙誕生から現在までの時間の流れ、横軸に空間の広がりを表現した
もの。地上での作業をしていた弟が、だしぬけにこのような「宇宙図を見せろ」と
言ってくる、飛躍、意外性が面白い。(鈴木)
(当日意見)
★S・Iさんは作業着が背広だという解釈ですが、ふつつ背広を作業着とは呼ばないで
しょう。また、背広と宇宙図の取り合わせはギャップがあまりなくて面白くない。
この歌集『寒気氾濫』では冒頭二首めから弟の歌が出てきて、たとえば四首めは「お
みなには吃る弟がトラックの巨きさとなりきりて飛ばすよ」という歌です。この歌集
の弟像は一貫してブルーカラーという設定です。もちろん、現実に弟さんがいるか、
いてもどんな仕事をしているかは関係ありません。ただ設定上は現場で働いている弟
が作業着のまま、何だか急に宇宙図に興味をもって突然やってきた。お兄さんは常に
宇宙図を見ていることを知っている弟さんなんですね。その弟をいいねえと面白
がっている場面かなと。宇宙図そのものが無限に開いているので、そういうのびやか
さもありますね。(鹿取)
★宇宙図を見せろが脅迫めいた感じだけど、今すぐ見たいという気持ちの表れ。作業着
と宇宙図のアンバランスは鹿取さんが言ったとおり。(慧子)
★私は渡辺さんの歌集を全く持っていません。一首鑑賞の時でも歌集全体を見渡した鑑
賞でないといけないのでしょうか?(うてな)
★難しい問題ですね。一首のみの鑑賞でいいと思います。たまたま私は全部の歌集持っ
ているのでどうしても全体をみて言いたくなるのですけれど。(鹿取)
★S・Iさんが「兄のロマンチックな性格は、現実派の弟とは合わない」と書いていらし
て、全体を見るとそうなのかなあと。(うてな)
★いや、S・Iさんもこの歌集はもっていらっしゃらないので、この一首から判断された
んだと思います。(鹿取)
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