かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

清見糺の一首鑑賞  138

2021-08-02 17:30:37 | 短歌の鑑賞
  ブログ版清見糺短歌鑑賞21 99年   鎌倉なぎさの会 鹿取 未放


138 無力感おもたくあれどさはあれどかの日のようにデモに加わる
      「かりん」99年9月号

       同じ号の歌
青葉濃きひかりの午後を風絶えてゴドーもどこかへ行ってしまった
なみだより汗しおからく造られてかなしきろかもひとのからだは
無力感おもたくあれどさはあれどかの日のようにデモに加わる
わがデモは頭をたれてもくもくとただもくもくと歩くのみなる
アメリカの世界戦略フンサイとこころのなかでは叫んでいるのだ
「戦前」が歩きはじめている五月渋谷はいつものようなにぎわい
アメリカのアメリカによるアメリカのための世界へなびけ日の丸
つれづれなるままに日ぐらしテレビの灯をともしわずらう君が代の末
夕さればにわかに秋のこころ湧き飲むよりほかにすることもなし

 かつて政治的事件で拘留された話は、別項で書いたので省略するが、デモには六十年安保の問題も含め、相当に複雑な思いを抱いていたようだ。だから無力感が重たい。それでも意を決してデモに加わる。声を出すこともなく、ただ一隊の中にいて、頭を垂れて歩くだけだ。心の中では「アメリカの世界戦略フンサイ」と叫んでいるのだけれど……。同号の歌を勘案するとそう読めるが、一首で通じるか。「かの日」と言われても読者はとまどうだろう。

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