かまくらdeたんか 鹿取未放

馬場あき子の外国詠、渡辺松男のそれぞれの一首鑑賞。「かりん」鎌倉支部の記録です。毎日、更新しています。

渡辺松男『寒気氾濫』の一首鑑賞 137

2023-10-29 10:22:52 | 短歌の鑑賞
 2023年版 渡辺松男研究 16  2014年6月
     【Ⅱ 宙宇のきのこ】『寒気氾濫』(1997年)60頁~
      参加者:曽我亮子、渡部慧子、鹿取未放、鈴木良明(紙上参加)
      レポーター:曽我 亮子   司会と記録:鹿取 未放
               

137 樹の腸は高さ三十メートルへ達して月の春夜 直立

      (レポート)
 樹木の髄は高さ三十メートルにも伸び春の月夜を真っ直ぐに立って何とも立派で美しい。考えてみると腸はくねくね曲がりながら下へと向かうもの―しかし樹木の髄液は根から上へ向かう。この作者らしい面白い着想の一首ではないでしょうか…… (曽我)


      (紙上意見)
 樹の内部に水管(本当は何とよぶのか?)が通っているが、それを三十メートルの腸に見立てている面白さ。(鈴木)
 

     (当日発言) 
★春夜で、これも夜ですが、さっきの歌(ヒマラヤ杉月光環をつらぬけり真夜に見る樹
 は黒のどくどく)を別の角度から見ています。同じ樹でしょうかね。「月光環をつら
 ぬ」くような大樹で三十メートルもある。その中を水が垂直に走っている。「腸」を
 抱えて直立している巨樹の姿が春の夜に存在していて、なにか崇高な印象ですね。
   (鹿取)


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