毎日のように新型コロナウイルスの感染者数が発表され、各テレビ局が我先にとグラフや専門家の説明を交えながら多くの時間をかけて放送しています。
国民はそれを見て一喜一憂することで、なかなか普段の生活に戻ることができなくなっています。
確かに多くの感染者数を示すことで感染予防の啓発にはなると思うのですが、パンデミックになった今の時点で毎日の数字に一喜一憂して新型コロナだけを特別に怖がる必要があるのかなと思います。
例えば殆ど報道されませんが毎年のように流行するインフルエンザもコロナに負けないくらい危険な感染症で、ワクチンも治療薬もあるのに毎年のように多くの感染者が出て、多くの患者が入院して、そして亡くなっています。
参考までに新型コロナとインフルエンザの感染者数を比較してみます。
まず、国内で対策を行う感染症は法律により危険度に応じて1~5類に分けられています。それとは別に全く新しい感染症が発生した場合には危険度も感染力も不明で分類分けができないため、1年限定の指定感染症に指定されます。
指定感染症の対応は2類相当の厳しいものなので、感染者数の報告に関しても全ての医療機関で診断された全ての感染者の数が直ちに保健所に届けられ、県を通じて国にも報告されます。なので現在、コロナウイルスの感染者数が毎日集計されてマスコミを通じて国民に知らされています。
それによると本日現在の累計感染者数は148,902人となっており、この数字だけ見ると「あぁ、こんなに感染者が出ているのに・・いつまで増え続けるんだろう。」と心が暗くなってしまいますよね。
では毎年のインフルエンザの報告数はどうでしょう?
新型コロナがこれだけ報道されるのに、毎年流行するインフルエンザについては殆ど報道されることはありません。
インフルエンザの情報は国立感染症研究所のホームページ(発生動向調査報告)で見ることができます。
そこで昨シーズンのインフルエンザ感染者数を見ると115,002名となっています。
「新型コロナが148,902人でインフルエンザが115,002なら、やっぱりコロナの感染者の方がずっと多いじゃないか。まだ増えているし・・」と思う人もいるでしょう。
ただここで気をつけないといけないのは、新型コロナは全ての感染者の数が上がってくるのに対して、インフルエンザは5類の中の定点報告対象疾患なので報告されるのは一部の感染者です。つまり、全ての医療機関から報告されるのではなく、人口に応じて保健所ごとにお願いしている数か所の定点医療機関から報告された感染者数です。解りやすく言えば、定点以外の医療機関をどれだけ多くのインフル患者が受診しょうが一切報告には上がってきません。
なぜこういう方法なのかというと、インフルエンザや感染性胃腸炎など毎年のように大流行を起こす感染症については、全ての医療機関が全ての感染者を保健所に報告するとなると、医療機関も保健所も国も集計だけで大変な作業になってしまい、本来の業務に支障が出るためです。
なので全国にある約5000か所の定点医療機関からのみ数を報告してもらって、それを平均することで、全国の流行状況を把握するということになります。(〇〇県では「1定点当たり〇人」という表現をする)
感染症研究所はこの定点報告の数を参考に推計して、昨シーズンの国内インフルエンザ感染者数を1,200万人としています。つまり昨シーズンは新型コロナの約80倍のインフルエンザによる感染者が出ていたことになります。
入院サーベイランスによる昨年のインフルエンザによる入院患者数は20,389人ですが、これも報告されるのは保健所管内の基幹定点からのみなので実際は桁違いに多い数となると思いますし、そもそもコロナの方は陽性と言うだけで無症状でも入院させていましたから、比較ができません。
昨シーズンのインフル死亡者は約3,400人(新型コロナによる死亡は現在までに2,151人)ですが、こちらも実際はもっと多いと思われます。例えば高齢者施設等でインフル陽性の入所者が亡くなった場合でも、死因は診察医の判断なので、元々の持病による死亡とか老衰と診断されれば人口動態系でインフル死亡とは計上されません。
これに対し、コロナの方は検査でコロナ陽性の方が亡くなれば全てコロナ死として計上するとなっています。
参考 https://www.niid.go.jp/niid/ja/flu-m/flu-iasrtpc/9227-477t.html
今シーズンは現段階でインフルエンザの患者が圧倒的に少ないようです。
手洗いや消毒を徹底しているからとか、コロナウイルスがまん延しているなかで他のウイルスは勢力を伸ばしにくいとかいろいろ理由はあるようですが、とにかく毎年のインフルエンザもコロナ同様に怖がることができていれば流行は抑えられたはずだし、逆に言うとインフルは怖くないと言うのであれば新型コロナに対しても経済を止めるほどの大騒ぎをする必要は無いのでないかと思うのであります。