DT200Aの庫 (goo-blg)

レイルマガジン 303号



昨日(21日)発売されたレイルマガジンの最新号のP35とP37に私の写真が掲載されています。
 今回の特集は「”DF”ものがたり」でそのうち私は新幹線911型機関車の写真を提供しています。
 この写真の依頼を受けた時点での編集部の意向は911型のリバーサル(カラー)での形式写真と走行写真を一枚づつとのことでしが、ちょうど911型を撮っていた時期は現在と異なりカメラ1台でフットワーク良く撮るのが仲間内の主流だったため私もご多分に漏れず当時はモノクロでの撮影のみでした。よってリバーサルでの写真はストックがありません。また、形式写真はモノクロでストックがあるものの、911型は救援機関車と言う特殊性から、昼間に走る事は皆無で走行写真は私の手持ちがない事を編集部に伝えました。そもそも911型の昼間の走行写真を撮った人などまず居ないだろうと言うことも編集部に伝えました。
 後日、編集部からの回答はモノクロでも可。更に走行写真が無いならバルブ写真でもOKと言うことになり、今回の掲載となりました。
 今回の写真掲載で驚いたのが最近のデジタル処理の凄さで30年前のモノクロフイルムが鮮やかに描写されています。たしかに家庭用とは比較にならない高価なスキャナーを使っているのでしょうが、それでもその美しさには目を見張ってしまいました。



 上の写真は掲載された写真のコマ違いですが、この列車はどういう目的で運転された列車か?との質問を多く頂いているので、この場でご紹介しましょう。
 この当時は電気・軌道総合試験者(今で言うドクターイエロー)が0系ベースのT2編成しかない時代でした。そのT2が全般検査に入るのにあたり、入場期間の架線や線路の測定をどうするかが問題となりました。架線は地上から目視で検査することで乗り切ることになったのですが、線路(軌道)の測定は距離が長く、更には新幹線運行時間帯は線路内には立ち入れないために、夜間作業となりとても測定は出来ないということで品川の東京第一運転所(本所)で放置状態あった新幹線開業当初からの921形式を引っ張り出してきて測定することになりました。
 本来は911が牽引して160キロ運転で検測するのですが、911型を乗務出来る運転士の確保が大変で、また夏場の運転だったため冷房設備の無い911型では労働環境が劣悪になる事が予想されました。
 このころ0系は1・2次車が大量に廃車になっている時期だったために廃車前提の編成があり、その0系に921型を牽引させて運転することになりました。そこで選ばれたのが一線を引退した0系H18編成で、この編成を8両に組成換して921の牽引役としました。
 ただ良い事ばかりではありません。下りの検測では東京第一運転所大井支所から田町駅横のポイント(現在の品川駅管理下の53号ポイント)までは入換による推進運転で本線に出て来れるのに対して、大阪第一運転所(鳥飼)から新大阪までは営業運転中に推進運転を余儀なくされてしまいます。もし推進運転をするとなると駅長による通告運転で運転速度は30K/h以下の運転速度に制約され他の列車に及ぼす影響が計り知れません。そこで大阪方に911型を連結し牽引することによりATC運転が可能となり、且つ推進運転による運転保安低下の心配もなくなります。かくしてこの様な列車が実現したのであります。
 なおこの列車は数回運転され撮影日とは別に大阪第一運転所から新大阪まで911型の運転台に添乗もしています。
 その日は事前に添乗の許可を頂いて、夕飯を済ませてから大阪第一運転所に向いました。深夜に茨木駅から大阪第一運転所に向う職員用バスにたった一人で乗って心細かった事が一番鮮明な想い出です。
 大阪第一運転所の臨修庫で許可をくれた検査長に挨拶をして911型に向いました。すでに着発線で組成され、更にエンジンも廻され準備万態で運転台に乗り込みます。
定刻に911型牽引の臨時列車は動き出します。70信号を受けているので高ノッチに入れられ二つのDML61Zエンジンは唸りを上げ加速します。電車には及ばないもののどんどん加速し70K/h寸前で惰行となり本線に合流します。本線合流の前には18/1000の勾配があり、そこに差し掛かると列車はどんどん速度が落ちて行きます。すぐさま再力行するのですが、速度が上がるというより、30K/h程度でなんとか均衡しているという感じでした。
 この911型は関が原の20/1000区間で16両の新幹線電車を引き出せると言う触れ込みでしたが、9両の電車でこの程度なのに本当に16両を引き出せるかな?と思ったことを思い出します。
 911型が本線合流しても後ろが勾配にかかっているのでなかなか加速しません。この列車の後ろにはすでに営業列車は無いのですが、出来れば定時で運転したいと運転士は必至になっているのがわかりました。
 全編成が本線に入るとほぼ平坦線なのでどんどん加速し、遠くに新大阪駅ホームの灯りが見えたとき許可をくれた検査長が「勉強になったかい?」と聞いてきたので、思わず「楽しかったです。」と頓珍漢な答えをしたのを鮮明に覚えています。

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コメント一覧

だいりいぐ伊知郎
DT200A様解説ありがとうございました、でないと911が奥に閉じ込められちゃいますもんね(^^ゞ、ご足労おかけしました。
DT200A
だいりいぐ伊知郎様
ご投稿ありがとうございます。

言葉足らずでしたが、この911型は新大阪で切り離します。
 また下りで東京→新大阪場面で新大阪到着場面では、どのような運転形態をとったかは記憶にありませんが、たぶん営業運転前なので新大阪→鳥飼は推進運転で運転したのではないでしょうか?
だいりいぐ伊知郎
初歩的質問で恐縮なんですが、この編成のまま大阪に戻ってキタ時は、最後にどうやって牽引車を鳥飼から取り出すんでしょうか?それとも帰区の際は911はお呼びでない、のでしょうか。こりゃまた失礼いたしました(^^ゞ。
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