緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

今年限りの桜~一期一会

2007年03月27日 | 医療

昨年に比べると今年は少し桜が遅いようです。
昨年、これほど大変な患者さんは
もう出会わないかもしれないというほど
スタッフは皆、ケアで心身ともに
ぼろぼろになってしまったことがありました。
下の記事はちょうど一年前のものです。

この桜を一緒に見に行ってくれた研修医が
今ではレジデントとなり
先日、食堂で
「先生。
 去年一緒に見に行った桜を
 今年、今、受け持っている方に
 見せてあげようと思っているんです。」

薬剤だけではない・・と教えたレジの
その気持ちが本当に
嬉しかった・・

+++++++++++++++++++
お元気でしたか?
ここをクリックお願いします。
ブログランキング「緩和ケア医の日々所感」のクリックでもどってきます。
+++++++++++++++++++

(以下、2006年3月28日の記事から)

東京は今夜から冷え込むと天気予報。
ベットで寝たきりで首を横に向けられない若い患者さんにどうしても今年の桜を見せたくて、午後病室からベットごと外来棟横まで外出した。骨転移で体幹の骨は大変もろく、ちょっとした振動でも痛みを訴える。

安静時ですら一日静注モルヒネ1200mg以上、ケタラール200mg、ロピオン3回、ステロイド・・・という疼痛管理中。静注1200mgとは経口で3600mgに相当するが、意識は鮮明である。モルヒネを投与すると朦朧として正常な知的活動ができないと誤解されることがあるが、上手に投与すると高容量でもまったく意識に問題はない。

桜の木の下までスロープで行ける道を昼休みに研修医と下見しておいた。
上から舞い落ちる花びらと風、冬の後久しぶりに浴びる日差しに戸惑っていた。ご家族と写真を何枚も撮っていた。

悲しいことだが、もうしばらくすると別れの時がきてしまう。ここ何年も闘病を支えてきた若い夫婦の残された方にとって、どんなに大きな穴が開いてしまうことだろうか。緩和ケア医は傍にいることは出来ても、埋めることはこれから旅立たれようとしている方でなければ出来ない。生きている今・・

今日、せめて桜の木の下の写真が残せたら、きっとそれを胸に妻は生き抜いてくれると思った。

研修医や学生が何人も勉強に来てくれる。多くの研修医は薬剤の用い方を学びたいと言う。そして、多くの患者は痛みさえとってくれればという。薬剤の使い方は難しいことではない。本当に難しいのは、死に直面した苦悩は薬剤だけでは解決できないということにある。鎮痛薬を使って身体的苦痛は緩和できても、人生を閉じることは心が張り裂けそうになる。若い医師が、薬剤投与方法を学ぶことは基本であって、さらに、人を支えるということはどのようなことなのかを感じ、経験していってもらうことが今の目標である。

東京は、雨になった。明日は冬の寒さが戻ってくる。病院の満開の桜は散ってしまうだろう。今年の桜に一期一会・・

(以上、昨年の記事)

今年の桜は、今週末が見ごろでしょうか・・・

+++++++++++++++++++++++++++
ここ、クリックお願いします。人気ブログランキング参加中です。
今日も、お付き合いくださりありがとう。明日も、来て下さいね。
+++++++++++++++++++++++++++


コメント (3)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ロピオン | トップ | 新書・疼痛緩和の本 »
最新の画像もっと見る

3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
気がかりなことは・・・ (ポニー)
2007-03-28 09:16:45
先日、某TV局の情熱大陸に聖路加病院の林先生が出演されていました。林先生が必ず患者さんに語りかける言葉は「気がかりなことは何ですか?」だとおっしゃっておられました。私は薬剤師で在宅訪問を専門にやっております。我々薬剤師にはやれることに限界があるのかな?と日々悩んでしまいます。医師からみた薬剤師が緩和ケアに係る必要性は薬剤の管理以外に何があると思われますか?
返信する
見放されている? 忘れられている? (キャサリン)
2007-03-29 01:30:02
私の誕生日は3月14日。 江戸城、松の廊下。浅野 匠乃守 、切腹の日です。 心臓のアブレーション(8日)入院の時、「お宅の先生はご熱心で良いですね。毎日おいでになる」2年前の抗がん剤治療の為の入院の時、内科、外科、心臓の先生方、そして薬剤科の方々が、頻繁においでくださる。 感謝の気持ちでいっぱいでした。重篤になられると、先生の代わりに、緩和ケアの先生が一日に3度診られました。患者が何より怖いのは、声も手も目差しも無い事です!!! 多重癌から 5度目の桜を観ております。
返信する
Unknown (aruga)
2007-03-29 23:43:49
ポニーさん
私が薬剤師さんによくお願いするのは、その薬剤の副作用、配合性、安定性などです。この薬剤は粉砕できるのか、そのときの収斂性は?注射剤では、混注できるかなどなど・・はやり、薬剤のプロフェッショナルであってほしい。コミュニケーションは上手であったほうが、よりよいけれど、心がほっとできるような笑顔や医師にはいえないことがそっと言えるような位置にいてくださることがよいと思います。

キャサリンさん
無関心なほど、辛いことはないですね。医療に限らず社会に共通することだと感じています。色々なことを乗り越えられて、5年になるのですね。その力の源はどこにあるのですか?本当に素晴らしい。私も見習いたいと思います。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

医療」カテゴリの最新記事