緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

非がんの緩和ケア:末期腎臓病ESRD

2017年04月09日 | 医療

満開の桜が、雨に濡れた道に舞い、
ピンクの絨毯のような美しい週末でした・・・
友人のFBには沢山の大変綺麗な
桜の写真がアップされていました。




私は、医師になりたてのころ、
腎外科という診療科に所属していました。

腎移植、血液透析、腹膜透析といった
腎代替療法の外科的対処を行う診療科です。
移植患者さんの一般外科と泌尿器科に相当しました。

心臓移植はもとより
膵腎同時移植や肝移植、肺移植なども
社会的に話題となっていた時でした。

当時は、心臓移植は、
国内では実施不可であったため、
寄付を募り、渡米し移植を受けるといったことが
少なからず、回りで起こっていました。

そうした分野に席を置きながら、
すっきりとしないことがありました。




患者さんやご家族に、
移植をしますか?
それともしませんか?
と、患者さんの自己決定を促すのですが、
移植をしなければどうなるのですか?
という質問に
残念ですが、死にます・・と、
上級医は伝えていました。
ですから、移植をする以外に方法はないーつまり・・
原則としては、移植をするという
前提に立って物事は進められていました。



移植をするかしないかという選択肢なら、
移植をしない場合、
苦痛への対処が十分にされることが
約束をされた上でなければ、
移植をする
ということに対し、
しないかということが
同じ位置にはないのではないか
それは、
本当の自己決定ではないのではないか・・
そう感じていました。

ですから、
移植をしなければ、死にます・・
ではなく、
移植をしない場合も、
苦痛が最小限になるよう
全力で支えます。

そうでも医師に言ってもらえなければ、
移植をしないという選択肢は
ないだろうと思ったわけです。



私が緩和ケアに進んだ原点は、
がんではなく、
非がん疾患でした。





そして、今・・・
日本でも、少しずつ、非がんの緩和ケアの
話題がでるようになってきました。

先週、日本医師会雑誌の
緩和ケアの特集のための
座談会がありました。




腎機能障害の中でも
End-stage renal disease
(ESRDと略します)
という病態は
糸球体濾過量GFR<15ml/min/1.73m2
のステージ5を指します。

ここから、さらに腎機能が悪化すると
腎代替療法が必要となってきます。

2010年の世界の透析患者の割合は、
アメリカ20%、EU16%、日本15%、other49%
という報告があります。
http://vision-fmc.com/files/pdf/ERSD%20Patients%20in%202010.pdf

2010年のUNのデータでは、
アメリカの人口は3億900万人
日本は1億2700万人です。

つまり、
透析はアメリカ:日本=2:1なのに、
人口はアメリカ:日本=3:1ですから、
日本の透析患者数がいかに多いかわかります。

EUはヨーロッパの複数の国の集団ですから、
それとほぼ同じというのも驚きです。

(ただし、この割合には台湾は入っていないものと思われます)



2015年の日本の血液透析導入患者さんの平均年齢は
何と、69.2歳・・・
最多のピークは、75歳~80歳未満の5年間にありました。

日本透析医学会統計調査委員会:
図説 わが国の慢性透析療法の現状(2015年12月31日現在)
http://docs.jsdt.or.jp/overview/index.html

素晴らしいです、
透析医学会は毎年、
集計をまとめ、
公開しています。




高齢化と腎機能障害は密接な関係にあります。

高齢化が進むと、移植だけではなく
透析導入や維持透析の継続について
治療の選択を一緒に行って行かなければいけないケースも
増えてくるものと思われます。

そうした時も、苦痛症状が最小限になるように
力を尽くしますと説明ができるよう、
努力を続けて行きたいと思います。

私の医の原点に立ち戻る・・・・

そんな機会を日本医師会に頂きました。


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