緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

出版社。利益を越えて大切にしてほしいもの

2016年07月24日 | 医療

今月も、様々ながんに関わる報道がありました。
モルヒネに関わることとか・・・
これは、大変個別性が高いことのようですから、、
コメントのしようがありません。







医書出版においても
私的に今年に入ってから色々ありました。

親ががんになった子ども達をサポートする書籍を作りたいと思い、
比較的大手の医書出版2社に話を持って行ったところ、
一社は、数人の看護師さんにヒアリングし
興味がなさそうだったので
売れないとのことにて却下され、
もう一社は、がん看護学会でヒアリングしたところ、
あまり反応がよくなく、こちらも売れないと判断され、却下・・

それで、緩和領域の本を主体に出されている出版社に相談したところ、
開口一番、それ、大事ですよね。
作りましょう・・・
売れるかどうかも大切だけど、
まずは大事なことを世の中に出しましょう
と・・・



この3社の違いは、
がんを取り巻く人々のWell-beingに対する感度だと
痛感しました。

お引き受けくださった社の方は、
もともと、緩和領域の本を取り扱われていたので、
多角的な辛さの緩和の知識もお持ちでしたし、
何よりも同じ方向を向いてくださっていました。
話しの端々に、
少しでも皆がよい状態で共に生活していきたいものですよね・・
そんなメッセージが感じられました。

一方、断られた2社においては、
まず、売れることから検討が始まりました。







こういう一連の事を考える時、
スティーブ ジョブスの言葉を思い出します。

Your customers dream of a happier and better life.
Don’t move products. Enrich lives.

顧客はより幸せでよりよい人生を夢見ている。
製品を売ろうとするのではなく、彼らの人生を豊かにするのだ。


 

企業ですから、利益を上げることは大切です。
でも、それが最終的な、最大のビジョンではないはずです。

ものつくりによって、
共に生きる時間を豊かにしようとする姿勢がなければ、
よいものは作れず、
さらに、売れるものというだけの観点では、
薄っぺらなものが生まれてしまい結果的に売れません。





10年以上前に、国立病院に勤務していたころ、
フリージャーナリストの方に、朝日系の取材の繋がりで、
細々実践していた「早期からの緩和ケア」
というコンセプトを話したところ、
ある雑誌の編集会議に持って行ってみたいと
言ってくださいました。

まだ、がん対策基本法ができる前のことでした。
その編集会議では、意味がわからないと言われたそうです。
そして、女優の〇〇さんでもがんになれば、
そういうこともあるかもしれませんけどねと。

法律ができたとたん、社会は変わりました。
そうしたら、出版側の方々も急に変わりました。

物事の本質ではなく、
流行りすたりに流されるままです。





その時の流行っているものを
取り上げたいマスコミ的な観点では、
新しさを作って行ったり、
社会に投げかけたりはできません。

人生を豊かにするものを
皆で作っていくためには・・・
医療者だけではなく、
情報発信される方々、
ひいては、社会全体の方々と共に
ヘルス・リテラシーを学ぶ機会が
必要なのではないかと
このようなことがあるたびに、
強く感じるのです。




リテラシー
識字という意味に、さらに、適切に理解解釈・分析し、改めて記述・表現することまでを含む。

メディア・リテラシー
送り手の悪しき意図を見抜き、流されている情報をそのまま鵜呑みにせず、その悪影響を回避する能力

ヘルス・リテラシー
健康面での適切な意思決定に必要な、基本的健康情報やサービスを調べ、得、理解し、効果的に利用する個人的能力の程度を意味する。ヘルス・リテラシーに関する公衆衛生での目的は、社会市民の保健に関する知識・理解・能力を向上させ、より健康的な生活を送れるようにすることである。
(ウィキペディアより)


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私も (ゆうこ)
2016-07-30 02:10:33
情報化社会のなかで「売り上げ」というものがあまりにも重要視され過ぎていて、顧客満足度とか商品へのこだわりが軽視され過ぎている気がします。

今医療は国の医療費削減の政策に振り回され、ジェネリックだの在宅だのカッコいいネーミングで国民をだまし、苦しんでる人々を救うどころか高額な新薬で苦しめているのではないかと。

分子標的薬だの夢の新薬だのとうたい文句で引き付けておいて、ハイリスクであることすら忘れているのでは?と心配になることも。

癌と闘うということは撲滅が理想かもしれないけれど、副作用で苦しむばかりでは生きてる意味がないんじゃないかとしみじみ思う8871この頃です。

薬剤師として、癌患者の家族として、他に選択肢があってもいいと思うのです。
人間らしく生きたい。最期まで尊厳を保ちたい。そう願う人々もたくさんいるから本人はもちろんご家族にも緩和ケアのことをもっともっと知って欲しいし、正しい知識を学べるものがあればなあと。体験談が聞ければなおいいし。

興味本意の売るための書籍を真に受けて信じる人はたくさんいます。
けれども本当に患者様のことを思い、心配し、気持ちを伝えたいとか、正しい知識を持って欲しいと思う人の著書にはなかなか巡り会えないのです。

志を貫くことはとても労力を要するし様々な障害が立ちはだかりますが、屈することなく前向きに、が大事ですよね。
返信する
ゆうこさん (aruga)
2016-08-01 22:09:39
コメントありがとうございます。
まあ、いろいろありますが、自分がぶれなければいいかなって思います.
ケセラセラでいきましょうね。
返信する

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