緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

チームビルディングは、innovateな作業!

2009年06月21日 | 医療

学会が始まる前、緩和医療学会会員は8300名を超えていました。
学会初日、参加者は5000名を超えました。

最終的にどの程度だったかわかりませんが、
巨大な船に乗船しているような感覚です。







一日目の教育講演・・
樽見先生のチームビルディングの中で、
マネージメントとチームリーダーの違いを表にして示されていました。


マネージメントの役割は”管理”で、焦点は”システム”にある。
リーダーの役割は、”innovateーつまり、創造”であり、焦点は”人”にある。



この数か月、今までの病院では経験しなかった新たな局面に
考え、対処してきたこと・・・
まさに、この言葉に包括されていました。

緩和医療の実践者として
自分のために勉強し、スキルを身に付けてきたこととは異なり、

チームを形成させ
チームメンバーが自ら相手を感じ自分をコントロールできるように
メンバーのスキルアップを促すこと・・
これは、新しいチャレンジでした。

このことは、医療に特化したものではなく、
組織の中では、どこでも経験しうることだろうと思います。
私にとっては、家族とともに家を形成することにとても近い感覚でした。


「innovate」
何てよい言葉なんだろうと思います。

チームの中で、感情が渦巻き、一人一人が悩む姿をみたとき
正直、メンバーにとっても、何ともシンドイ作業だなあ・・と思っていました。

それを、innovateだという言葉で表現され、
ああ・・ 創造的作業だったんだと気づかされたとき、

仲間とチームを作っていることについて、再認識させてもらえたように思います。









教育講演の二つ目の下稲葉先生のレクチャーは、
沢山の方が涙を流されていました。

ただ、何人かの方に話を伺うと、
大変、感情を揺さぶられていて、
講演の内容を整理し自分のものにすることが難しい状況のようでした。



沢山のキーワードがありました。

自分自身の中にある恐れを知り、
そうした自分自身を用いること

コミュニケーションはスキルではなく、感情の繋がりであること

compassion
これには、同情とか憐みという訳ではなく、
「温かさ・やさしさ」という言葉を使っていたことにも注目したいところです。








3番目、小児の緩和ケアの細谷先生は、
私自身、何年も前から
一度レクチャーを受けてみたいと思っていた先生でもありました。

子供たちに
うそはつかないこと
わかるように
後のことを考えて
できるだけ早い時期に、病名をふくめた病状について
説明をすることが重要だと話されていました。

私達大人も、かつては皆、子供でした。
その時のことを思い出せば、
子供たちの感情を推し量ることは難しいことではないと言われました。

このことが、難しいと感じている私は、
子供の時の感覚から遠い所にいることに気が付きました。

思い返せば、私の子供たちに、何度となく
「お母さんはわかっていない」と言われました。
親である自分から、一歩出て、
子供だった時の自分を思い起こす作業と意識的にしてみようと思ったのでした。




この教育講演は、私にとって、大変意義深い時間となりました。



来年は、東京です。
かつて、緩和ケアを勉強していたときの指導医が大会長です。
今なお、示唆ある眼差しを投げかけてくださっています。

次の大会のポスターには、沢山の人の絵が描かれています。
その次回大会長から、私がその中の絵に居ると言われ、
どれだと思うかと聞かれました。

もっとも、なまめかしく若い女性の絵をさしたところ、
「そんな、わけないでしょ。」と、真面目な答えが返ってきてしまいました・・・
やっぱり・・・・・・・・わかっていますって・・・
で、気を取り直して、これですか?って尋ねたら、当たりでした。
絵に入れて頂いているって、本当に嬉しかったです。
組織委員として、よい会となるように心を注いでいきたいと思っています。

来年22年6月18日~19日
東京国際フォーラムです。
会場費がかなり高いので、参加費が値上がりすると思いますが、
何卒よろしくお願いいたします。

コメント (11)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 緩和医療学会が大阪で開かれます | トップ | 上から水・・・ »
最新の画像もっと見る

11 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
お疲れ様でした (toko)
2009-06-21 18:07:50
先生、お帰りなさい。はるばる大阪まで、お疲れ様でした。

どの講演もポスター会場も盛況で、そして勉強になるお話ばかりでした。

緩和の学会や研修会に参加するようになって、学術的なことだけではなく、心にしみわたる、本当にこころ温まるお話を聞かせていただきます。

先生が座長をされた教育講演もしかり・・・でした。涙、涙でした。医療に従事する仕事を選んでよかったと心のそこから思えました。

2日目の薬剤師のモーニングセミナーで、「心にかける」という言葉を教えていただきました。身体症状でフォロー出来なくなったら、自分の出番がないように思い、逃げ腰になってしまうのですよね。最後まで我々薬剤師も患者さんを心にかけていこう・・・と。

エネルギーをたくさんいただきました。明日からの勤務に生かせていけそうです。ありがとうございます。
返信する
お疲れさまでした☆ (ちー)
2009-06-21 20:56:59
やはり緩和ケアに携わる方は皆さん感受性が豊かなかたたちばかりなんだなぁ、ってすごくうれしく思います。本当にすばらしい。

『not doing but being』
先生はどう思われますか?ある腫瘍内科の先生は「すべきことがなくなるということはない!何かできることがあるから」とシンポジウムでずっと言われていました。私はなんだかすごく違和感を感じてしまったんです、なぜか。なんでなんでしょうね。。。私がナースだからでしょうか。ナースはずーっとbeingです。患者・家族の本当の願いは生きること、元気になることだとおもうので最期まで何かしらの可能性を信じて治療していく行為はbeingであるとも見えます。

なんだかうまく言えませんが、色々と考えるいいきっかけになりました!来年度の開催時には私はどんなふうになってるんやろうなぁ~って考えてしまいます(^-^)

先生、ありがとうございました!
返信する
コメントありがとうございます (aruga)
2009-06-21 22:03:54
tokoさん
早速のコメントありがとうございます。
「心にかける」
よい言葉ですね・・ 学会で得たキーワードは、1年間の自己研鑽のコアになってくれるものだなあと私も感じます。
2日間、お疲れ様でした。

ちーさん
not doing but beeing
やれることがあるに越したことはないと思います。行動していることはdoingだと思います。
積極的アクションで関われれば、私たちも楽だろうと思います。
でも、無力感に襲われることは少なくありません。死に対峙している方の前で立ち尽くすこともあります。それでも逃げ出さない、無関心ではないという意味でのbeingだと思っています。

一方で、やれることがあるのに、ただ居るだけでは専門職ではないと思うこともあります。
言葉の美しさから、beeingを使う方もいます。でもそれは違うかな・・

以前書いた記事もご参照ください。
http://blog.goo.ne.jp/e3693/e/b272bc9a9c41c7af711d80fa5a2b7b74#comment-list

ひとまず、学会お疲れ様でした!
返信する
座長お疲れ様でした (itopie)
2009-06-22 13:32:41
下稲葉先生の語りかける(情に訴える)講演に涙腺便秘症の私もついポロリ・・・
聖路加国際病院の細谷先生:「小児における緩和医療」は講演の内容も非常に勉強になりましたが、スライドの手書き風文字の「フォント」がとても気になりました。Power Point にあるフォントなのでしょうか?
今回の学会は「痛み以外」のセッションに意識的に参加しました。緩和の範囲はなんと広いんだろうと改めて感動です。
返信する
確かに。 (ちー)
2009-06-22 19:47:29
何をしてあげていいのかわからず傍にいるのに耐えれなくなることが確かにあります。

色々と一人で考えていると頭がごちゃごちゃしてきてしまいます…(;_;)ダメですね、私。
返信する
コメントありがとうございます (aruga)
2009-06-22 22:04:34
itopieさん
あのクレヨンのスライドはさすがでした。
画用紙に手書きしたものをPDFで取り込まれたのかなあと思いながら拝見していました。
大人の風貌で、子供の心を持っていらっしゃったり、長年追及し続けてきた生きざまをもっていらっしゃったり・・それが滲み出たレクチャーでした。

ちーさん
そうした場面に直面した時、ハッと気がつくことがあるのではないでしょうか。
返信する
お疲れ様でした。 (若紫)
2009-06-22 22:16:43
先生、学会、お疲れ様でした。
事前準備から当日までずっと大変だったのでしょうね。
感謝しています。

今回の学会に参加しながら、わが弱小緩和ケアチームをどうしたら軌道に乗せられるか、いろいろ考えました。
今日、早速ミーティングでメンバーのみんなにアイディアを話し、いくつかはすぐに実行に移すことになりました。

これからもいろいろ勉強させて下さいね。

ところで先生は、私が想像していたよりもずっと可愛らしい方でした!
なんだか嬉しかったです☆
返信する
若紫さん (aruga)
2009-06-22 22:32:43
コメントありがとうございます。
学会は、依頼座長でしたので、まったく大変ではなかなったのです。今回の大会長の手腕です。(大学の先輩なのですよ)

アイディアを出し、実行に・・
これこそinoveteですね!!
ここにも、同志が・・って思いますと、嬉しいです!!

サザエさんちのワカメちゃん並みに髪をばっさり切ったので・・・ですかね・・
上は20歳の子供がいるんですよ~
返信する
以前から伺ってみたかった事。 (PANDAの妻)
2009-06-29 01:22:37
実は、素人ながらずっと以前から、先生に伺ってみたかった事がありました。
それは、先生が子供達の緩和ケアについて、どのようにお考えなのか、思っていらっしゃるのか、という事でした。
この記事で、細谷先生のご講演もお有りだったという事で、先生のお気持ちが少し書かれている箇所を拝見して、以外な気持ちでした。だから、先生は成人の方を診ていらっしゃるのですか?もっと言えば成人の方しか診ていらっしゃらないのですか?
実は、この質問をしたいと思ったきっかけは、まさに、細谷先生の病院での子供達の癌との闘いの映像でした。痛みとの闘いが中心な感じを素人は拝見していて受けたからです。痛みが軽くなれば、もっと笑顔がたくさんになって免疫力が上がるのではないかなぁ…と。本当に素人の浅知恵ですので、笑止して結構なのですが、先生のような方がお子さん達の味方にいらしたら、お子さん達も心強いのではないか…と。
すみません、得手勝手なコメントでした。
返信する
PANDAの妻さん (aruga)
2009-06-30 00:01:55
こんにちは。
小児の緩和ケアは、基本は、主治医が行えることでしょう。子供達とその両親が対象となるので、複数で対等な形でチームを組むとべクトルが入り乱れてしまう可能性があります。
なので、主治医と患者さん達がしっかりとケアに取り組めることを目的に、緩和ケアチームも関わります。
私が依頼を受けた最年少は、2歳でした。でも、お目にかかることはなく、薬剤の投与方法をバックアップしていました。
次に若い(小さい)お子さんは、3歳でした。抗ガン剤の関節痛に対し、オピオイドの投与方法をやはり、主治医に指導するような形でした。一度だけあったことがありますが、それは副作用の診察目的でした。
緩和ケア病棟で看取った最年少は、16歳です。
自己決定を重視する緩和ケア病棟の特性と、小児がんは治療が積極的に行えるものが多いので、大人のがんとちょっと異なることも理由です。
細谷先生は、沢山の方々をチームを組まれています。ラウンドミーティングの写真も出されていましたが、そこには、緩和ケア医も入っておりました。意見を集約するかじ取りは、小児科の医師が行うことが重要です。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

医療」カテゴリの最新記事