緩和ケア医の日々所感

日常の中でがんや疾病を生きることを考えていきたいなあと思っています

友人夫婦の著書 『夫婦の歳時記』

2006年08月05日 | つれづれ

友人が句集を送ってくれた。 その中に、俳句と随筆からなる一冊が入っていた。 『夫婦の歳時記』

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高校時代の同級生である友人であるが、結婚したことや子供が出来たことなど、折に触れて友人仲間から聞いていた。 が、詳しいことは何も知らなかった。 というか、この夫婦の歳時記を読んで、あまりに何も知らなかったと感じた。
ご主人について、知っていることといえば、高校の恩師の息子さんで、友人の大学の先輩でもあり、俳句の世界では有名な方。 飛行機が苦手。 そんなご主人と、この本の中で俳句をめぐってのエッセイでやり取りをされている。 バレエのパ・ド・ドゥみたいだなと思いながら本を開いた。

恋の句などを読むと、それに続く随筆では軽くかわしているのだが、友人の10代の頃の記憶しかない私にとって、何と艶やかな関係なんだろうと驚いた。

何度も何度も読んだところは、”春を待つ妻”というページ。
ご長男の出産で退職した友人を黄あやめと例え、

黄あやめや険しき坂に妻たちて

中村汀女の 「外にも出よ触るるばかりに春の月」 の裏返しかもしれないと言いつつ読んだ句は、

春月や家の中なる妻を見て

ん?どういうことだろう・・
と、思いつつエッセイを読むと、

「残業をして夜遅く帰って来ると、家の居間に灯りがともっている。まだ乳飲み子だった長男が目を覚まして泣いているのを妻が抱いて揺すってあやしている。どこの家の母親も同じようなことをしているはずなのだが、まだ私が帰って来たことに気づかない妻の姿をガラス戸の外から見ていると、妙に感傷的になる。家の上には春の月があった。」(本文より)

高校の英語の教師をしていた友人は、妊娠・出産という人生の岐路において、仕事をやめるといった険しい(といっていいのかわからないが)選択をしてきたのだろう。 そんな友人が夜も更けた時間に母として子をあやしている姿をみて、いたたまれない気持ちに、ご主人はなられたのだろう。 汀女は ”外へ” と詠んだ綺麗な春の月。 専業主婦になり家の中にいるということを鮮明に意識され、心を砕くご主人の気持ち。 自分のことにダブらせ、ちょっぴり涙を浮かべてしまった。

今、友人はまた異なった険しい坂に立つ。でも、それを険しいとはいわず、たおやかに、”皆に恩返しが出来ますように” と、本に添えられた手紙に書かれていた。 本当に何て素敵な方なのだろう。 今度の坂、友人として心の伴走者でありたいと強く思っている。

『夫婦の歳時記』 蝸牛社 ISBN4-87661-309-5 c0392

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