新説百物語巻之一の5 津田何某真珠を得し事
2019.11
京の蛸薬師通りに、中程の昔(この場合は、室町時代であろう)に、津田の某と言う人がいた。
この人は、きわめて身分の高い人の孫であったが、四五分(一分は、3.75g)位の重さの真珠を七粒所持していた。
このことについて、津田氏は、常にこのような話を語っていた。
「私が、七歳の時、いつもの様に、食事をしていたが、カチッと歯に当たる物があった。
よくよく見れば、真珠であった。
貝の類を食べたわけでもないのに、不思議な事であると、子供心にも思って、何となく箱の中に納めておいた。
その後、田舎より京に移って、十五歳の春に、またまた、飯の中に真珠が一粒あった。
よくよく思い出せば、九年以前と同月同日であった。
それより成長に従って、あちこちと転居したが、六十歳の時までに、飯の中から真珠を得ること、あわせて七粒であった。
近所の老婆などは、ありがたい舎利であろう、と拝みに来もしたそうである。
よくよく調べれば、宝貝の珠であって、本物の真珠であった。」
その津田某は、老後は、伊勢で隠居されたそうである。
しかし、今もその子孫が、真珠を持っているかどうかは、知らない。」
訳者注:これは、怪談ではなく、奇談、奇聞である。
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