新説百物語巻之一の3 丸屋何某(なにがし)化物に逢ふ事
2019.11
近い頃の事である。
三条の西に、丸屋何某(なにがし)と言う薬を商う人がいた。
ある時、仲間の会合があって、東山のあたりに行き、
2019.11
近い頃の事である。
三条の西に、丸屋何某(なにがし)と言う薬を商う人がいた。
ある時、仲間の会合があって、東山のあたりに行き、
河原で酒などを飲んで、夜ふけて一人で、四条を西の方に帰っていった。
川原で下の方を見れば、うす月夜に、乞食とも見えないものがうごめいているのがあった。
酒の勢いもあって、そばに立ちより、よくよく見れば、人の姿形はしているが、顔とおぼしき所に、目口鼻耳もなく、朝瓜の大きさをした頭があって、ものをもいわず這い回っていた。
その時はじめて、ぞっとして怖くなり、足早に帰った。
夜が明けて、友だちなどに、その事を語った。
ある人が、ぬっぺりぼうと呼ばれる化け物であると言った。
その後、またその丸屋なにがしが黒谷へ商いに行って遅くなった。
初夜(19時から21時)のころ、二条河原を、先達っての事を思い出しながら、小気味悪く感じながら通った。
すると、河原の中程に、かの物が、またうごめいていた。
足はやに通ったが、するすると這って来て裾にとりついた。
これは、かなわないとふり切って、一さんに我が宿に帰りついて、始めて正気になった。
我がきるものの裾を見れば、特別に太い毛が十本ばかりついていた。
何というものの毛であるかを、見知っている人はいなかった。
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