江戸の妖怪、怪奇、怪談、奇談

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新説百物語巻之三 2、櫛田惣七鷹の子を取りし事

2021-12-19 00:09:43 | 新説百物語

新説百物語巻之三

2、櫛田惣七鷹の子を取りし事                    2021.12

京の西嵯峨の辺りに、櫛田惣七(くしだそうしち)と言う浪人がいた。

常に山野にいたって殺生(せっしょう;生き物をころす。狩猟)などしていた。
山城と丹波の境に、俗に龍門と言う所があった。
その所に殊にすぐれて大きな大木の松があった。

その梢に一組の鷹が巣を作って子を生んだ。
惣七は、その鷹の子を欲しいと思ったが、大木の事であるので、仕方なく、杣(そま)人を雇って、その子をつかまえさせて、持ち帰り育てた。

その翌日、その所に行って見れば、彼の親鷹が、巣をめぐりながら、悲しく鳴いている様子であった。
帰って友だちなどに話をした。
すると、ある人が、
「鷹の子を取ったら、その後へ紅の手拭を代わりに入れておくものだ。そうすれば親鷹は、子供を捜さないものだ。」と語った。

又々杣人(そまびと:きこり)を雇って、紅の木綿を三尺ばかり入れて置いた。
その日より、彼の親鷹は、どこに行ったのか、悲しむ声もなくなってしまった。
その後、十日ばかりも過ぎて、惣七がふと表へ出てみると、鷹が一羽来て、何かを口にくわえて、家の上を何度も飛びめぐって、惣七の前にくわえた物を落した。
そして、そのまま、どこかへと、飛び去っていった。
その物を取り上げて見れば、以前巣の内へ入れて置いた紅の手拭に琥珀が包まれていた。
重さは、六十匁あったという。
何処から持ってきたのであろうか、極上の琥珀であっったそうである。

その琥珀を見た人が、この話をしたのである。

 

 



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