新説百物語巻三 8、猿 子の敵を取りし事
8、猿 子の敵を取りし事
猿の敵(かたき)討ち
若狭の国の百姓で、二匹の猿を大変可愛がっていた者があった。
二匹の猿は、子を一疋生んで可愛がって育てていた。
ある時、この小猿が、庭のまん中で遊んでいたのを、空から鷹一羽飛んで来て、軽々とひっつかんで、大空に飛びさった。
二疋の親猿たちはそれを見て、或いは梢にのぼり、又飛び上って悲しみ泣いたが、何方へ行ったのか、どうしようもなかった。
それから、二疋の親猿は食べもせず、ただただ呆然としていた。
しかし、二三日も過ぎてから二疋の猿は、どこへ行ったか、朝早く出て帰ってこなかった。
皆々 不思議だと思っていたが、やっと八つ時に帰って来たが、魚のはらわたと覚しい物を持って帰ってきた。
その魚のはらわたを、一疋の猿が頭にのせて、前に子猿のいた所にうづくまっていた。
半時ばかり過ぎて、又空より鷹が一羽飛び下りて来て、かの魚のはらわたをつかんで去ろうとする所を、いきなり下から飛びついて、その鷹を捕まえた。
もう一匹の猿も出て来て、二疋して羽根をむしって食らいつき、なんなく鷹を喰い殺して、子猿のかたきを取った。
動物の知恵には、恐るべきものがある。(と語った)
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