江戸の妖怪、怪奇、怪談、奇談

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「天草島民俗誌」 河童雑記 その1 から その5 

2021-11-24 00:45:38 | カッパ

「天草島民俗誌」における河童の記述

これからしばらく、「天草島民俗誌」のカッパの記述を紹介します。
                            2021.11


「天草島民俗誌」 河童雑記 その1 から その5


「天草島民俗誌」(浜田隆一著、東京郷土研究社、昭和7年)は、1932年の刊行ですが、内容的には、江戸時代の伝承と変わらないと思われます。
そこで、紹介します。なかなか、面白い内容です。


以下、本文。

河童雑記
天草では一般に河童のことを 「ガワンタ」という。
ここに「ガワンタ」の話を記しつけて見よう。


本渡町   「天草島民俗誌」河童雑記  その1
冬は山に、夏は海辺に居て子供の守をする。
昔、本渡山口の橋懸庵では河童が人畜を荒すので、川の魚を漁ることを禁じた。
一方では、寺の坊主を頼んで、河の底にお経を埋めてもらった。
それから後は、魚は盛に繁殖し、笊などで一度に何百尾でもすくいとる程になった。
そしてそのお経さんの力で河童が尻をとらぬ。
ところが十年の西郷戦争の時、賊軍が天草に逃げて来て、ここの魚をとり尽くしたことがあった。
(八十七才になる婆さんの話)  
      
 
本村(ほんむら)下河内(今は、天草市の一部)  「天草島民俗誌」河童雑記  その2
下河内の佐藤という庄屋が、非常に漁好きで、夏季は、毎日 網をかついで、広瀬川に鮎をとりに行った。
或る日、七尋淵(ななひろぶち)という深い淵で網を引き上げると、何か重いものが入って来た。
見ると人間の三・四才位の子供の様で、頭が皿の様に凹んでいる。
それを縛って帰り、馬小屋の前に、縄で縛りつけておいた。

やがて下男が馬に食物をやりに行くと、歯をむき出して威嚇して来た。
下男は怒って、頭から水を浴びせかけたら、急に元気づいて、繩を切って逃げてしまった。
河童だったのだ。


相撲をとる事が好きで。
冬は山にのぼって黒木の根方に居ると云う。
相撲とる時、先づ頭を下げて挨拶するのは、河童と昔相撲をとったときの故智を学んだと云う。

近い頃の話である。
夏の夜、ある海岸の漁帥の畑の茄子は、総(すべ)て歯の食いあとがついてあった。
そして、その生臭いことは、道にまで残っていた。
これは河童の体臭である。

 


牛深町   「天草島民俗誌」河童雑記  その3
或る漁師が魚を釣っていると、河童がかかって来た。
一生懸命に糸を引っ張っていると、河童の二本の手だけが、引き抜けて来た。
それを持って帰って、戸棚の中に蔵(しま)っておいたら、毎晩一人の女が河童の腕を返してほしいとやって来た。
一週間目に、ついにそれをくれてやった。
するとその女は非常に喜んで二珊の本をくれた。
一冊は魚釣の秘伝。
一冊は河童角力(すもう)の秘法であった。
その漁師は、その後、大力士となって、大金持ちとなった。
女と言うのは、手を取られた河童の妻であった。


牛深と洲ロとの間の海岸に、大きな石がころがっている。
この石については、こんな故事がある。
昔 河童が山から下って、河に行くところを、ある百姓に見つけられて、虐められていた。
そこへ、庄屋が通りかかって助けてやった。
河童は、そのお礼に、大石を沖から運び上げて来た。
これがその石である。
この石に、小石を投げあげてうまく載ると、歩くとき躓かない。
今でも河童石といって誰でも小石を投げかける。

 

盆の日に泳ぐと、河童に尻をとられる。「天草島民俗誌」河童雑記  その4
      
櫨宇土村(はじうとむら:前は本渡市、今は、天草市の一部)  
ある子供が、トドロ淵という所で泳いで溺れた。
その死骸が浮き上ったとき、身体には、爪で引っ掻いた跡や、歯の跡のやうなものが見えていた。
医者は、水底で苦しさのあまり、自分で引っかいたのだ、と言い、
易者は、河童の所業(しわざ)と言う。
結局村人は、河童の所為(しわざ)として僧侶や神官をたのみ祈祷をしてもらった。
その後、この淵には、河童は姿も見せず、たたりも無くなったと云う。
 
     

御領村   「天草島民俗誌」河童雑記  その5
 
河童が尻をとった時は舌がなくなる。

仏様に供えたご飯をいただいていると尻をとられぬ。

鉄に触れれば、河童の身体は消えてしまう。
 
何某(なにがし)と言う相撲とりが、御領の溜池で河童と相撲をとった。
河童の身体は非常に冷たい。
夜どおし相撲をとって、遂に自分の身体が冷てしまい、やがて痺れてしまいそうになった時、幸にも夜が明けた。

御領にジドー岩といって、大小並んだ岩がある。
これは、昔 爺さんと河童と相撲をとって、そのまま岩に化したのだという。
大きいのが爺さん、小さいのが河童。    

 



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