「対馬夜話」の怪奇な話 楽郊記聞 中川延良
2022.4
対馬の幕末の藩士である中川延良の書いた随筆集。 「対馬夜話」(「楽郊記聞」)は、当時の、対馬の事を、活写している。
その内に、ごくわずかだが、怪しいことを書いた部分がある(志怪)。
この「対馬夜話」は、「楽郊記聞」という表題で、平凡社の「東洋文庫」にある。
「対馬夜話」の怪奇な話 その1
人魂が、ちぎれた話 若年の頃、8月12、3日の夜、2、3人と一緒に、一ッ橋の東の河端を下りたことがあった。
会所の少し下に行った頃、昌元の浦の方から人魂が飛んできて、大橋の方に向かって行った。
往来の人々が、アレーと見ているうちに、川向こうの荒木という紺屋のもがり竹の垣根の梢に、尻にひいているものが、掛かって先に進めなくなってしまった。
いかにも、先に行きたい様子であったが、離れられなかった。
人々が、東西の川端に立って、あれあれ、と言っている声に、いよいよ先に行こうとしていたが、まとわりついてなかなか離れなかった。
しかし、ついに、人魂の途中から引き切れて、頭の方は、山下の方を指して飛んで行った。
竹に引っかかっていたのは、なおも離れようとの勢いであった。
しばらくして、ようやく、コレも竹からはなれて、頭の方の後を追って、山下の方に向かって行った。
その時は、頭の方は、もう見えなくなっていた。
これは、私の父(対馬夜話の著者である中川延良の父親のこと)の語ったことである。
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