2024.02.05撮影
新しいヘレボルスさんをお迎えしようと、2月の初めに園芸店へ行ってきました。目的は、新しい遺伝子の注入。
まず見つけたのが、このピンクの縁取り(ピコティ)のヘレボルス。花茎をすくっと伸ばし、大型の花を横に向けて咲かせている花で、その葉の特徴とも合わせ、去年求めたヘレボルスと同じ園芸種の色違いだ、とすぐにわかりました。
2023.02.04撮影
直前の画像が、去年購入した
ヘレボルス x グランドルフェンシス「アイスンローゼズ、ホワイト」です。
Helleborus x glandorfensis 'Ice N' Roses' white
冒頭の画像が、今年購入した、白地にピンクの覆輪(ピコティ)、
ヘレボルス x グランドルフェンシス「アイスンローゼズ、ピコティ」です。
Helleborus x glandorfensis 'Ice N' Roses' picotee
2024.02.19撮影
どんなお花かは、写真を見ていただくとして、今日は、名称に噛みついてみたいと思います。ただし、ヘレボルスはやや毒性がありますから、植物自身には噛みつきません。
園芸種では、その園芸品種名を一重引用符「' '」で囲んで示します。今日の品種では、'Ice N' Roses' と書かれた部分が園芸種名です。
'Ice N' Roses' は、カタカナで「アイスンローゼズ」としておきましたが、ちょっと変な名前。英語の単語を使っているというのは分かります。Ice「氷」と Roses「バラ(複数)」なんですから。
でも、「氷」と「バラ」をつなぐ N' が曲者ですよ。and の省略だろうというのは文脈でわかるのですが、なぜ後ろにだけアポストロフィがついている???
英語の辞書の権威、オクスフォードの辞書によると、and の省略形は、
'n'
'n
n
しかないんです。
つまり、
n'
というのは、ないんです。
まあ、商標「氷とバラ」ということで、許してあげますわ。少なくとも、N' のついた 'Ice N' Roses' という命名は、わたしの注意はしっかりと引いたので、宣伝効果は最低ひとりにはあったということです。2年続けて買いましたもん。
2024.02.08撮影
Helleborus x glandorfensis(ヘレボルス x グランドルフェンシス)の「x」は、交雑種・交配種であることを示しますが、それに続く glandorfensis(グランドルフェンシス)は、系統を示しているのよね〜〜、と思いません?
それが違うんですよ(その場合もあるんですが)。その「x」の後の部分は、その園芸種の開発者が好きに名づけることができるんです。つまりは、「x」というのは、交雑種・交配種である、ということを示しているだけで、それに続く部分は、必ずしも出自を表さない。
Helleborus x glandorfensis(ヘレボルス x グランドルフェンシス)の glandorfensis(グランドルフェンシス)の場合は、開発者の故郷、ドイツの Glandorf(グランドルフ)に因むそうです。
2024.02.23撮影
さて、ヘレボルス x グランドルフェンシス「アイスンローゼズ」(Helleborus x glandorfensis 'Ice 'n Roses')の系統は? と言いますと、
・ヘレボルス x エリックスミシイ(Helleborus x ericsmithii)
・ヘレボルス x ヒュブリダ(Helleborus x hybrida)
がかけあわされたものであります。
ちょっと待って。
・ヘレボルス x ヒュブリダ(Helleborus x hybrida)
がすでに「ヘレボルス交雑種・交配種」って意味じゃないのか? そして、x hybrida というのは、系統を明記しない書き方。
これは、要するに、開発者が企業秘密ということでこの園芸種の出自を隠してあるの? それとも、開発者自身が、系統を把握していないの???
2024.02.19撮影
さて、x グランドルフェンシス(x glandorfensis)のもうひとつの親、
・ヘレボルス x エリックスミシイ(Helleborus x ericsmithii)
は、どこのだれさん? これも交雑種・交配種なのね、「x」がついているから。そして、これも系統を必ずしも表すとは言えないのよね。
でも、この「x」から後の部分 ericsmithii には、最後に「ii」がついている。そして、それは、学名の規約上、人名につく語尾。つまり、これは、Eric Smith(エリック・スミス)という人の名前に因む名称です。
2024.02.22撮影
実際、エリック・スミスという人は、園芸家で、難しいとされた
・中間種のヘレボルス・ニゲル(Helleborus niger)と
・有茎種のヘレボルス x スターニイ(Helleborus x sternii)と
のかけあわせを、世界で初めて成功させ、
・ヘレボルス x エリックスミシイ(Helleborus x ericsmithii)を作出しました。
(無茎種、中間種、有茎種、については日を改めて。)
ほ〜、これはそんなにすごい交配種なのか、と感心しながら説明を読み進むと、x エリックスミシイは子孫を残すタネを作れない、って。え? わたしは遺伝子注入のために新しいヘレボルスを導入しているのに!!!!!
2024.02.23撮影
x エリックスミシイが有効なタネを作らないなら、それを片親とした x グランドルフェンシス「アイスンローゼズ」は、どうなの? 「アイスンローゼズ」も不妊なの? そんな〜〜
上の画像をちょっとご覧ください。この緑の花(実は、ガク)は、先日撮影した「アイスンローゼズ、ピコティ」です。オシベと蜜線が落ち、メシベの根元の子房がふくらみかけている段階の花です。子房の状態から見て、そのうち、タネができるわ〜、と思っているのですが、、、
2023.05.01撮影
実は、去年買った白い「アイスンローゼズ、ホワイト」がタネを産出するかどうか、去年からすでに心配だったんです。それで、わたしは、このヘレボルスを4〜5ヶ月間見張っていました、いつ妊娠、出産するか、と。うまくタネのサヤがプックリとふくれた時には、安堵しました。上の画像をご覧ください。
ただ、タネは、できるが有効でない、ということもあります。それに、わたし、日本とバンクーバーを行き来していて、観察を続けられず、タネがこぼれるところまで成熟したかどうか、確認できていないんです。バンクーバーに帰って来てから、サヤが開いて空になっているのは見ましたが。
「アイスンローゼズ」が子孫を残すかどうかに関しては、今後に請うご期待。数年後にご報告できるかもしれません。
ただ、多数ある実生、どの個体が親かは推測の域を出ない、という現実があり、「アイスンローゼズ」の貢献度は、分からないままになるのでは・・・
いつも応援してくださりありがとうございます。
お花は「先のこと」が数年先で済みますが、樹木になるともっとかかりますよね。今、イチジクの木をどうするか、悩んでいます。撤去してしまうか、一部を残すか。