78回転のレコード盤◎ ~社会人13年目のラストチャンス~

昨日の私よりも今日の私がちょっとだけ優しい人間であればいいな

◎加工写真が写真家にバレるか試したかった【即興小説バトル反省会3】

2014-08-09 00:45:09 | ある少女の物語
『加工写真が写真家にバレるか試したかった』※未完
http://sokkyo-shosetsu.com/novel.php?id=266333

◎参戦日:2014年7月26日
◎お題:男の春雨
◎必須要素:うっ
◎制限時間:1時間
◎文字数:1139字


まさかのお題投入できず。
ある絵師の描いたひまわり畑に少女が2人いるイラストを見ながら考えた話。
後半でお題に持っていく予定だったが時間切れ。
書けなかったオチをタイトルに持ってきたからネタバレになるという最悪の結果に。
メタネタは追い込まれた勢いで入れただけで特に意味はない。
被写体にもワタルが居て撮ったのもワタルという盛大な矛盾も残してしまう。
前回がそれなりに良かっただけに悔しさだけが残った。


ニコ生の反応
・よくある探偵もので探偵にあたる人が写真家という設定は面白い。
時間を気にせず中編として書けば面白くなると思う(生主)

◎会話のカタストロフ【即興小説バトル反省会2】

2014-08-09 00:30:16 | ある少女の物語
『会話のカタストロフ』
http://sokkyo-shosetsu.com/novel.php?id=265097

◎参戦日:2014年7月19日
◎お題:突然の凶器
◎必須要素:じゃがいも
◎制限時間:1時間
◎文字数:1297字



とりあえず2回目にして目標の千字超えは達成した。
自分の実体験を複数組み合わせ、それが元になっている。そのためお題の使い方が苦肉で必須要素もちょろっと出しただけ。
ニコ生でトリになったにも関わらず高評価をいただいたことで即興小説に対する自信が少しだけついた(ちょろいな)。
とはいえニセコイとかモー娘。とか露骨な実名描写は嫌いな人も要るだろうし、反省点もそれなりに多い作品。

ニコ生の反応
・教師という立場で正論を語りコミュニケーションを図るも上手くいかず、
流れをぶった切る女子生徒の関係ない話で会話は崩壊したが実はコミュニケーションが上手く取れているオチになったのが面白い(生主)

※実はコミュニケーション取れているオチは意図したものではなく偶然です。

◎白と黄色【即興小説バトル反省会1】

2014-08-09 00:10:27 | ある少女の物語
『白と黄色』※未完
http://sokkyo-shosetsu.com/novel.php?id=263796

◎参戦日:2014年7月12日
◎お題:地獄唇
◎必須要素:バナナ
◎制限時間:1時間
◎文字数:827字



記念すべきバトル初参戦の作品。バトル以外を含めてもまだ3作品目だった。
ストーリーを考えるだけで時間の半分は使っていた気がする。
ぶっ飛んだ設定で冒頭から惹きつけることはある程度出来たと思うがそこまでだった。
他の人の即興作品を読んで、ぶっ飛んだ設定は面白いか否かに関係なくインパクトは確実に与えられると察した。
だが結果的には完全な尻すぼみ。
「必須要素はネタの尽きる後半で投入」という裏技を使ったが、あまり大きな効果は出ていない。
後半は『のび太の結婚前夜』っぽい。もう少しオリジナリティな話にしたかった。
長ければ良いわけでもないが、1000字にすら到達しなかったのは今回だけにしたい。

ニコ生の反応
・俗語が半端ない(コメント)
・前半の説明が分かりやすい(生主)

◎それが最後の涙だった ※未完【即興小説削除作品供養会場】

2014-07-21 01:53:11 | ある少女の物語
※『即興小説トレーニング』(http://sokkyo-shosetsu.com)に匿名でひっそり投稿しひっそり削除した作品を、勿体無いので投下し供養する主旨です。
※現在は「当方128」というHNで投稿しています。興味があればお立ち寄り下さい。



お題:戦艦の小説 必須要素:扇風機 制限時間:30分 文字数:449字

 もし112も存在する元素のうち最も輝いているものはどれかと誰かが問うのなら、今の私は自信を持って78番目のプラチナであると答えられるだろう。私の手中で輝き続けるそれは紛れもない婚約指輪。
「帰ってきたら結婚しよう」
 思い出す度に涙を誘う。その言葉をくれた人は、もうこの世界には居ない。こんなにも愛しているのに、どうして私は彼の為に何も出来なかったのか。
 斎場を出ると扇風機のように波打つ風が頬を強引に乾かした。もう泣かないと決めた。
 そして今、私は彼の愛した机の上で彼の筆を走らせている。彼も小説家だった。後から分かったことだが、私にプラチナの指輪とプロポーズの言葉を残し戦艦に乗り込んだ後、争いながら物語を語り続けたという。書くもの手段も皆無の中で、口頭という唯一無二の手段を用いた。書き出しはこうだった。
「もし112も存在する元素のうち最も輝いているものはどれかと誰かが問うのなら、今の僕は自信を持って、どれでも無い、君だ。と答えられるだろう」
 叶えられなかった彼の夢を、私は追う。

◎ある少女の朝【即興小説削除作品供養会場】

2014-07-21 01:47:46 | ある少女の物語
※『即興小説トレーニング』(http://sokkyo-shosetsu.com)に匿名でひっそり投稿しひっそり削除した作品を、勿体無いので投下し供養する主旨です。
※現在は「当方128」というHNで投稿しています。興味があればお立ち寄り下さい。



お題:今日のこだわり 制限時間:30分 文字数:363字

 その眩しい光は、2枚の透明な長方形をいとも簡単に通り、寝ている私の目元をこれでもかと照らす。目覚まし時計がうるさく揺れる前に起き上がることが出来たのは必然だった。
 部屋を出て階段を降り、真っ先に風呂場へ。38℃の水飛沫を全身に浴び、リンスインシャンプーとトリートメントで髪を潤し、ついでに洗顔もする。
 脱衣所に出ると体を拭き、ドライヤーで髪を乾かし、下着、スカート、ワイシャツ、ネクタイ、ブレザーの順に身に纏う。そして再び階段を上がり、自分の部屋に戻る。

 姿見と睨めっこし、ヘアゴムをくわえながら手さぐりで髪型を作る。

 その姿に見とれる私。おそらく彼とデートをする今日一日通しても、今が一番格好良い姿なのだろう。その為だけにヘアスタイルは常にポニーテールにこだわっている。



 さあ、もうすぐ私の出来上がり。

◎小説物語(最終話)

2014-04-12 04:26:30 | ある少女の物語
<第二部:64days>

>もう一つのプロジェクトは既に動き出していた。

 2014年1月23日、もう一つのプロジェクトは大勝利という形で完遂した。

>勝利を掴むとはこういうことなのだろう。反省点もあったが、現状でできる最大限のことはしたと思う。とりあえずこれで悔いはなくなった。(当時のつぶやきより)

 この詳細は後日別枠にて書くとして(都合により本編の内容を変更しました)、急ごしらえとはいえ一つの作品として仕上げた改正版の『タオル』が大惨敗に終わった件は、心残りが無いと言えば嘘になる。曲がりなりにも学生時代から続けてきた唯一の趣味だ。このままで終わらせたくない。


――だったらもう一度、書けば良いじゃない――


 それしかないと思った。時間をかけて自分でも納得のいく小説を仕上げ、もう一度ストレートに見せる。“小説物語”は再び動き出した。
 今回の読者はネットの向こう側にいる不特定多数の人々ではない、ストレートただ一人なのだ。ではストレートが求める話とは何か。いつも笑ってくれていた彼女も結局は一人の女子高生。『セカチュー』や『恋空』に多くの女性は涙した。やはりギャグではなく王道恋愛路線だったのではないか。
 そしてもう一つ気になったのは“起承転結”。例えば『タオル』はライブで主人公が恥をかいた話のみで、起承くらいの2コマで完結してしまっている。その後主人公はゆずについて猛勉強をし、もう一度少女をライブに誘い今度は成功する、せめてそれくらいまでは書くべきではなかったのか。『ただの女子高生』にも似たようなことが言える。ちゃんと話を転がし、しっかりと結ぶ。そんな“4コマ漫画”を完成させることが小説を書く上での最低限のルールなのだろう。

 しかし、時間は無限ではない。ストレートはあと2ヶ月もすれば辞めてしまう。起承転結を一から組み立てる時間など無く、ある程度完成された素材が必要。そしてそれは考えるまでも無かった。

――『桜の舞う頃に・・・』――

 もう5年も前に書いた作品である。王道恋愛路線としてはベタすぎるかもしれないが、変化球の『タオル』で失敗したのだから、ここはストレートの球を投げるべきだろう。
 まずは当初の約束どおり「学園もの」になるように設定を改変した。26歳社会人の主人公は17歳、高校2年生になった。ヒロインの年齢をそのままにした為、彼の全ての発言を敬語に変えた。旧作では2行で済ませられた“ヒロインの元彼”の設定をクローズアップし、砂時計という重要アイテムを加え、主人公の家族も絡めた。旧作の無駄な箇所はバッサリ削り、特に前半部分はかなり短くなった。ここまで改造しても5年前の文章の半分近くはそのまま使い回している。


 僕は何度もストレートを笑顔にしてきたと思っていた。だがそれは彼女が勝手に笑ってくれていただけ。今度こそ僕の力で、僕にしか出来ない方法で――。



――『桜の舞う頃に・・・2014』――



 全ての力を出し切り、この小説は完成した。



――しかし――



「面白かったです」

 時を同じくして、ストレートは自分から、僕の書いた小説の感想を教えてくれたのだった。

「腹を抱えて笑いましたよ」

 そう、『タオル』の感想を。

「ちょっと待って下さい、本当ですか?」
「ハイ」
「良かったぁ~!」
「遅くなってすみません」
「イヤ、本当に悩んだんですよ! 作品選びを失敗したって。何週間たっても感想教えてくれないから、これ絶対途中で読むの止めたんだなって」
 この日は2月18日。『タオル』をカピバラに渡してから実に2ヶ月近くが経とうとしていた。
「イヤ、ちゃんと最後まで読みましたよ。そんなに悩んでいたんですか?」
「そりゃそうですよ!」
 あまりの衝撃に僕は本音しか出てこなかった。結局彼女の求めていた話はギャグ路線で正しかったようだ。
「じゃあもう一つの……『薔薇色のなんちゃら』は」
 実は、万が一の保険として『薔薇色への架け橋』の再編集版『薔薇色の絵の具』も一緒に渡していた。
「それも面白かったです。僕さんの文章面白いですね」

 女性を簡単に信じてはならないことは百も承知。ただこの時ばかりのストレートの笑顔だけは本物だと思いたかった。いずれにせよ、彼女だけの為に書いたはずの『桜の舞う頃に・・・2014』を彼女に見せることは断念し、こうして小説共有サイトに公開する運びとなった。『タオル』で喜んでくれたのであればもう悔いは無い。欲を捨て、余計な勝負に出るのを止めたまでだ。



 人見知りが治らないまま早28年、僕のやってきたことは果たして正しかったのか。その答えは未だに出ていない。そもそもそれを決めるのは周囲の人々であり、自分で簡単に答えを出せる問題ではないのだ。
 ただ一つだけ言えるのは、どうせ3月で辞めるストレートに対してはどんなヘマをしても大きな影響にはならないということ。それなら考えるよりもとにかく行動に移し、ゆっくり答えを探そうではないか。


――万華鏡キラキラ回る世界は 君にどう見えるの?――


(Fin.)

◎小説物語(第2話)

2014-02-22 02:58:21 | ある少女の物語
 想いを寄せる転校生をゆずのライブに誘った中学生男子の物語。学園ものとはいえ、作品としては邪道の部類に入る。だが勝算は一つだけあった。ストレートはジャニーズの某若手ユニットの大ファンで、なんとカウントダウンライブを生で観に行ったことがあるという。ゆずには詳しくないだろうが、本編の随所に差し込んだ“ライブあるあるネタ”は通じるのではないか。
 あとはこれを推敲するだけ。仕上げるルートは2通り考えられた。ストーリーに感動させることを目的とするガチガチの真面目路線か、散りばめた小ネタを楽しむギャグ路線かである。

>「僕さん面白いですね」
>そして、分かり合えなくても、笑い合うことなら出来る。

 僕は直感で後者に決めた。ストレートなら求めているものは笑いなのではないか。作品の随所に小ネタを追加した。自己満足で書いていた学生時代や、不特定多数の人に向けて書いていたブログの小説とは違う。今はストレートというたった一人の読者を喜ばせることだけを考えて書いている。これは28年の人生で初めてのことだ。

「小説、持ってきました」
 12月22日、A4用紙4枚半、延べ4569文字の作品をストレートに手渡した。そんなに長くは無いが、限られた時間の中でそれなりのものには仕上がったと思う。
「わーすごい、ありがとうございます。すぐ読みますね」
 すぐ読みますね。ストレートは確かにそう言った。間違いなく確かに……。



――6日後、ストレートはまだ読んでいなかった――



「……もう死ぬから読まなくて良いです」
「エー何でですか? 死なないで下さいよ」

 その後、2週間、3週間経っても感想を聞けることは無かった。
 本当に読んでいないのか。途中までは読んだがリタイアしたのではないか。改正版の『タオル』を冷静に、ゆずに詳しくない女子高生の気持ちになって冒頭から読み直してみた。そして気付いた。ゆずに興味が無ければモチベーションが下がり、最後まで読んで貰えない可能性があると。
 ブログを開設して早6年。これまでに投稿した393件の記事は、全て最後まで読んでくれることを前提に書いてきた。だが現実は、トータルIP・16万9439人の方々の一部、イヤもしかするとほとんどが、少し読んだだけで去って行っているのではないか。

 僕は所詮、小説もまともに書けない人間だ。全てが自己満足の範疇で行われてきたこと。ストレートのお陰でやっと気付くことが出来た。そして僕は再び女性不信に陥る。ストレートの「面白い」は、その笑顔は全て嘘だったのか。イヤ、今さら悲観することは無い。KSMの時と一緒ではないか。

――でも本当に、このままで良いの?――

 もう一つのプロジェクトは既に動き出していた。

(第一部・完)



※これまでにこのブログを読んでいただいた16万9439人の皆様、あらゆる方法でご意見・ご感想をいただいた皆様、その全てにこの場を借りて感謝の意を表します。本当にありがとうございました。稚拙な文章ではありますが今後もよろしくお願いいたします。

◎小説物語(第1話)

2014-02-22 02:54:01 | ある少女の物語
――いつも強く願う 「心がのぞければいい」と――

 2011年に惜しまれつつも解散した女性コーラスデュオのRYTHEMの5枚目のシングル『万華鏡キラキラ』の歌い出しの一節である。この曲が世に出た10年前、多くの日本人が歌詞に共感し、人の心をのぞけないもどかしさに改めて気付かされた。僕もその一人であり、学生時代から趣味として小説を書いていたのは、コミュニケーションを極力避けてそれに逃げていたとも受け取れる。人見知りが治らないまま早28年、僕のやってきたことは果たして正しかったのか。
 これは、一人の少女によってその答えが導き出され、それに悩み苦しんだ64日間の物語である。


<第一部:6years>


 全ては2013年12月17日、小説共有サイトに僕の記念すべき1作目『ただの女子高生』が投稿されたことから始まった。実はこれを徹夜で書き上げ、翌日は普通に日勤の勤務がありヘトヘト状態だった。
「今日どうしたんですか?」
 話しかけてくる一人の少女。ストレートである。

>人間が分かり合えるかもしれないという希望はとっくに捨てている。分かり合えるわけが無い。だが、そうだとしても人間と人間は言葉のキャッチボールをしなければならないのが現実なのだ。
>ストレートとは正しく向き合わねばならない。

 そう、僕は逃げずに向き合うと決めたのだ。どんな精神状態であってもしっかりと会話を交わさなければならない。
「昨日寝てないんですよ」
「エー、何していたんですか?」
 しかし、ここで僕は最大の失言をすることになる。
「小説を書いていたんですよ」
 そのレスポンスは正解であり不正解だった。事態はとんでもない方向へと向かう。
「どんな話ですか?」
「まあ一言で言えば学園ものです」
「見せて下さい。すごい気になります」
 徹夜で書いた『ただの女子高生』で用いられた滝口と沢井の会話の9割は、僕とストレートの交わした会話を原案としているのだ。しかも沢井はストレートと同じ高校3年生。そんな小説を見せられるわけがない。
「イヤ、大したものじゃないですよ」
 僕は必死に拒否に持って行こうとしたが、
「それでも良いから読んでみたいです。私文章力が無いから参考にしたくて」
 完全に押し切られる形で僕はOKしてしまった。

 本当に大変なことになった。次にストレートがシフトインする5日後の22日までに“小説”を持ってこなければならない。彼女は僕が徹夜で書いていた小説を読みたいだけで、普通ならそのファイルをそのまま印刷すれば終了するが、今回は前述の理由によりそうはいかない。なら会話の部分だけ修正すれば良いのではないか。それも考えたが、あいにく仕事も年末のハードモードに突入しており5日という短期間では不可能だった。
 そこで、過去に作成した他の作品群より選ぶことにした。ブログに掲載した過去作を読み漁る。そして悲しい事実に気付く。

――自身を持って人に見せられる作品が一つも無い――

 僕は学生時代から一体何をやってきたのか。ただの自己満足だったのか。だが悲しみに浸る時間は無かった。過去作から一つを選び、ストレートに見せられるレベルに達するまで推敲しなければならない。その素材はどれにすべきか。『もうひとつの虹』は論外、『桜の舞う頃に・・・』は学園ものではないし、カピバラ絡みの実話は気持ち悪いだけ、書きかけの『COLORS(仮)』を5日で仕上げるのは不可能、ならば残るは一つしかない。


――『タオル』――

(つづく)

◎over the REAL ~現実と向き合った先に見たもの~(後編)

2013-12-26 04:18:27 | ある少女の物語
 正解の見えない入り組んだ迷路をさまよい続け、あっという間に時は過ぎた。そして12月15日、ある一つの事件が起きた。

>昨日最悪の事態を覚悟した。それくらいのことが起きたと思う。怖くなった。この感情は久しぶりだ。今までで一番と言って良いほど「変化」を恐れている。

 その2ヶ月前にはアメーバにこんなつぶやきを残している。

>最悪の事態──それを考えていないと言ったら嘘になる。今の地位より下に逆戻りしてしまうことを。
>この店だけでも過去に約二名の強者が左遷になっている。当方はその二人より遥かに劣っている。今の地位がずっと続くとは思っていない。でもこのチャンスを棒に振りたくない。少しでも、1日でも長くいたい……

 そもそも僕は店長代理になる資格など無い人間なのだ。つい数ヶ月前まで普通に怒られていた、ただの平社員に過ぎなかった。7月には一時的な減給処分さえもあった。いつ元に戻ってもおかしくない。

「もし僕が異動になっても対応を変えないで下さい。例えば急に話しかけなくなるとか」
「何を言っているんですか。するわけないでしょ(笑)」
 事件の起きた日、思わずストレートに本音を漏らした。幸いにもその事件は処分の対象にはならなかったが、もうどうにも出来ないくらいメンタルはやられている。

>一見、安定しているように見えて、アハ体験のように目に見えない変化を繰り返しながら、少しずつ崩壊に向かっているような気がする。
>安心が欲しい。ずっと変わらないでいてくれる安心を。

 異動という変化は起きて欲しくない。だがいずれは訪れるだろう。27年間の人生で上手くいったことなど一度も無いのだから。
「お前さ、いくら頑張っても、どんなに遅くまで居ても、結果を出せなかったら意味ねえからな」
 ある日の上司の言葉も頭をよぎる。では、一体どうすれば良いのだ。



   「アハハハ、超面白い」



 答えはストレートだった。3月で辞めるストレートを笑顔で見送ること、ただそれだけである。いずれ異動になっても構わないが、せめて来年の春までは意地でもここに這いつくばってやる。
 その為にも、ストレートとのコミュニケーションを頑張らなければならない。人間が分かり合えるかもしれないという希望はとっくに捨てている。分かり合えるわけが無い。だが、そうだとしても人間と人間は言葉のキャッチボールをしなければならないのが現実なのだ。

「僕さん面白いですね」

 そして、分かり合えなくても、笑い合うことなら出来る。真剣に考え、慎重に言葉を選び、思い切って口に出した結果に得たもの、その一つ一つを大事にしたい。ソメイヨシノの蕾が膨らむその日まで。



『ただ、それを寂しいとか哀しいとか悔しいとか、そんなふうに思うんじゃなくて、わかり合いたい人とは、一生かかってつきあって、向き合っていければいい』(浜崎あゆみ)

(Fin.)

◎over the REAL ~現実と向き合った先に見たもの~(前編)

2013-12-26 04:16:25 | ある少女の物語
『どんなに絆の深い仲間でも愛し合っている恋人同士でも、別の人間であることには変わりはない。どうやってもわかり合えないことがあるのは仕方がない』(浜崎あゆみ)


――店長代理――


 その4文字がついに僕に回ってきた。本当に突然の人事異動だった。2013年9月30日付で、1年半お世話になったK店をとうとう僕は離れてしまった。アラフォー女性店長の、カピバラの居る店舗を。
「僕さんが居ないとキツイですよ」
「そうですね。色々助かっていましたからね」
 2名のK店スタッフがこう言ってくれただけでも救われた。

 そして始まるS店での過酷な店長代理生活。仕事量は2倍、3倍に増えた。店員としての業務に加え、発注量の増加、シフトの作成、売場作り、そして売上を伸ばす為のあらゆる策など、どんなに長く居ても仕事が終わらない。初期は昼12時に出勤して朝5時までかかる日々が続いた。しかし、何よりも悩んだのは他でもない、人間関係だった。

>自分という存在が怖い。自分がどう思われているか、27年の人生で今、一番気にしている。

 今まではその問題から逃げても何とかやっていけていた。だが、今回ばかりはそうもいかない。
 この物語は、人間関係という現実と真剣に向き合い、その先に見たものの一部始終である。



「ちょっと変な質問しても良いですか?」
 少女にそれを聞いてしまったのは、
「え、何ですか?」
 もう二度と会わないと思ったから。
「もしOさんの似顔絵を描いてくれる人が居るとするじゃないですか。そっくりに描いて欲しいか、可愛くデフォルメされた絵を描いて欲しいか、どっちですか?」
 2013年8月。当時そこは“ヘルプ先”の店舗、S店だった。少女には何を聞いても良いと思っていた。その僅か6週間後に正式配属になってしまうとも、店長代理というポストを与えられるとも知らずに。

 ストレート。
 常にポニーテールのカピバラとは対照的に、Oという名の少女は、勤務中以外はストレートのヘアスタイルを維持している。
「そう言えば似顔絵はどうなったんですか?」
 10月。“ストレート”は覚えていた。思い出したくも無いカピバラとの黒歴史を、傷をえぐるように聞いてくる。
 彼女は高校3年生。また女子高生。しかも彼氏持ち。今更どうしろと言うのだ。

>新しい配属先の店舗で、新たな女性との出会いもあるのかもしれない。それでもカピバラを超える存在は二度と現れないだろう。ファムファタールが、この世に二人も存在するわけ無いのだから。

 カピバラを超える存在は現れない。ストレートも例外ではなかった。
「まあ描いたには描いたんですけど、絵の完成度はとても低く、デザイン科に喧嘩を売ることになると悟りました。それでもお守りやラミネーターまで買ってしまい後には引けなくなって、何とか完成にこぎつけました」

 この似顔絵事件は深く反省しなければならない。僕はカピバラとの向き合い方を誤っていた。コミュ障の僕にも出来ること、僕でなければ出来ないことを頑張った。当時はそう思っていたが全くの勘違いだった。

――コミュ障だから絵に“逃げていた”――

 それが正解だった。しかも、その絵さえも失敗に終わったから「これは大掛かりなギャグです」と書き加えて逃げ道を作った。そんなの駄目に決まっている。何故そんな簡単なことにも気付かなかったのか。

「何歳ですか?」
 ストレートとは正しく向き合わねばならない。カピバラ以上か以下かなんてそんなの関係ない。人間が分かり合えない生き物だと思うなら、分かり合えるかもしれないと希望を抱くしかない。
「27歳になってしまいました。もうおっさんですよ」
「イヤおっさんじゃないですよ(笑)。全然若いじゃないですか」
 どのようなレスポンスをすれば良いのか。正解が分からない。
「バドミントンやったせいで小指がずっと痛いんですよ」
「この前僕さんが自転車乗っているの見ましたよ」
「いつも買いに来る小学生いるじゃないですか」
 それでもストレートはコンスタントに僕に話を振ってくる。今思えば、僕から話しかけない限り雑談を一切しないカピバラはとても楽な存在だった。僕が話したいときに話したいことを話したいだけ話す。全て僕のペースでやっていけば良かった。
「イヤ、あの、その……」
「どうしたんですか?」
ストレートは僕のペースを乱した。予想の斜め上を行く質問が予告なしに訪れ、上手くレスポンスが出来ない。
「イヤ、そんなの出来るわけないですよ」
「冗談ですよ。僕さん面白いですね」
 しかし、ストレートは何度も面白いと言ってくれた。果たして本当なのか。これまで何人もの女性に裏切られてきた。笑顔を信じても良いと思える女性はカピバラただ一人であることは前にも書いた。

>真面目天然キャラがここまでプラスに働いているのは初めてかもしれない。キャラじゃなくてほぼ素なんだが。だがそれもいずれ飽きられるときが来るだろう。それを考えると不安でならない。もうこれ以上傷つきたくない。

 高校3年生で、既に就職も決まっている。どうせ3月で居なくなる女子高生一人を相手に何故ここまで悩むのか。

(つづく)