正解の見えない入り組んだ迷路をさまよい続け、あっという間に時は過ぎた。そして12月15日、ある一つの事件が起きた。
>昨日最悪の事態を覚悟した。それくらいのことが起きたと思う。怖くなった。この感情は久しぶりだ。今までで一番と言って良いほど「変化」を恐れている。
その2ヶ月前にはアメーバにこんなつぶやきを残している。
>最悪の事態──それを考えていないと言ったら嘘になる。今の地位より下に逆戻りしてしまうことを。
>この店だけでも過去に約二名の強者が左遷になっている。当方はその二人より遥かに劣っている。今の地位がずっと続くとは思っていない。でもこのチャンスを棒に振りたくない。少しでも、1日でも長くいたい……
そもそも僕は店長代理になる資格など無い人間なのだ。つい数ヶ月前まで普通に怒られていた、ただの平社員に過ぎなかった。7月には一時的な減給処分さえもあった。いつ元に戻ってもおかしくない。
「もし僕が異動になっても対応を変えないで下さい。例えば急に話しかけなくなるとか」
「何を言っているんですか。するわけないでしょ(笑)」
事件の起きた日、思わずストレートに本音を漏らした。幸いにもその事件は処分の対象にはならなかったが、もうどうにも出来ないくらいメンタルはやられている。
>一見、安定しているように見えて、アハ体験のように目に見えない変化を繰り返しながら、少しずつ崩壊に向かっているような気がする。
>安心が欲しい。ずっと変わらないでいてくれる安心を。
異動という変化は起きて欲しくない。だがいずれは訪れるだろう。27年間の人生で上手くいったことなど一度も無いのだから。
「お前さ、いくら頑張っても、どんなに遅くまで居ても、結果を出せなかったら意味ねえからな」
ある日の上司の言葉も頭をよぎる。では、一体どうすれば良いのだ。
「アハハハ、超面白い」
答えはストレートだった。3月で辞めるストレートを笑顔で見送ること、ただそれだけである。いずれ異動になっても構わないが、せめて来年の春までは意地でもここに這いつくばってやる。
その為にも、ストレートとのコミュニケーションを頑張らなければならない。人間が分かり合えるかもしれないという希望はとっくに捨てている。分かり合えるわけが無い。だが、そうだとしても人間と人間は言葉のキャッチボールをしなければならないのが現実なのだ。
「僕さん面白いですね」
そして、分かり合えなくても、笑い合うことなら出来る。真剣に考え、慎重に言葉を選び、思い切って口に出した結果に得たもの、その一つ一つを大事にしたい。ソメイヨシノの蕾が膨らむその日まで。
『ただ、それを寂しいとか哀しいとか悔しいとか、そんなふうに思うんじゃなくて、わかり合いたい人とは、一生かかってつきあって、向き合っていければいい』(浜崎あゆみ)
(Fin.)
>昨日最悪の事態を覚悟した。それくらいのことが起きたと思う。怖くなった。この感情は久しぶりだ。今までで一番と言って良いほど「変化」を恐れている。
その2ヶ月前にはアメーバにこんなつぶやきを残している。
>最悪の事態──それを考えていないと言ったら嘘になる。今の地位より下に逆戻りしてしまうことを。
>この店だけでも過去に約二名の強者が左遷になっている。当方はその二人より遥かに劣っている。今の地位がずっと続くとは思っていない。でもこのチャンスを棒に振りたくない。少しでも、1日でも長くいたい……
そもそも僕は店長代理になる資格など無い人間なのだ。つい数ヶ月前まで普通に怒られていた、ただの平社員に過ぎなかった。7月には一時的な減給処分さえもあった。いつ元に戻ってもおかしくない。
「もし僕が異動になっても対応を変えないで下さい。例えば急に話しかけなくなるとか」
「何を言っているんですか。するわけないでしょ(笑)」
事件の起きた日、思わずストレートに本音を漏らした。幸いにもその事件は処分の対象にはならなかったが、もうどうにも出来ないくらいメンタルはやられている。
>一見、安定しているように見えて、アハ体験のように目に見えない変化を繰り返しながら、少しずつ崩壊に向かっているような気がする。
>安心が欲しい。ずっと変わらないでいてくれる安心を。
異動という変化は起きて欲しくない。だがいずれは訪れるだろう。27年間の人生で上手くいったことなど一度も無いのだから。
「お前さ、いくら頑張っても、どんなに遅くまで居ても、結果を出せなかったら意味ねえからな」
ある日の上司の言葉も頭をよぎる。では、一体どうすれば良いのだ。
「アハハハ、超面白い」
答えはストレートだった。3月で辞めるストレートを笑顔で見送ること、ただそれだけである。いずれ異動になっても構わないが、せめて来年の春までは意地でもここに這いつくばってやる。
その為にも、ストレートとのコミュニケーションを頑張らなければならない。人間が分かり合えるかもしれないという希望はとっくに捨てている。分かり合えるわけが無い。だが、そうだとしても人間と人間は言葉のキャッチボールをしなければならないのが現実なのだ。
「僕さん面白いですね」
そして、分かり合えなくても、笑い合うことなら出来る。真剣に考え、慎重に言葉を選び、思い切って口に出した結果に得たもの、その一つ一つを大事にしたい。ソメイヨシノの蕾が膨らむその日まで。
『ただ、それを寂しいとか哀しいとか悔しいとか、そんなふうに思うんじゃなくて、わかり合いたい人とは、一生かかってつきあって、向き合っていければいい』(浜崎あゆみ)
(Fin.)