78回転のレコード盤◎ ~社会人13年目のラストチャンス~

昨日の私よりも今日の私がちょっとだけ優しい人間であればいいな

◎小野と芋子(1)退職時の労働問題について考える

2017-08-27 21:40:34 | 小野と芋子

芋子「たった5.5センチ位置が違うだけで、彼の胸が騒ぐのは何故なのでしょうか」

小野「あのー、芋子?」

芋子「それは私には馬の尾にしか見えないというのに、何故彼にとっては感情を高ぶらせる要因にさえ成り得るのか、理解に苦しみます」

小野「芋子? さっきから何を言っているの?」

芋子「小野先輩。私は明日から馬になろうとしていますが、まだその覚悟が出来ていません。後押しとなる言葉を下さい」

小野「要は今まで一本結びにしていた髪型を、片想いしている男子のアドバイスによってポニーテールに変えようとしているのね」

芋子「ご名答です」

小野「勝手にやっていろ。以上」

芋子「冷たいです先輩。校内の多くの女子が茶髪に染めていく風潮の中、私はこの部で最後に残った黒髪の素朴な女子、通称『芋娘』ですよ?」

小野「自分で言うかそれ。ちなみに今日部員は僕と君しか居ないので、このまま『対話部』の活動を始めようと思う」

芋子「まあ、初回から人数多いと読者は混乱しますからね。二人だけにしたのは妥当な判断だと思います」


<実際に起きた労働問題>

小野「このブログも今月で開設9周年を迎え、投稿記事数も450を超えたが、全編対話形式にするのはおそらく初だと思う。ただくっちゃべっているだけの対話部という都合の良い存在に対する突っ込みは置いておいて、今回の対話テーマは『労働問題』だ」

芋子「ズバリ、このブログの管理人・当方128さんが実際に体験したことですね。読者の皆様は最初に前回の記事をお読み下さい」

小野「前回の『リザイン・ブルーになって社蓄の人生』という記事だが、急いで執筆したという事情を抜きにしても、文章の構成に稚拙さが目立った。特に結論が短すぎて、当方さんが何を言いたかったのか、少なくとも客観視だけでは理解できない」

芋子「そこで、我々の対話によって補足をするというのが今回の目的ですね」

小野「対話形式だと読みやすいし分かりやすいからな」

芋子「この記事で発生した労働問題を整理してみましょう」


<Point>
◎当方は8月10日付けでの退職を希望し、その35日前に会社に退職の申し出をした。退職願も提出し、受理された
◎その4日後の給料日に給料が振り込まれず、翌日に振り込まれたが、賞与が含まれていなかった
◎社長との話し合いの結果、賞与は査定が間に合わなかった為に1ヶ月遅れで支給されることと、勤続5年以上にも関わらず退職金は一切貰えないことが判明
◎当方は就業規則に退職金に関する記載が無ければ納得するつもりだったが、それを見せてもらえなかった


小野「そして記事には書いていないが、その後8月10日に振り込まれた賞与は前回比で5万も減っていたそうだ」

芋子「5年以上も会社に貢献してきた人間に対する仕打ちとしては残酷なものだと思います。1年や2年で辞めていく社員が多い会社だそうですから尚更です」

小野「そうかな。僕は当方さんにも非はあったと思うよ。だから今回の対話によって、会社と当方、双方が悪かった点は何かをそれぞれ検証しようと思うんだ」

芋子「異議はありません」


<会社は何が悪いのか>

小野「まずは芋子、会社が悪いと思う理由を挙げてくれ」

芋子「何よりも言いたいのは法令違反です。少なくとも給料日の未払い、就業規則の未開示、労基署への就業規則未提出、この3点だけでも立派な違反です。加えてサビ残と深夜勤務手当の未払いなど、挙げればキリがありません」

小野「他には?」

芋子「この会社は組織としてあまりにも杜撰すぎます。普通の会社には社長の下に総務部や人事部が配置されます。退職を告げる相手も本来なら人事部だし、有給の取得や就業規則の閲覧も人事を通して行われます。しかしこの会社はそれを社長に直接言わなければならなかった。そして、社長の気まぐれの一声であらゆることが決定されてしまっていた」

小野「労働組合も無かったからね。この会社は社長の権限が大きすぎた。仮に労働者に対して『こいつ腹立つな』と思えば、その人に対して賞与を下げることも出来るし、あるはずの退職金を無しにすることも出来る。しかも、就業規則を労基署に提出しなかったことで、それさえも自由な書き換えを可能にした」

芋子「ほら、先輩も認めているじゃないですか。この問題は100%会社が悪いんですよ」

小野「でも現実問題、そのようないわゆるブラック会社というのは君が想定している以上にたくさん存在する。大事なのは、不利な条件の中で労働者がどう工夫して戦って戦利品を得るかということだと思うんだ。今回の場合、少なくとも賞与に関しては7月10日に賞与が振り込まれているのを確認してから会社に辞めると言えば良かった、それだけのことなんだよ」


<当方は何が悪いのか>

芋子「つまり賞与が振り込まれる前に退職を申し出たのが悪いと言うのですね?」

小野「それが当方さん側の一つ目の非だね」

芋子「でも、新しい会社には8月11日に入社する予定でした。だから10日に退職する必要があり、社会通念上のルールとして1ヶ月以上前に会社に申し出る必要があった。だから7月6日には会社に退職の申し出をした。もし7月10日に振り込まれてから申し出たら、社長はもっと怒っていたかもしれない

小野「最後に1週間の有給を貰おうとしていたから、尚更急いじゃったんだろうね」

芋子「でもその有給も労働者には請求する権利がありますからね。例えば有給が30日間未消化だとして、退職日の31日前に退職を申し出て、その翌日から30日間有給を消化してそのまま消えていったとしても法的には問題ないし、実際に行使した人を私は知っています」

小野「人としては最低だけどね」

芋子「でも今回の場合、請求した有給は7日、たった7日ですよ! それくらい良いじゃないですか」

小野「誰も悪いとは言っていない。当方さんは転職活動の時点で間違えていたと言いたいんだよ。そもそも、どうして次の会社の勤務開始日を8月11日からにしたんだ? 会社が勝手に決めたのではなく、当方さんの意思で決断したそうじゃないか」

芋子「確かに、新しい会社の勤務開始を9月1日からに設定し、辞める会社は8月末付けで退職、それを賞与が振り込まれるはずだった7月10日より後に会社に申し出れば、辞める1ヶ月以上前に申し出たことになりますし、賞与は満額貰えますし、有給も7日だけなら難なく取得できるはずです」

小野「結局、転職のプランニングが甘かったんだよ。もっと言うと、例年8月12日~16日はお盆休みをとるアルバイトスタッフが多くなり、会社が人員不足になるのは必至だった。そんな時期に居なくなるという会社に迷惑をかける選択をすべきではなかった」

芋子「でも、この時期に辞める決断をしたのには深い理由があるんですよ」

小野「よし、聞こうじゃないか」

芋子「当方さんは実家のある秋田に帰りたかった。しかも、竿灯祭りの開催される8月3日~6日のあたりを狙っての帰省を目指していたのです」

小野「なるほど。退職にあたって有給を消化する際は、在籍期間の最末期に消化するのが普通だからね。それを竿灯祭りに合わせるには、8月10日付での退職と、最後の1週間を有給消化にする必要があった」

芋子「理解が早くて助かります」

小野「でもそんなの誰が決めた? 『在籍期間の最末期に有給を消化する』なんて、世間がやっているというだけで、自分も真似する必要はあったのだろうか。8月31日付けで辞めます、最後に8月3日~6日だけ有給を下さい、お盆期間やその後も全部出ますから。それで良いじゃないか」

芋子「えっ、4日間だけですか? せっかくの有給は実家に帰るだけ?」

小野「いや、当方さん、結果的には8月2日~4日と10日の計4日間しか有給を貰えなかったそうだよ」

芋子「えっ? 社長は7日間の有給消化を許可したんですよね?」

小野「だから酷い会社なんだよ。社長と現場が噛み合っていなかった。8月5日~9日は人員が足りなくて、当方さんは半日勤務とはいえ出勤していたんだ。そして現場の社員が『有給』に対して理解を示さなかった。彼等は『何で有給なんて貰っているの?』としか思ってくれなかったんだ」

芋子「有給は法令で決められているのにですか!?」

小野「日本人は何よりも人間関係が円滑であることを望むからね。当方さんも自ら無難なほうを選んでしまったんだ。で、さっきも言ったように、会社が酷いのは日本では当たり前のことで、酷い中でどう工夫して戦うかが大事なんだよ。厳しいことを言ってしまえば当方さんは思慮が浅かった。問題が起きてから友人や労働相談所など色々なところに相談したりネットで調べまくったそうだが、そんなの問題が起きる前にすべきだったんだよ。ついでに言うと、就業規則は入社した時点で読ませてもらうべきだった」


<おわりに>

芋子「初回から考えさせられるテーマでしたね」

小野「まあ今回は前回の記事を補足するという大人の事情があったからね。全く、当方さんの文章力の低下には驚きだよ。それでもこの対話はとても意味があったと思う。退職というのは誰がいつ経験することになるか分からない。未来の退職をする予定の若者たちは、当方さんと同じ過ちをしない為にも、今からこの話を読んで勉強しておくべきだ」

芋子「ネガティブすぎますよ。そもそも退職というのは止むを得ない手段であって、しないことが一番です」

小野「それも一概には言えないけどね。労働者を退職に追い込むのは過酷な労働環境や、会社の杜撰な体制だったりもする」

芋子「それにしても我ながら、高校生二人の会話とは思えない内容でしたね。次回はもっと学生らしい、明るい話題にしませんか?」

小野「……善処するよ

芋子「ああ(察し)」