「ご乗車のお客様に申し上げます。ただいま、町田駅で発生しました人身事故により、小田急線の全線で運行を見合わせております」
青天の霹靂。朝焼けに染まる新百合ヶ丘駅で、急行列車は足止めを食らった。2018年2月15日6時15分、「遅れるかもしれない」と会社の上司に連絡した。この時はまだ7時の出勤時刻に間に合う可能性は微かにあると信じていた。
人身事故の現場は目撃していないものの、運転再開までに多大な時間を要することは想像に容易い。詳しい作業手順は「しなの鉄道」公認の非公式twitterが2016年9月23日に事細かく説明している。「閲覧注意」と書かれているので気の強い方は是非とも参照されたい。列車が再び動き出すことを信じ、当方は待つしかなかった。待つことと、東山奈央のアルバムを聴くことしか出来なかった。
足止めから25分後の6時40分、ようやく動き出す。この時点で遅刻は確定した。「Yahoo!路線検索」で所要時間を調べ、会社には「計算上15~30分遅れる見込み」と連絡した。
しかし、この急行列車は各駅停車に変更の上、運行された。急いでいる乗客も多い中、小田急電鉄のこの采配は果たして正しかったのか。
経堂までの全ての駅に停車し(経堂から準急として運行した)、その度に数多の乗客を乗せ、熾烈な「おしくらまんじゅう」が繰り広げられる。降りる人にとっては鬼門で、入口付近の乗客が一時的に降りるなどして降りる人を動きやすくしなければならないのに、頑なに降りない人も居るのでスムーズにいかず、更なる遅延が発生する。当方の遅刻が30分どころでは済まされないことは、程なくして察することとなる。そして事件は起きた。
「ミスった!」
7時15分、成城学園前駅のホームで当方は思わず声に出した。降りるつもりは無かったが、他の降りる人の為に一時的に降車(というかホームに押し出された)。再度乗ろうとしたら他にも乗車する人が多すぎて自分が入る余地が無く断念、次の列車に乗るハメになったのだ。
幸い、2分後に列車は来たものの、経堂から準急になるはずの列車を逃した時点で更なる遅刻は確定したようなもの。正しいことをした人が損をする世界は絶対に許せない。
その後もおしくらまんじゅうに耐えるだけの時間は続き、東山奈央の透き通るような歌声だけが救いだった。7時57分、1時間15分以上も遅れてようやく勤務地の最寄り駅に到着。
職場に着くと、7時及び7時半出勤の社員・スタッフは当方を除く全員が既に出社していた。自分は悪くないが、悔しいし情けなく思った。せめて成城学園前で乗り逃していなければ……