真空管アンプで重要なパーツは、もちろん真空管ですが、音声を取り出すための出力トランスも音質に左右する重要なパーツの一つです。出力トランスは、コアが大きいほど巻線も多くできインダクタンスも大きくとれるので、低音がしっかりした出力トランスとなりますが、特にシングルアンプ用出力トランスであればなおさら影響があると思われます。コアボリュームの大きい出力トランスは、オーディオマニアからすれば憧れのトランスとなるのではないでしょうか。
私も同様に、ずっと以前からシングルアンプ用の大きい出力トランスが欲しいなあと思っていました。
特にTANGOの”FW50-5S”や”FW-50-3.5S”なんかがあれば最高なのですが、ヤフオクでも最近特に値が上がっているので、我々サラリーマンには高嶺の花となっています。
しかし、つい先日下記写真のようなアンプが出品されているのを発見しました。これは、もしかしたらFW50クラスのシングル用出力トランス搭載アンプかも、うまくいけば長年の夢がかなう日がついに来るか!と。
出品されていたアンプは、一応、球無し、詳細不明のジャンク品です。
さて、これを見て博識の皆さんはどんなアンプだとお思いでしょうか。
ちなみに他の写真も掲載します。
ヤフオクのページでざっと見たところ、出力管と思われるGT管のソケットが、片chあたり1つ、電圧増幅と思われるソケットも同様。そしてB電流、電圧がチョークやブロックコンデンサの耐圧から、150mA以下、350V以下と想像できます。
この球構成、電流電圧容量からすると、プッシュプルアンプは厳しいのではないかなと思われます。ソケットが1つだとしても5998のような双3極管を使えば、プッシュプルにもできそうですが、ステレオで150mA以下のB電流は少し寂しい。じゃもう少し小型の6DZ7みたいな球は使っていたりしないかとか考えましたが、6DZ7はかなりマイナーな球ですし、この規模の球でこんな大きな出力トランスや電源トランスを使うのは少し違和感がある・・・
ということで、よもやこのアンプは、6B4Gか6CA7、6L6あたりの出力管のシングルアンプではないかとわくわく感が増大。ヤフオク確認時点では、まだ価格も安く子供のように胸が高鳴りました。
そこで、一大決意をしてサラリーマンの平均お小遣いの倍近くを費やして見事落札!これがFW50のシングル用出力トランスであれば安いものです。
早速中身の確認!さて、どんな出力トランスが使われているのか。わくわく・どきどきが入り混じり、失神しそうです。
いざ、ご開帳!
おおー、FW50が入っている!と、喜んだのもつかの間。FW50-5Sの”S"が付いていない。どこからどう見てもシングルアンプ用ではなく、プッシュプルアンプ用のトランスではないですか!
残念!大枚はたいたのにこれにはがっかりしてしまいました。
しかし、上記写真の回路ですがなんだか変です。プッシュプルアンプならカップリングコンデンサが片chあたり2個あってもよさそうですし、出力管のカソード抵抗もしかりです。それにプッシュプルならどんな球を使っていたのでしょうか。
おかしいなと思いつつ回路をたどっていくと・・・
なんと!これまたびっくりで、回路はシングルアンプではないですか。球は恐らく6CA7あたりだと思うのですが、3番ピンのプレートにFW50のP2端子、4番ピンのスクリーングリッドは抵抗を介してFW50のB端子、B電源は、FW50のP1端子に接続されていました。
Σ( ̄ロ ̄lll)
プッシュプル用出力トランスをシングルアンプで使っている!!!
こんな強者もいたんだとびっくりするとともに、我ながらアンプの推理としては、なかなか良かったと感心した次第です。
しかし、このアンプまともに鳴っていたのでしょうか。出力トランスのコアが磁化して低音が出ないアンプだったのではないかと想像しますが、試したこがないので何とも言えません。今はすでに部品取り用として分解して、確認のしようがありません。
今回は高い授業料でしたが良い勉強になりました。
ヤフオクのトランス高くなりましたね!
私も中々落札出来ず悶々として居ます。
さて、トランスがpp用とのことですが、アンプは少々大型化してしまいますが、シングルでしたら春日辺りのチョークを追加してクラーフ結合にされては如何でしょうか?