【能登半島地震】珠洲市や七尾市などでも震度7か M7クラスの地震が2回発生 研究チーム解析で判明 (2024年2月2日) - YouTube
能登半島地震のメカニズムについて、長年能登半島の地震活動を研究している金沢大学・平松良浩教授(理工研究域地球社会基盤学系教授 専門・地震学)について詳しく聞きました。 稲垣真一アナウンサー: まず、1日午後4時10分に発生した最大震度7の大地震について。この1カ月間で様々なデータが解析されていると思いますが、改めてどんなメカニズムで発生したとお考えですか? 平松良浩教授: 今回は佐渡沖から能登半島西岸まで最大150kmに及ぶ複数の断層が連動して動いたことで、マグニチュード(M)7.6という巨大な地震が発生し、石川県内で初の震度7を計測しました。その地震波形を京都大学防災研究所の研究チームが解析したところ、「M7クラスの地震が2回発生」していたと考えられることが分かりました。 稲垣真一アナウンサー: 1度の地震で2回のM7とはどういう事でしょうか? 平松良浩教授: まず地震とは地下の断層が急激にずれることにより起こります。こちらの図は地震波形を解析して地下の断層がどうずれたのかを推定したものです。午後4時10分9秒に「M7.3相当の地震」が発生し、南西側の断層が次々とずれました。 特にこの断層の浅いところで大きなズレが発生し、大きな地殻変動、すなわち輪島市西部の最大4mに及ぶ「大きな海岸隆起」が生じました。 さらに最初の地震から13秒後、午後4時10分22秒に最初の震源とほぼ同じ場所で「M7.3」相当の地震が発生。こちらは北東側の断層を次々に破壊していきまして、断層の浅い部分で大きなずれが発生しました。これが海底での地殻変動を引き起こし、大きな被害をもたらした「津波の発生源」となりました。 結果的に全体を通してM7.6という巨大な地震活動になったと考えられます。 稲垣真一アナウンサー: この地震で、県内では志賀町富来と輪島市門前町走出の観測点で、観測史上初めての震度7を観測していますが、実は他の地域でも震度7級の揺れだった可能性のある場所が推定されるそうですね。 平松良浩教授: こちらは防災科学技術研究所が公表している「面的推定震度分布」です。茶色の部分は「震度7」だったと推定される場所ですが、ご覧のように志賀町と輪島市だけではなく、▽珠洲市▽穴水町▽七尾市▽能登島などでも震度7の揺れだったと推定される場所があります。 このようなことからも、今回の地震は「奥能登の多くの地域で震度7を記録する」ような、まさに未曽有の大地震だったと言えると思います。 稲垣真一アナウンサー: ここで今回の地震に関する被害の最新情報です。お亡くなりになられた方が238人。(1月31日午後2時時点)安否がわからない方が19人。住宅被害が4万6294棟。一時避難をされている方が8579人。1.5次、2時避難所も合わせると1万5000人を超える方が避難されています。 では、この大地震について行政はどこまで備えができていたのでしょうか?2012年に石川県が策定し、2017年に改定した津波ハザードマップの「最大浸水予想」と、今回、土木学会の現地調査で確認された津波の観測値です。 最大浸水予想は能登半島北方沖でM8.1の地震が起きることを想定していたこともあり、今回の津波は「一定の想定範囲内」だったことが分かります。 一方、こちらは、県の地域防災計画「地震災害対策編」です。能登半島北方沖で、こちらはM7.0の地震を想定し、被害は死者7人、負傷者221人、建物全壊120棟、避難者数2780人と、今回の被害と圧倒的に差があることが分かります。 津波ハザードマップは更新されていたのに、地震被害想定は1997年度以来、27年間にわたって更新していなかった。これはどうしてなんでしょうか? 平松良浩教授: その理由の一つとして、能登半島北方沖の海底活断層に対する国の長期評価が行われていないことがあげられます。奥能登の地域は、強い揺れに見舞われる確率が低い地域になっていますが、これは能登半島北方沖の海底活断層が対象になっていないためです。 しかし、県の想定では津波が生じるような大地震を想定しておきながら、一方では強い揺れが起こらない、つまり地震の被害想定をやっていないというのはおかしいことです。そのため県には「早く地震被害想定を見直すべき」と、長年訴えておりました。 2023年5月にようやく地震被害想定の改定作業が開始され、見直しが進みつつあったのですが、残念ながら今回の地震には間に合いませんでした。 稲垣真一アナウンサー: 県の地域防災計画は、県内の各自治体が防災計画を作成する基になるものです。もしこの改定作業がもっと早く進んでいれば、今回の被害は少なくなったと考えられますでしょうか? 平松良浩教授: そうですね、やはり被害想定としては以前の想定よりは大きな数字、家屋の倒壊や死者数など大きくなることが予想されまして、住民の意識も変わったことが考えられます。また避難者の予想数も変わりますから、自治体の備蓄状況にも変化があるということで、被害が少なくなった可能性があります。 今後さらにM7級の地震が、能登だけではなく金沢などでも発生する恐れがありますので、速やかに改訂作業を進めるべきと考えています。