愛知県の東部を駆ける愛知高速交通東部丘陵線はリニモの愛称で親しまれています。
愛・地球博のメイン会場への輸送を担うため2005年に開業した新しい路線です。
市営地下鉄東山線の藤が丘駅から愛・地球博記念公園(現在)を経て愛知環状線の八草駅の約9kmを結びます。
高低差のある丘陵地帯を走るために、リニアモーターが導入されています。
都営大江戸線をはじめ、近年地下鉄で利用されているリニアモーターは通常の鉄道と同じように軌道上を車輪で走行するものですが、
リニモは常に車体が軌道から浮いたまま走行する、磁気浮上式のリニアモーターカーです。
2027年に開通見込みのリニア中央新幹線に先立って、実用化は日本初。
磁力による浮上走行は摩擦がなく、ゴムタイヤで走行する新交通システム以上に加減速に優れ、揺れも少ないことが特徴です。
そして最高速度は100km。
高架・高速・リニア・無人運転。夢に見た21世紀の交通の具現化です。
万博から数年が経って、初めてリニモに乗りましたが、高架線からの眺めもよく、乗り心地も快適。
特に車両は全面ガラス張りとなった車端部がおすすめ。
藤が丘駅付近では新交通では珍しい地下線も存在します。
しかし、リニモは利用者に伸び悩み、羽振りが良くないのが現状です。
鉄道空白地帯を走るリニモ沿線は住宅開発の行われていない地区が多く、開発当初から都市鉄道ほどの輸送力は求められていませんでした。
万博開催時は小ぶりの駅と車両から混雑を招くことが危惧され、万博側は名古屋駅から高蔵寺経由のエキスポシャトルの利用を推奨していました。
沿線には未だ更地や緑地が多く目につきます。ほとんどの駅に駅員がおらず自動放送がこだまする「兵どもが夢の跡」状態。
最新鋭のローカル線と言った雰囲気が漂います。もったいない話ですが。
浮上式リニアは建設費も他の交通よりかさむために、残念ながら新たな建設は当分の間は無さそうです。
起点となる藤が丘駅は地下鉄東山線との接続駅で、地下鉄駅が高架線、リニモが地下線という一般常識的に逆転現象が起こっています。
地下の藤が丘駅のホームは1面2線。珍しく、先端に行くにつれて狭くなる扇型をしています。
藤が丘駅停車中の折り返し車両は出発時に浮上するそうです。
プワァと浮く瞬間はわかりませんでしたが、いざ発車サイン音が鳴り終わって出発するとなめらかな発進に驚かされます。
しばらくは地下線を走りますが、自らの走行が順調か試すかのようにゆっくりと進みます。
新交通の地下区間は他にアストラムラインの愛称で知られる広島高速交通の本通-城北間のみとなっています。
地上へ出るとすぐに次のはなみずき通駅に到着。
はなみずき通駅からは高度を上げて高架線を走ります。
青空が射し込む最前部の座席は展望席も同然。
無人の運転席にちょこんと乗った鏡餅が可愛らしい。
周囲は宅地造成地が多く、名古屋らしく整備された自動車道路がまっすぐに伸びています。
そんななかリニモの軌道はその先にある丘陵地帯を目指します。
軌道が平坦な区間でリニモは思った以上に速度を出します。
何と言っても最高速度は100km。静かな加速はさすがリニアモーターカー。
高速道路をアンダーパスすると、いよいよ丘の上にある万博公園に向けて急勾配を登ります。
鉄道ではありえない傾斜を難なく上り続けると、右手には万博の遺構の大観覧車を横目にまだまだ進みます。
万博の敷地はさすがに広く、公園西駅を過ぎて坂を登りつめたら愛・地球博記念公園駅に到着です。
愛・地球博長久手会場の最寄駅でした。
愛・地球博記念公園駅は2面3線を有するターミナル駅。
現在真ん中の路線はあまり使用されていない模様。
海抜152mの駅からは遠く名古屋市街を見わたすことができます。
藤が丘駅へ向かう列車は街を見下ろしながら坂を下いくので先頭車からの眺めは最高でしょうね。
空を飛んでいる気分を味わえるかもしれません。少し浮いているのは事実なので。
愛・地球博記念公園駅はリニモの駅では数少ない有人駅ですが、利用客の姿はなく広い構内は寂しげです。
万博跡地は長いプロムナードの先にあります。
丘の上の万博跡地の空は高く、リニモの高架線が目立っています。
愛・地球博記念公園は自然公園の他に温水プールやアイススケート場もあり、家族で楽しめそうな総合公園ですが、自動車で来園する人が多いようです。
愛・地球博記念公園から先は陶磁資料館南駅を過ぎて、終点・八草駅に着きます。
緑が多い区間ですが、高架線の標高は相変わらずなので眺めが良いです。
陶磁資料館南駅から少し歩くと陶磁美術館があります。
愛知県には焼物の生産地として有名な常滑や瀬戸があるため、この地に県立の陶磁器専門の美術館があるそうです。
終点・八草駅は愛知環状鉄道との乗換駅。
万博時の混雑緩和のためか両駅間は少し距離があり、連絡通路で少し歩きます。
リニモの延伸計画はないですが、駅の先には折り返し用の引き込み線があります。