ひびのあれこれ・・・写真家の快適生活研究

各種媒体で活動する写真家の毎日。高円寺で『カフェ分福』をオープンするまでの奮闘記、イベント情報などをお伝えします。

エドワード・ヤン『タイペイ・ストーリー』

2007年10月21日 | Weblog
東京国際映画祭2日目。エドワード・ヤン監督の『タイペイ・ストーリー』(1985年、110min)を見る前に、蓮實先生の講演を聞く。ヤン監督急逝をメールで知ったという蓮實先生。その時脳裏を過ったヤン監督との3つの思い出を語る蓮實先生の声に目頭が熱くなる。京都・知恩院界隈で白いシャツを着たヤン監督が屈託のない笑顔を漲らせて自転車で走ってくる姿に言及した際、昨日見た『光陰的故事』の自転車の練習シーンが重なって、まるで映画を見ているように、その映像がはっきりと頭の中に浮かんできた。
『タイペイ・ストーリー』は、中心となるべき物語が失われた状態で進行していく。それぞれの登場人物が何かしら問題を抱えながら、しかしその問題は語られることのないまま歯車が少しずつ狂い、関係がすれ違っていく。寡黙な登場人物達の人生を揺るがすような出来事が、まるで三度の食事のように淡々と描き出され、大都会のイルミネーションは何事もなかったかのように煌々と街を照らし出す。結局、登場人物達の「その後」は宙吊りにされたまま、歯痒い状態でラストを迎えることになるのだが、それはいかにも現実の我々を取り巻いている現代社会の日々そのものといえよう。主人公のホウ・シャオシェンがカラオケ・スナックでダーツゲームをやる相手はヤン監督自身か?主人公の妹の不良グループのバイクが数台で街を走るシーン、ただ街中を走っているだけなのに美しい。ベランダの主人公と少年のバックに煌めくフジフィルムのネオンがドラマティック。壊れつつある恋人同士が、部屋に入ってスイッチを点けては消すシーン、ぐっとくる。台詞が少ない分、登場人物の些細な動作が心の機微を浮き彫りにする。ヤン監督は、自然光と人工灯の使い方がとにかくうまい。ハリウッド映画好きにはお薦め出来ない作品。
ランチは六本木ヒルズ内の「The Kitchen Salvatore Cuomo」で。前菜はビュッフェ、メインは7種の中から1つ、デザートは3種類の中から1つ選べるようになっている。開放的でスタイリッシュな空間、親切でなかなか気が利くスタッフ、料理は、驚きはないがパスタはきちんとアルデンテ。前菜ビュッフェの種類が豊富で女性好み。ビュッフェスタイルが苦手な人にはコースが用意されているので安心。お昼は1人?2500~。