ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「鉄の骨」

2010年09月20日 | 書籍関連
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富島平太は大学の建築学科を卒業し、中堅ゼネコン「一松組」に入社。以降、現場一筋で3年間働いて来た彼だったが、或る日、唐突に業務課へと廻される事になる。「業務課といえば文系の人間ばかりが配属となる部署なのに、何故自分が?其れも、担当している現場が大事な時期を迎えているというのに。」と、理解に苦しむ平太。職務内容が良く判らないまま新しい職場に移った彼は、業務課が談合を担当する部署なのを知り、「違法行為で在る談合の撲滅を、業界挙げて叫んでいるのに・・・。」と憤り覚える

業績思わしく無く、何とか大きな公共事業を取りたい一松組。2千億円規模の地下鉄工事を取れるかかが、会社の浮沈に関わる重大事となり・・・。
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第142回(2009年下半期)直木賞候補にもなった「鉄の骨」(著者:池井戸潤氏)。此の原作を元にしたドラマが今夏放送されていたので、御存知の方も多いだろう。「2007年に大林組の元幹部や清水建設鹿島建設等ゼネコン5社の営業担当者が逮捕された名古屋市発注の地下鉄延伸工事を巡る談合事件」をモチーフに、此の作品は書かれたと言われている。短い期間では在ったが、ゼネコン各社と仕事をさせて貰った経験が在る自分からすると、「実際は、もっとえげつないんじゃない?」と感じなくも無いけれど、中々良くは描けていると思う。

此の作品に関してネット上の書評に「山崎豊子エンタメ版」と書いておられる方が居たが、当たらずと雖も遠からず。「不毛地帯」の主人公・壱岐正は己が信じる「正義」を必死で貫こうとするも、正義が罷り通らない「現実」に直面して懊悩させられ、やがて正義を曲げなければならなくなるが、「談合」という違法行為に直面させられた平太に壱岐の姿が重ならなくも無い。

「本音」と「建前」という2つの世界の中で悩む平太。そして銀行員という立場から、平太の業務に疑問を感じ続ける恋人・野村萌。大学から4年越しの付き合いで、何の遠慮も無く接していられた2人の間に「価値観の違い」が生じ、吹き始める隙間風エリートとは正反対の道を歩んで来た自分は、仕事に恋に苦戦する平太に対して「頑張れ!」と心の中で応援しつつ、ストーリーを追っていた。

頼り甲斐の無い上司、そしてちゃらんぽらんな先輩・・・そう感じていた者達の意外な素顔等、登場人物達のキャラクター設定が良い。

「談合は建設業に従事する多くの人々の雇用を守る、必要悪の仕組み。」という考え方を完全否定は出来ないけれど、其れでも矢張り「『業界の活性化を阻む』という意味で好ましく無い。」と自分は考える。

総合評価は星4つ

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