ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「紙鑑定士の事件ファイル 模型の家の殺人」

2020年02月16日 | 書籍関連

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どんな紙でも見分けられる男・渡部圭(わたべ けい)が営む鑑定事務所。或る其処に「紙鑑定」を「探偵」と勘違いした女性が、「彼氏の浮気調査をして欲しい。」と訪ねてくる。手掛かりは、プラモデルの写真1枚だけ。駄目元で調査を始めた渡部は、伝説のプラモデル造形家・土生井昇(はぶい のぼる)と出会い、意外な真相辿り着く

更に翌々日、行方不明の妹を捜す女性が、妹の部屋に在ったジオラマを持って渡部を訪ねて来る。土生井と共に調査を始めた渡部は、其れが恐ろしい大量殺人計画を示唆している事を知り・・・。
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第18回(2019年)「『このミステリーがすごい!』大賞」の大賞受賞作品「紙鑑定士の事件ファイル 模型の家の殺人」(著者歌田年氏)は、「『紙を鑑定し、売買する渡部圭。』と『伝説のプロモデル造形家・土生井昇。』の2人が、“事件”の謎を解いて行く。」というストーリー。渡部の事を“紙鑑定”ならぬ“神探偵”と勘違いし、“事件”の捜査を依頼に来た女性が現れた事から、渡部は思いも寄らなかった“探偵業”に足を突っ込む事になるのだが、謎を解く鍵が“プラモデル”に在りそうな事から、土生井昇という男性と知り合う。

プラモデルに詳しい人は、そう多くは無いだろう。紙に詳しい人となると、果たして何れだけ存在するか。プラモデルや紙に関する蘊蓄の数々はとても面白いし、こういう決してメジャーとは言えない物を題材に取り上げた著者の着眼点の良さは、高く評価出来る。

渡部も土生井も探偵役とは言えるのだが、何方かと言えば土生井の方が探偵の色合いが強い。其れも彼は、「“現場”を見たりという事をせず、室内で推理する。」という“安楽椅子探偵”なのだ
「“今風”だな。」と感じるのは、彼等が「Google検索GoogleストリートビューGoogleマップGoogle画像検索といった“ハイテクツール”を駆使し、様々な情報を得ては推理する。」という形を採っている事。推理する上で、彼等のプラモデルや紙に関する深い知識が大きく関わっているとはいえ、“昔の探偵”では考えられない事だ。

又、考えられない事と言えば、渡部と知り合う前はハイテクなツールの事を全く知らなかった土生井が、あっと言う間に使い熟せる様になっている事。人によっては御都合主義な感じがするだろう。

冗長な感じの無い、スピード感の在る展開は良い。とても新人とは思えない筆力だ。だが、気になる点が無い訳では無い。“偶然性に頼った設定”が在り、「其れはどうなの?」と思ってしまう。一番気になったのは、Googelストリートビューに映り込んだ物が大きな意味合いを持つ点。Googleストリートビューは「専用に開発された自動車の屋根に設置された全天球カメラで撮った映像を利用した物。」で在り、場所によって撮った場所はバラバラ。“不動の物”なら映り込む可能性は高いけれど、“動く特定の物”が映り込む可能性は非常に低いだろう。そんな可能性の低い物が“偶然”に映り込み、大きな意味合いを持つというのは、ミステリーとしてどうかと思う。

「証拠品の手紙付き」という“読者参加型のミステリー形式”は面白いし、ストーリー自体も悪く無い。総合評価「星4つ」を与えても良いのだが、どうしても上記の“偶然性に頼った設定”が引っ掛かる。其れが減点ポイントで在り、総合評価は星3.5個


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