2002年7月、北海道警察本部銃器対策室に所属していた現職警部のIが、覚醒剤取締法違反で逮捕された。Iが情報提供者として使っていた男が、覚醒剤を持って出頭したのがきっかけ。しかしこの事件は、単に一警察官の逮捕だけで終わらなかった。Iは桁違いの拳銃摘発数を誇り、銃器対策室のエースとして有名な人物だったが、実はその摘発の多くが他の違法行為を見逃す代わりのバーター取り引きだったり、手持ちの拳銃を仕込んだヤラセや捏造によるもので、その過程で情報提供者への謝礼等の経費を得る為に覚醒剤取り引きに手を染めていたのだ。そして彼の上司達はIのこの行為に気付いてい乍ら、国費から各都道府県警察に対して交付される対策予算を獲得する為には、多大な実績が必要という判断から黙認していたとされている。Iのこの行為によって、多くの上司達が出世階段を上って行ったと言う。
この事件や2003年11月に発覚した「北海道警裏金事件」等、警察の不祥事をモチーフにして書かれたのが、佐々木譲氏の「笑う警官」だ。
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札幌市内のアパートで、女性の変死体が発見された。遺体の女性は北海道警察本部生活安全部に所属し、“ミス道警”にも選ばれた水村朝美巡査と判明。容疑者となった交際相手は、同じ本部に所属する津久井巡査部長。一昨年、拳銃摘発数で日本一の道警本部生活安全部の郡司警部が数多くの拳銃を不法所持していたばかりか、覚醒剤の密売買にも手を染めていたという事で逮捕されていたが、津久井は郡司の元部下だった。
やがて、津久井に対する射殺命令が出てしまう。確固たる証拠も無いままに、射殺命令が出てしまう異常さ。その裏には警察内部の不祥事に付いて、津久井が公に証言する事を恐れる上層部の思惑が見え隠れしていた。捜査から外された所轄署の佐伯警部補は、嘗て囮捜査で組んだ事の在る津久井の身の潔白を証明する為、有志達たちと共に極秘裡に捜査を始めたが・・・。
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この作品、当初は「うたう警官」というタイトルだったのを、映画化が決まった際に「笑う警官」に改題されたそうだ。(海外に同タイトルの有名な作品が在る。)「うたう」は「警察組織を裏切る証言をする。」という意味で使われており、個人的には「うたう警官」のままの方が中身を良く表していて良かった様に思う。
内容的には「現代版必殺仕事人」といった趣。警察組織に属し乍ら、組織を守る為に一人の警察官の命を生け贄にしようとしている上層部に反旗を翻した者達の“闘い”が描かれている。「警察関係者で在り乍ら、公的には動けないもどかしさ。」、「疑心暗鬼を生じさせる情報漏れ。」、「体面を取り繕う事ばかりに汲々としている警察組織。」、「錯綜したスリリングな展開。」等、非常に読み応えの在る作品だ。
特定の組織や人間と癒着させないが為、安直に大幅な配置転換を行い、それが適材適所で無かったり、ベテランが積み上げて来たノウハウを水泡に帰させる結果になっていたとしたら。又、物語としては面白いが、組織を守るが為に一人の人間の生命を奪うという事が実際に在ったとしたら、それは非常に怖い事。否、実際にそういった事が在るのかもしれない。
総合評価は星4つ。
この事件や2003年11月に発覚した「北海道警裏金事件」等、警察の不祥事をモチーフにして書かれたのが、佐々木譲氏の「笑う警官」だ。
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札幌市内のアパートで、女性の変死体が発見された。遺体の女性は北海道警察本部生活安全部に所属し、“ミス道警”にも選ばれた水村朝美巡査と判明。容疑者となった交際相手は、同じ本部に所属する津久井巡査部長。一昨年、拳銃摘発数で日本一の道警本部生活安全部の郡司警部が数多くの拳銃を不法所持していたばかりか、覚醒剤の密売買にも手を染めていたという事で逮捕されていたが、津久井は郡司の元部下だった。
やがて、津久井に対する射殺命令が出てしまう。確固たる証拠も無いままに、射殺命令が出てしまう異常さ。その裏には警察内部の不祥事に付いて、津久井が公に証言する事を恐れる上層部の思惑が見え隠れしていた。捜査から外された所轄署の佐伯警部補は、嘗て囮捜査で組んだ事の在る津久井の身の潔白を証明する為、有志達たちと共に極秘裡に捜査を始めたが・・・。
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この作品、当初は「うたう警官」というタイトルだったのを、映画化が決まった際に「笑う警官」に改題されたそうだ。(海外に同タイトルの有名な作品が在る。)「うたう」は「警察組織を裏切る証言をする。」という意味で使われており、個人的には「うたう警官」のままの方が中身を良く表していて良かった様に思う。
内容的には「現代版必殺仕事人」といった趣。警察組織に属し乍ら、組織を守る為に一人の警察官の命を生け贄にしようとしている上層部に反旗を翻した者達の“闘い”が描かれている。「警察関係者で在り乍ら、公的には動けないもどかしさ。」、「疑心暗鬼を生じさせる情報漏れ。」、「体面を取り繕う事ばかりに汲々としている警察組織。」、「錯綜したスリリングな展開。」等、非常に読み応えの在る作品だ。
特定の組織や人間と癒着させないが為、安直に大幅な配置転換を行い、それが適材適所で無かったり、ベテランが積み上げて来たノウハウを水泡に帰させる結果になっていたとしたら。又、物語としては面白いが、組織を守るが為に一人の人間の生命を奪うという事が実際に在ったとしたら、それは非常に怖い事。否、実際にそういった事が在るのかもしれない。
総合評価は星4つ。

giants-55さんの書評を読んで購入する書籍も多いのですが、今回も「笑う警官」を本日購入してきたしだいです。
佐々木譲氏の作品を読むのは初めてなので、楽しみです。
他の記事に比べると、書籍関連の記事への書き込みは概して少ないので、書き込み戴いたのが嬉しいです。それだけでは無く、自分の評価を基に「笑う警官」を購入されたというのですから、「取り上げて良かった。」と喜び一杯。
佐々木譲氏の作品を読んだのは「警官の血」(http://blog.goo.ne.jp/giants-55/e/02f414bd8c448907233907fd05240859)が初めてでしたが、その面白さに引き込まれてしまい、あっと言う間に読みえ終えてしまいました。この作品の読後感が良ければ、「警官の血」も読まれる事を御奨め致します。