**********************************************************
本能寺の変より4年前、天正6年の冬。織田信長に叛旗を翻して、有岡城に立て籠もった荒木村重は、城内で起きる難事件に翻弄される。動揺する人心を落ち着かせる為、村重は、土牢の囚人にして織田方の軍師・黒田官兵衛に謎を解く様に求めた。事件の裏には、何が潜むのか?戦と推理の果てに村重は、官兵衛は何を企んでいるのか?
**********************************************************
米澤穂信氏の小説「黒牢城」は、戦国時代の武将で在る荒木村重と黒田官兵衛が主役。「ミステリーを十八番とする米澤氏が、歴史小説を書いたんだ。」と驚いた。読み始めると、本格的な歴史小説という感じ。でも、本質的にはミステリー。
大河ドラマ「麒麟がくる」で一般的な知名度が上がった様に思うが、荒木村重と言えば「織田信長に謀反を起こす。」、「有岡城に立て籠もった彼を翻意させる為に遣って来た黒田官兵衛を、土牢に幽閉する。」、「“妻”や家臣等を城内に残し、僅かな側近だけを連れて、密かに有岡城を脱出。結果として、残された者達は処刑される。」という逸話が有名。物事は一面からだけでは捉えられないけれど、個人的には「“身内”を捨て、自分だけ助かった卑怯者。」というイメージが在る。
周りを信長軍に包囲され、籠城を続ける荒木村重。状況はどんどん荒木軍に不利となって行く中、城内では次々と難事件が発生し、家臣達が亡くなって行く。「家臣達が、自分に信頼を置けなくなって行っているのではないか?」と感じ始めた村重は、軈て「家臣達の中に、信長に通じる裏切者が居るのでは?」という疑心暗鬼の思いを持つ様に。でも、そんな疑念を打ち明けるに足る“器”を持った家臣が存在しない事から、村重は事件が発生する度、“敵”で在る黒田官兵衛に相談し、官兵衛が謎を解く手掛かりを示してくれる・・・というストーリー。牢に閉じ込められた状態の官兵衛が、村重が与える情報だけで謎を解く訳で、“安楽椅子探偵物”と言える。
序章、4つの章、そして終章で構成されている。個人的に一番面白かったのは「第2章 花影手柄」で、“謎”が解けた際には、すっきり感が在った。
読み進めて行く内に、全ての事件に関わった人物(“真犯人”と呼ぶには、少し違う気がする。)が存在する事に思いが到る。其れは当てられたのだけれど、動機が判らなかった。動機が明らかとなっても、「うーん・・・。」という感じで、すっきりしなかった。
米澤作品としては少々“毛色”が変わった感じは在るが、歴史小説としてのみならず、ミステリーとしても悪く無い。
総合評価は、星4つとする。