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羊毛高校文化祭の2日目の午後、2年2組の御化け屋敷で、首吊り幽霊に扮していたクラス委員・旭川明日葉(あさひかわ あしたば)の絞殺死体が発見された。彼女に想いを寄せていた「僕」事閑寺尚(かんてら なお)は、打ち拉がれ乍らも、其の仇を討つべく、クラスメートの甲森瑠璃子(こうもり りるこ)と共に、調査に乗り出す。幽霊役の彼女は何時、本物の死体になったのか?
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第18回(2019年)「『このミステリーがすごい!』大賞」の優秀賞に選ばれた小説「幽霊たちの不在証明」(著者:朝永理人氏)は、「高校の文化祭で催された御化け屋敷で、1人の女子高生が絞殺された。警察の当初の見立てでは、絞殺された時間には『1時間46分』もの幅が在った。」という設定。
探偵役・甲森瑠璃子の推理により、“明日葉が死体となった時間”がどんどん狭められて行く。其の過程は非常に論理的で在り、読ませる内容だと思う。此の点“だけ”に関して言えば、ミステリーとして良い評価を与えられるだろう。
でも、全体を通してとなると、合格点を与えられる内容では無い。其の理由は、「すらすらと読み進めるのが、とてもしんどい。」からだ。
ジャンル的には“ライトノヴェル調ミステリー”となる此の作品、「甲森瑠璃子(こうもり “りる”こ)」や「宇和島ざくろ子(うわじま ざくろこ)」、「蛇原学(じゃばら まなぶ)」、「僧正渚(そうじょう なぎさ)」、「雹垣蝋子(ひょうがき ろうこ)」等々、登場人物達の個性的過ぎる名前に現実感が無く、とてもしんどい。
又、“読者を笑わせ様としている記述”が余りにもねちっこく(自分が嫌いな“欽ちゃんの笑い”に似ている。)、本当にげんなりしてしまう。
明日葉が絞殺死体で見付かる迄の流れがだらだらとしている締まりが無く、教室に設けられた御化け屋敷の構造が判り難いのも、すらすらと読み進めるのを妨げさせている要因。
総合評価は、星2.5個とする。