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小学校4年生の中尾文吾(なかお ぶんご)が、自宅で襲われた。補助教員の谷村梢(たにむら こずえ)は文吾から、「スーパーで、教師の万引きを目撃した。」と聞いていた。だが襲われる直前、文吾が梢の名前を呼ぶ声を、近所の人が聞いていたと言う。疑惑の目を向けられた梢は・・・。
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7つの短編小説で構成された「波形の声」(著者:長岡弘樹氏)。冒頭の梗概は、標題でも在る「波形の声」に付いて。
「何気無い“物”が、謎を解き明かす“証拠”となる。」というのはミステリーの御約束では在るけれど、長岡作品は其の“物”が絶妙に用いらているし、「そうだったのか。」という遣られた感も大きい。勘が良い方ならばタイトルだけでピンと来るかもしれないけれど、「波形の声」で用いられた或る物(昔は自分も、雑誌の付録で作ったけれど。)なんぞは、見たり使ったりした事が無い若い世代には、目新しさを感じる事だろう。
「波形の声」の他に、個人的には「わけありの街」と「準備室」という作品が印象に強く残った。又、後味の悪さで言えば、「ハガニアの霧」という作品が一番かも。残念乍ら此の作品、謎解き自体は比較的早い段階で出来てしまったが。
総合評価は、星3.5個とする。
マヌケ様が指摘されている疑問は、自分も持ちました。特に「携帯電話を飲み込んだ犬」というのには、「そんな事在るかなあ。」と。確かに、何でも飲み込んじゃう犬っていうのも居る事は居ますが・・・。
特定の出版社が主催している「賞」には、其の出版社が「売り込みたい作品」を意図的に授賞させるという感じがする事が在りますね。某男性俳優が受賞した賞なんぞもそうですし、芥川賞や直木賞にもそういった面が在ると言われていますね。
「賞」は飽く迄も参考や指標程度と捉え、実際に書店で手に取ってみて、「本当に面白いのかどうか?」を読者自身が見極める。そういう当たり前の事が重要なのでしょう。
御手製の蓄音器の件ですが、件の男の子が先生の名前を“吹き込んだ際の声”が、近所に聞かれたという風に捉えていました。当該作品が手元に無いので、記憶違いかもしれませんが、「蓄音器自体を知らない男の子が、手作りした物に吹き込んだのだから、興奮も在って相当大きな声を出したのだろうな。」と読んでいて思いましたので、もしそうで在れば、彼の展開は在り得るかなあと。記憶違いだったら済みません。
「ソノシート」という言葉の響きだけで、何とも言えない懐かしさを覚えます。以前にも書いたのですが、小学館の学習雑誌「小学○年生」に、紙製のレコード・プレーヤーが付録で付いており、夢中になって組み立てたもの。ペラペラのソノシートは、気を付けていても折れ曲がったり、傷が付いてしまい、聞けなくなってしまいましたね。
近年、書店では子供というよりも、実際には親にターゲットを絞った様な「学習セット」が多く置かれる様になりました。嘘発見器とかペットボトルを使用した掃除機等、「面白そう。」と感じる物が結構在ります。