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ビジネス・センスを備えた人材の育成を目指す木津庭商科大学では、学食等での支払いのみならず、家賃の支払いや単位の売買にも使用出来る「ポイント」を獲得する為、学生達が鎬を削っていた。そうした大学に於て、サークルとは、共通の趣味の為に存在するのでは無く、事業を行う為に存在していた。
家庭の都合により、突如残り半年で卒業しなければ成らなくなった2年生の降町歩(ふるまち あゆむ)は、不正にポイントを稼ぐ者達を摘発する「監査ゼミ」に所属する。「家庭教師サークルを装い、ガールズ・バーを運営していると噂が出ているサークル。」に調査に行くが、逆に取り込まれてしまい・・・。
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或る実業家が「諸外国との競争力を失いつつ在る日本経済に危機感を抱き、『学生の内からビジネスに触れる事で、抜け目の無い商売人を育てたい。」と考え、設立した木津庭商科大学。「事業ポイント」と名付けられた、学内で"のみ"流通する"仮想通貨"が存在し、其の事業ポイントでは単位の売買すらも出来てしまう。学生達はビジネス・センスを駆使し、事業ポイントの獲得に鎬を削る。第22回(2023年)「『このミステリーがすごい!』大賞」で文庫グランプリを受賞し、そして上梓された小説「卒業のための犯罪プラン」(著者:浅瀬明氏)の基本設定だ。
実に奇抜な設定だと思う。でも、奇抜だからこそ、色々"抜け道"も使えそう。例えば「"一般貨幣"を使って、事業ポイントをバンバン購入出来るのでは?」といった物もそうだが、「考えられ得る抜け道には、きちんと"封じ込める設定"が為されている。」のは大した物だ。とは言え、封じ込める設定が少なく無いからこそ、回りくどさを感じてしまう読者も存在するに違い無い。其の辺は、読む人によって判断が分かれる所だろう。
広義で言えば、「クライム・ノヴェル(犯罪小説)」。ブラック・ユーモア的な面も、全く無い訳では無い。"料理法"を誤れば"不快さしか残らない作品"に成り兼ねないが、テンポの良いストーリー展開が、不快さを減じさせている。惜しむらくは、登場人物達のキャラクター設定に浅さを感じてしまう所。主人公の降町歩こそ其れなりのキャラクター設定が為されているけれど、他は浅過ぎる。奇抜な設定は新人作家として「見事!」と思えるだけに、其れが残念。又、結末もピンと来ない。
総合評価は、星3つとする。