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「蝸牛、何処へ? 近畿では半数が絶滅危機 市街地化や乾燥原因と識者」(7月13日、時事通信)
梅雨の時期、公園等で良く見掛けられた蝸牛の姿が少なくなっている。
識者は、市街地化の進展や乾燥化が原因と指摘。近畿地方では半数の種が絶滅の危機に直面しているとされ、移動能力に乏しい為、新たに緑地を設けても移るのが困難と言う。
蝸牛は貝の仲間で、日本には約800種生息する。滋賀県立琵琶湖博物館の中井克樹特別研究員は、各地で市街地化が進む事で、身近な場所で蝸牛が減少していると話す。粘液を使ってゆっくりと進む特性から、「近くに植樹等をしても、自力では移動出来ず、住み処とする事が出来ない。」と語る。
中井研究員によると、近畿地方にいる約200種の蝸牛の内、約100種に絶滅の恐れが在る。多くは山林等に居るが、酸性雨や鹿の食害により、植生や土壌環境が変化している事が影響している可能性が在ると言う。分布範囲が限られた種も多く、生息場所が1ヶ所でも無くなると、絶滅リスクが高まる事が多い。唯、中井氏は人の手で蝸牛を移す事に付いては、「在来種の生態に影響を与える可能性が在る。」として慎重な姿勢を示す。
貝類の寄生虫を研究する東邦大学の脇司准教授は、減少の要因の1つとして「乾燥化」を挙げる。蝸牛は乾燥した環境に弱く、湿った落ち葉の裏等を好む。都市部の公園等では落ち葉や朽ち木が除去される事が多く、「隠れる場所が無くなっている。」と指摘する。
減少を防ぐには、「今存在する蝸牛の生息場所を、守り続ける事が重要だ。」と訴える。「現状を多くの人に知って貰い、関心を持って貰う事も大切。」とし、「『瀬戸内蝸牛』や『出雲蝸牛』等、各地に固有の種が居る。先ずは『御当地蝸牛』から親しみを持って貰えれば。」と語った。
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梅雨の時期と言えば昔から、「紫陽花の葉の上を這う蝸牛。」という光景を思い浮かべる。そういうイラストも多いが、実は紫陽花の葉には“毒”が在る為、其の事を知っている蝸牛が紫陽花の葉を食する事は無く、単純に雨風を避ける為に、蝸牛は紫陽花の葉の上を這っているのだとか。
そんな蝸牛の個体数が減っており、近畿地方では半数の種が絶滅の危機に直面していると言う。自然界の動植物が減り、絶滅の危機に直面しているという場合、大概は「人間が原因。」だったりする物だが、蝸牛の個体数が減っているのも「市街地化の進展や乾燥化」が原因という事で、矢張り「人間が原因。」という面は大きい様に思う。
又、「植生や土壌環境が変化している。」のには酸性雨の影響も在るという事だが、酸性雨が「化石燃料の燃焼等によって放出される二酸化硫黄や窒素酸化物が原因。」となると、此れ又、「人間が原因。」と言えなくも無いだろう。
元記事の中で中井研究員は、「人の手で蝸牛を移す事に付いては、『在来種の生態に影響を与える可能性が在る。』として慎重な姿勢を示す。」との事で、蝸牛の絶滅リスクを下げる方策は、決して簡単では無い様だ。