ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「株価暴落」

2013年06月09日 | 書籍関連

*********************************

巨大スーパー「一風堂」を襲った連続爆破事件。企業テロ示唆する犯行声明に、株価暴落。一風堂の巨額支援要請巡って、メイン・バンクの白水銀行では、審査部の板東洋史(ばんどう ひろし)は企画部の二戸哲也(にと てつや)と対立する。

 

一方、警視庁の野猿(やえん)刑事架かって来たタレコミ電話で犯人と目された男の父は、一風堂の強引な出店で自殺に追い込まれていた。

*********************************

 

元銀行員の作家・池井戸潤氏の小説「株価暴落」を読了。9年前に書き下ろし刊行された此の作品、巨大スーパー「一風堂」の目黒店の食品売り場で爆発テロが発生し、多数の死傷者が出たという状況から、ストーリーは展開して行く。事件発生直後、一風堂のHP投書コーナーに、、「案山子」を名乗る人物からの書き込みが発見され、其処には「カリスマ創業者として一風堂を『グループ売上2兆円、傘下に数百社を擁する超巨大企業に育て上げるも、其の独裁的な手法で多くの人間を路頭に迷わせ、挙句に一風堂に1兆円を超す有利子負債抱えさせる事になった会長・風間耕造(かざま こうぞう)と、其の女婿にして社長の西原竹史(にしはら たけし)の速やかなる辞任。」を求めると共に、「要求が受け容れられない場合は、新たなるテロを行う。」との“宣戦布告”が在った。

 

池井戸作品には、下敷きとなる「人物」や「事件」が在るケースが結構在り、其れ等を頭の片隅に置き乍ら読むと、又、別の“味わい”が在る。先日読了した「空飛ぶタイヤ」は「三菱リコール隠し」が、そして「鉄の骨」は「大林組の元幹部等、ゼネコン5社の営業担当者が逮捕された、名古屋市発注の地下鉄延伸工事を巡る談合事件。」がといった具合に下敷きが存在している訳だが、今回の「株価暴落」は中内功氏」と彼が率いていた「ダイエー・グループ」が下敷きになっているのは間違い無いだろう。

 

元銀行員だけ在って、経済用語がポンポン出て来るのだが、シンプル且つ判り易く説明されており、経済面に弱い自分には勉強になった。又、犯人」呼び「の犯行目的」は意外さが在り、ミステリーとしても読み応えが在る。

 

「正しい事をしている人間が報われず、不正働く人間が利益を得る。」という理不尽は、現実社会で少なからず見受けられるが、池井戸作品は波乱万丈が在るものの、最後は「正しい事をしている人間が報われ、不正を働く人間は“罰”を受ける。」というのが、カタルシスを得られて良い。

 

総合評価は、星3.5個


コメント (2)    この記事についてブログを書く
« 東京湾唯一のXXX | トップ | 「医者に殺されない47の心得」 »

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (マヌケ)
2013-06-12 12:59:20
株価も為替も乱高下していて海外への送金や精算がとてもやっかいな昨今です。 経済の理論で正しいことと、正義とは若干かい離するものがありますね。 企業小説では人間の思いや情や情念などさまざまな感情が事件を引き起こしたり、ぶつかったり、ドラマがあるのですが、実態経済はとてもクールです。 大多数の一般人は波にのまれて損してあきらめたり、たまたま大儲けしてしまったりしますが、地球規模でグローバルにお金を動かしているファンドなどからしてみれば、年金や退職金も屑銭の集まりにしか見えないでしょう。 ファンドが巨額の資金を引き払うことで、死人が出たりしても、遠いどこか知らない場所の出来事で、屑銭は参加しているけれど無視されているようなものです。 テクノロジーもファンドの味方ですし。 世の中には投資家に口出しされることを嫌い、あえて上場しない企業もありますが、アウトドア用品のパタゴニアなどがそうです。 創業者の信念で上場しない、会社は社員のモノ、利益は社員と社会のために使いたいということで、たとえば、牧羊のために草原に張り巡らしてそのあと、放置された有刺鉄線をボランティアで取り除く活動に資金を投じたりしています。 ヘッジのやつらには爪の垢でも飲ませたいです。 異動することになった我が部局の上長に「下町ロケット」を贈ろうと思いまして、昨日書店で購入しました。 池井戸潤作品の中ではいちばん好きな作品です。 
返信する
>マヌケ様 (giants-55)
2013-06-12 21:36:23
書き込み有難う御座いました。

世の中は綺麗事だけでは回らず、寧ろダーティーな部分が主流となっているという現実は在りますが、そうは言っても、必死で頑張っている者が馬鹿を見る世の中というのは、何とも遣り切れない。そんな思いをスッキリさせてくれる池井戸作品というのは、本当に貴重です。
返信する

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。