ノムさんが好んで使う言葉に、「勝ちに、不思議の勝ち在り。負けに、不思議の負け無し。」というのが在る。元々は、江戸時代の中期~後期を生きた大名・松浦清が著した剣術書「剣談」の中で記された言葉という事だが、「勝負事では『何で勝てたんだろう?』という不思議な勝ちは在っても、負けに関しては『負けに到る必然的な要因』が在り、不思議な負けは在り得ない。」という意味。
昨日行われた日本シリーズの第3戦はファイターズが初勝利を上げたが、少なくとも負けたジャイアンツの闘い方は、「負けに、不思議な負け無し。」を感じさせる内容だった。
「短期決戦で監督に最も求められるのは、選手の好不調を逸早く見抜き、不調な選手は直ぐに交代させる、又は起用しない。」という事は、過去に何度も書いている。そして「選手の好不調の見極めに関する原監督の鈍さ」というのも、同様に何度も書いている。
昨日のジャイアンツの先発D.J.ホールトン投手はストライクを取るのに汲々としていて、完璧に捉えられた甘い球が続いていたというのに、4点を取られる迄引っ張り続けたのが全く解せない。(昨日の試合を解説していた)工藤公康氏が「(3回裏に)2つの四球を与え、1死1&2塁となった時点で(ホールトン投手を)代えると思った。代えないで稲葉篤紀選手にタイムリーを打たれ3点目を失ったが、其れでも代えなかった。もう此処で代えないと、ジャイアンツにとっては致命的な失点を食らう事になる思うのですが。」と語っていたけれど、自分も全く同感だった。案の定、続く小谷野栄一選手にもタイムリーを打たれ、4点目を失う事に。
原辰徳監督としては「3回途中という早い回で降板させたくなかった。」という事なのかもしれないが、「素人目にも絶不調なホールトン投手を引っ張り過ぎた事で、ジャイアンツに与える悪影響の大きさ。」を考慮して欲しかった。クライマックスシリーズのファイナル・ステージ第2戦で先発した際もホールトン投手は絶不調で、余りにも長い守備時間がジャイアンツの打撃陣の調子を崩させたと思っている。昨日も守備時間が長く、ジャイアンツの打撃陣に、少なくとも良い影響は与えなかったろう。
絶不調のホールトン投手を引っ張り過ぎる事で一番懸念されたのは、“眠っていたファイターズ打線”を目覚めさせてしまう事。日本シリーズ開幕前の予想でファイターズの「打のキー・パーソン」として稲葉選手の名前を挙げたが、彼を目覚めさせてしまっただけで無く、ホールトン投手を引っ張り過ぎた事で、ファイターズ打線全体を目覚めさせてしまった。「不調の選手は、眠らせ続ける。」というのも、短期決戦の鉄則だというのに・・・。
大事な場面でのエラー連発というのも「負けに、不思議の負け無し。」の要因では在るが、矢張り一番の要因は「絶不調のホールトン投手を引っ張り過ぎた。」事ではなかろうか。
此れでジャイアンツの「2勝1敗」となった訳で、未だジャイアンツが有利な状況には在る。しかし今日の試合でジャイアンツが負け、「2勝2敗」のタイとなれば、ファイターズがグッと有利になるだろう。(日本シリーズ)第2戦でジャイアンツは勝利したものの、ファイターズの先発・武田勝投手に大苦戦し、1点しか奪えなかった事から、次に彼が先発した際には、可成りの確率でジャイアンツが負けるだろうから。
だからこそ今日の第4戦、ジャイアンツは死に物狂いで勝ちに行かなければならない。ホールトン投手を引っ張り過ぎて致命的な失点を食らった際、原監督はベンチで苦笑いを浮かべていたが、そんな余裕めいた事をされると、見ている側は白けてしまう。選手が不調と思えば、即座に代えるべし。昨日の「嫌な負け」を払拭出来るかどうかは、偏に今日の試合に掛かっている。