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特殊技術で開発された、小型飛行船「ジェリーフィッシュ」。其の発明者で在るフィリップ・ファイファー教授を中心とした技術開発メンバー6人は、次世代型ジェリーフィッシュの長期航空試験に臨んでいた。ところがフライト中に、密室状態の艇内で、メンバーの1人が死体となって発見される。更に、自動航行プログラムが暴走し、彼等は試験機毎、雪山に閉じ込められてしまう。脱出する術も無い中、次々と犠牲者が・・・。
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市川憂人氏の「ジェリーフィッシュは凍らない」は、第26回(2016年)鮎川哲也賞を受賞した小説。「このミステリーがすごい!2017年版【国内編】」の10位、「2016週刊文春ミステリーベスト10【国内編】」の5位、そして「2017本格ミステリ・ベスト10【国内編】」では3位に選ばれている。四十路を迎えた年の文壇デビューという事だが、デビュー作でこんなにも高い評価を得たのは凄い。
ジェリーフィッシュとは「海月」の事で、小説の中では海月型の小型飛行船の名称として使われている。1980年代、或る国で秘密裡にジェリーフィッシュの航空試験が行われるのだが、墜落事故を起こしてしまう。閉ざされた雪山が墜落現場で、乗員6人は全て死亡していたのだが、問題は全員が“殺されていた”という事。閉ざされた雪山の、閉ざされた艇内で見付かった6つの他殺体。「全員が殺されたのならば、誰が犯人なのか?」という、アガサ・クリスティー女史の名作「そして誰もいなくなった」を髣髴させる内容だ。
「捜査陣」、「艇内の人々」、「過去の人々」という3つの視点から、話は進んで行く。SF設定といった感じも在るし、“密室内”で次々と人が殺されて行くという「そして誰もいなくなった」的世界観も面白い。
真犯人と其の動機に付いては、完全に当てる事が出来た。ミステリーを読み込んでいる人ならば、比較的容易いだろう。でも、真犯人の“正体”に関しては、完全に騙された。全く別の人間が、真犯人に成り済ましていると思い込んでいたから。
女性刑事と男性の部下との遣り取り、そして技術的な説明に付いては、人によってくどくどしさを感じるかもしれず、好き嫌いが分かれる所だろう。
総合評価は、星3.5個とする。