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動物診療所を営む獣医・遠野太一(とおの たいち)の幼馴染みでペット・ショップを経営する小塚恭平(こづか きょうへい)が、自宅マンションでラッセルクサリヘビに噛まれて死んだ。ワシントン条約で取引が規制されている毒蛇が、何故こんな場に?
恭平から電話を受けて、現場に駆け付けた太一は、恭平の妹で今は東京税関で働いている利香(りか)と共に、其の謎を解き明かそうとするが、周囲に不穏な出来事が忍び寄り・・・。
最後にまさかの展開が待ち受ける!
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第17回(2018年)「『このミステリーがすごい!』大賞」の“隠し玉”に選ばれた小説「クサリヘビ殺人事件 蛇のしっぽがつかめない」(著者:越尾圭氏)を読了。幼馴染みがラッセルクサリヘビなる珍しい毒蛇によって“殺害”された謎を解き明かす、獣医の姿を描いた作品だ。
巻末の「解説」にも記されているが、「毒蛇による殺人事件」と言うと、ミステリー好きとしてはシャーロック・ホームズ・シリーズの名作「まだらの紐」を思い浮かべてしまう訳だが、「まだらの紐」とは異なり、今回の作品では「“最初から”凶器が毒蛇で在る事が明らかとなっており、尚且つ其の毒蛇は捕獲済み。」という違いが在る。
「恭平は何故、死の間際に太一に電話を掛けて来たのか?」、「恭平は何故、殺害されなければならなかったのか?」、「何故、毒蛇を使って殺害するという面倒臭い方法が取られたのか?」等々、幾つもの謎が提示されており、其れ等の謎は“取り敢えず”解決される形にはなっている。だが、“消化不良感”は否めず、特に「恭平は何故、死の間際に太一に電話を掛けて来たのか?」に付いては、「うーん・・・。」という感じだった。
とは言え、「新人にしてはストーリーの組み立てが上手いし、登場人物達のキャラクター設定も悪く無く、最後迄読み手を引っ張り続ける力は在る作品。」だとは思う。其れだけに、消化不良感の残る設定は残念だった。
総合評価は、星3つとする。