松尾芭蕉の俳諧で、横溝正史氏の小説「獄門島」にも登場する「むざんやな 甲の下の きりぎりす」というのが在る。昨日、クライマックス・シリーズ(CS)のファースト・ステージでベイスターズに敗れ、“終戦”を迎えたジャイアンツ。今季のジャイアンツを喩えるなら、「無残やな 甲の下の ジャビット」という感じか。
1勝1敗で迎えた昨日、ジャイアンツの先発が内海哲也投手と判明した時点で、「ベイスターズ打線が相手では、序盤に滅多打ちにされそう。」という嫌な予感が在った。試合開始時間には外出していたので、携帯電話で試合状況を確認した所、「1回表、ベイスターズに2点を奪われ、1死1&3塁のピンチ。」との事。「矢張りなあ。此の回、更に大量失点するのは間違い無し。」と思い、以降、携帯電話で試合状況を確認しなかった。帰宅し、「大負けしてるんだろうなあ。」と思ってTVを点けたら、6回裏のジャイアンツの攻撃で、村田修一選手が同点ホームランを放ち、ジャイアンツが「3対3」の同点に追い付いた所。「彼から、ベイスターズに1点しか奪われなかったのか。」と少々驚き、以降の展開を見守っていたのだが・・・。
同点の儘迎えた9回裏、ジャイアンツの攻撃。無死1塁で代走に出た鈴木尚広選手が、相手投手の牽制球に引っ掛かってアウトになった時点で、「流れがベイスターズに向かってしまったな。」と感じた。「此処数年、チームのピンチを何度も救ってくれた鈴木選手。」なので悪くは言いたく無いが、チーム全体の焦りを象徴するミスだったと思う。
ジャイアンツ・ファンの村長様が、「坂本個人軍?」という記事を書いておられる。「CSでのジャイアンツ打線、坂本勇人選手が驚異的な成績を見せる一方、他の打者は完璧に封じ込められている状況。」を“坂本個人軍”と表しているのだが、全く其の通りだ。「打てない打撃陣」に「ミス連発の投打」では、勝ち抜ける筈も無い。
過去に何度か書いている様に、「日本シリーズはレギュラー・シーズンで優勝したチーム同士が闘うべきで、CSは無くした方が良い。」と思っている。だから、ジャイアンツがCSを勝ち抜く事を期待していなかったので、そういう意味では悔しい結果では無いのだけれど、心の中で「『ジャイアンツがする事は全て悪!』と決め付ける人が少なからず居るから、(レギュラー・シーズンで2位だった)ジャイアンツがCSを勝ち抜き、日本シリーズに進出する事にでもなれば、『CSなんか廃止しろ!』という声が多勢になるかも。」という思いが在ったのも事実だ。
CSを見ていて改めて思ったのは、「此の儘で来季に臨めば、ジャイアンツは優勝どころか、Aクラス入りも難しいだろう。」という事。2ヶ月前の記事「ジャイアンツこそ“超変革”が必要」で記した様に、超変革が成し遂げられない限り、ジャイアンツに“未来”は無い。
詳細は「ジャイアンツこそ“超変革”が必要」を見て貰いたいが、「“使えない選手”の整理」、「小林誠司選手の鍛え上げ」、そして「高橋由伸監督自身の超変革」は必須。特に“TPOに応じた柔軟で機敏な采配”が出来なかった高橋監督には、ミスを繰り返す選手を2軍に落とす厳しさも含め、大きく変わって貰わなければ困る。“自分のスタイル”に拘泥し、頑なな采配を続けていたら、「監督としてチームを優勝させる事無く、解任された堀内恒夫元監督。」の二の舞を踏む事になるだろう。
「ジャイアンツこそ“超変革”が必要」では触れなかったが、菅野智之投手と澤村拓一投手も超変革が必要だ。今季、菅野投手は「最優秀防御率」、澤村投手は「最多セーヴ投手」のタイトルを其れ其れ受賞。数字だけ見れば見事だが、彼等が置かれた立場を考えると、“中身”としては大きな不満が残る。
前半は気の毒な面が在ったものの、後半以降は大事な場面で勝てず、挙句に体調不良でCSに登板出来なかった菅野投手。どういう理由が在れ「此処ぞという試合で勝てない投手は、エースと呼ぶに値しない。」し、体調不良で登板出来ないなんていうのは言語道断。彼は、2年前のCSも登板出来なかったという過去を持つ。其の時は故障という事で、同情の余地は在った。唯、今回が同じ故障で在ったとしても、こうも続くと“プロとしての自己管理”に問題在り。
又、澤村投手に関しては、抑えに成功した時でも、すんなりと抑えたという印象が薄い。「先頭打者にヒットを打たれたり、四球を連発する等で大ピンチを作るも、何とか抑え切った。」という感じ。失敗した際は、四球連発で大量失点という自滅型。「セルフコントロールが出来ない。」というのが、彼の最大の欠点だろう。数字は残すものの、抑えとしてはチームに与える悪影響が大き過ぎる。安定したチーム状況を作り出す為にも、来季は別の抑え投手を作って貰いたい。
最後に、「内田順三打撃コーチを1軍から外し、2&3軍の巡回打撃コーチとする。代わって、現在2軍の二岡智宏打撃コーチを1軍打撃コーチに昇格させる。」という報道が在ったけれど、自分は大反対。何度か書いている様に、内田氏は打撃コーチとして非常に有能だと思っている。「若手選手の育成の為。」というのが内田氏を2&3軍巡回打撃コーチに配置転換する理由だそうだが、「チームが優勝出来なかった為のスケープゴートにされた。」という感じがする。選手時代から仲が良く、気心知れた二岡氏が1軍ベンチに入る。」というのは、高橋監督にとっても好ましい事なのかもしれないが、“御友達の寄せ集め”となってしまう事を危惧する。