ば○こう○ちの納得いかないコーナー

「世の中の不条理な出来事」に吼えるブログ。(映画及び小説の評価は、「星5つ」を最高と定義。)

「陸王」

2016年10月12日 | 書籍関連

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埼玉県行田市に在る「こはぜ屋」は、百年の歴史有する老舗足袋業者だ。と言っても、其の実態は従業員20名の零細企業で、業績じり貧社長の宮沢紘一(みやざわ こういち)は、銀行から融資を引き出すのにも苦労する日々を送っていた。

 

そんな或る日、宮沢はふとした事から新たな事業計画を思い付く長年培って来た足袋業者のノウハウを生かしたランニング・シューズを開発してはどうか。

 

社内にプロジェクト・チームを立ち上げ、開発に着手する宮沢。然し、其の前には様々な障壁立ちはだかる。資金難、素材捜し、困難極めるソール(靴底)開発、大手シューズ・メーカーの妨害・・・。

 

チームワーク物作りへの情熱、そして仲間との熱い結び付きで難局に立ち向かっていく零細企業・こはぜ屋。果たして、彼等に未来は在るのか?

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池井戸潤氏の小説陸王」は、百年の歴史を有する老舗足袋業者「こはぜ屋」を舞台にしている。自分の世代で言えば、TVドラマムー」【動画】及び「ムー一族」【動画】で、老舗の足袋屋というのにシンパシーを感じている人も少なく無いだろう。

 

半沢直樹シリーズ」や「下町ロケットシリーズ」等、所謂企業物”で高い評価を得ている池井戸氏。「個性的なキャラクター、特に憎々しい“悪役”の存在。」と「波瀾万丈なストーリー展開。」というのは、良い小説に必須の条件だが、今回読んだ「陸王」も此の条件が当て嵌まる零細企業を小馬鹿にし、けんもほろろの対応をしたり、卑怯な手を使って潰しに掛かったりする“悪役達”に強い憤り覚え、主人公の宮沢達に「負けるな!」と応援している自分がた。

 

又、「どっぷりと感情移入させる。」という意味では、特に企業物の場合、“リアリティーの在る描写”というのが必要と思っている。元銀行マンという経歴から、融資に関する描写等、池井戸作品は生々しさが在って良い。

 

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ノーリスクの事業なんてありませんよ。」。ビジネスの原則だ。進むべき道を決めたら、あとは最大限の努力をして可能性を信じるしかない。でもね、実はそれが一番苦しいんですよ。保証のないものを信じるってことが。

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天の時は、地の利に如かず。地の利は、人の和に如かず。」という孟子訓え何事かを達成し様とするなら、タイミングや才能の優位さも大事だけれど、一番大事なのは人としての魅力や良い人間関係。という風に自分は解釈しているが、斬新なランニング・シューズ“陸王”を作り上げるべく、幾多の困難にも負けずに集まった人々には、“人の和”という物を強く感じた。

 

読んでいて、ついつい涙腺緩む。「下町ロケット」を読んだ時と、同じ状況だ。池井戸作品には、“弱き立場の人達への温かい目線”が常に感じられる。

 

総合評価は星4.5個。是非、読んで貰いたい!


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2 コメント

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零細企業の経営者 (右左あんつぁん)
2016-11-10 09:49:20
同じく、零細企業の経営者として、共感します。

「ノーリスクの事業などない」
本当です。しかし、息つく暇が欲しいです。
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>右左あんつぁん様 (giants-55)
2016-11-10 11:29:31
書き込み有難う御座いました。

「景気は、未だ良くなっていない。」と言い乍ら、莫大な内部留保を貯め込んでいる大企業が少なく無い中、中小企業の少なからずは、雇用者の生活を守る事に汲々としている。個人レヴェルだけでは無く、企業レヴェルでも格差が拡大している感じが在りますね。

父の家系には起業家、其れも零細企業を立ち上げた者が何人か居り、小さい頃に良く其の大変さを聞かされて来ました。現状維持に許り心を砕いていると、時代に取り残されてしまう。と言って、革新的な事許りに邁進していると、屋台骨が傾いてしまう。「経営者としては、其のバランスが難しいだろうなあ。」と、凡人として思ってしまいます。
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