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「日本の法医学者はひとり年間百体前後しか解剖しない。北欧の解剖医はひとり年間三百五十体解剖してます。日本の法医学者が欧米並みに働けば、異状死の解剖率はどうなりますか?」。即座に白鳥が答える。「そんな単純計算問題を、お偉い先生にさせようなんて失礼なヤツだな。三百五十体掛ける百五十人イコール五万二千五百体。異状死解剖率は三十パーセントを悠々超えるね。」。彦根は北山元警察庁刑事局長にウインクを投げかけながら言う。「法医学者たちに気合いを入れ、欧米なみに働かせるだけで現在十パーセントの異状死解剖率を三十パーセントにできる。十パーセント未満の実施率にシステム拡充して、いきなり五十パーセント達成を目指すより、現状を三十パーセントまで高める方が現実的かつ合理的です。」。
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海堂尊氏の小説「アリアドネの弾丸」は、「田口・白鳥シリーズ」の第5弾に当たる。同氏の作品群は多くの登場人物がクロス・オーバーし、「現在」、「過去」、「未来」を絶妙に行き来している事で、其れ其れの作品に対する読者の思い入れを増幅させていると言って良い。今回の「アリアドネの弾丸」も次から次へと懐かしい顔が登場し、どっぷりと海堂ワールドに浸る事が出来た。
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東城大学病院に導入された新型MRI「コロンブスエッグ」を中心に起こる事件の数々。更には、病院長・高階権太に収賄と殺人の容疑が掛けられてしまう。殺人現場に残されていた弾丸には、巧妙な罠が張り巡らされていた。
不定愁訴外来
の担当医師・田口公平が、駆け付けた厚生労働省の逸れ技官・白鳥圭輔と共に完全無欠のトリックに挑む。
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現役の医師だけ在って医療関連の用語が到る所に用いられているが、ド素人でも判る様に説明がされている。医療関連だけでは無く、理数系の用語もチラホラ出て来るし、典型的な文系人間の自分には其れだけで「凄いなあ。」と思ったりも。
「司法&警察vs.医療現場」という根深い対立が、今回の小説の1つのテーマ。既得権益を死守せんとする者達の、醜い争いが描かれている。
田口・白鳥シリーズの第1弾「チーム・バチスタの栄光」では「此れ以上は無い!」という位の不快感を覚えさせた白鳥だが、新作が出る毎に少しづつ沈静化されている感が在る。特に今回の作品は、初登場時の白鳥以上の嫌悪感を覚えさせる新キャラクターが登場する為、白鳥の存在感が非常に薄れてしまった・・・と思ったら、最後はしっかりと強烈な存在感を放ってくれた。
殺人の目的や真犯人に関してはズバリ当てられたが、メイン・トリックは「遣られた!」と感服。メイン・トリックに用いられたグッズに付いては、登場した時点で「ん?」と注意を払ってはいたのに。或る物が減らされている事は予想していたものの、まさかああいう方法で減らされていたとは・・・伏線の張り方は御見事!
殺人の目的や真犯人を当てられなかったら星4つは与えられたのだけれど、総合評価は星3.5個とする。
「日本の法医学者はひとり年間百体前後しか解剖しない。北欧の解剖医はひとり年間三百五十体解剖してます。日本の法医学者が欧米並みに働けば、異状死の解剖率はどうなりますか?」。即座に白鳥が答える。「そんな単純計算問題を、お偉い先生にさせようなんて失礼なヤツだな。三百五十体掛ける百五十人イコール五万二千五百体。異状死解剖率は三十パーセントを悠々超えるね。」。彦根は北山元警察庁刑事局長にウインクを投げかけながら言う。「法医学者たちに気合いを入れ、欧米なみに働かせるだけで現在十パーセントの異状死解剖率を三十パーセントにできる。十パーセント未満の実施率にシステム拡充して、いきなり五十パーセント達成を目指すより、現状を三十パーセントまで高める方が現実的かつ合理的です。」。
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海堂尊氏の小説「アリアドネの弾丸」は、「田口・白鳥シリーズ」の第5弾に当たる。同氏の作品群は多くの登場人物がクロス・オーバーし、「現在」、「過去」、「未来」を絶妙に行き来している事で、其れ其れの作品に対する読者の思い入れを増幅させていると言って良い。今回の「アリアドネの弾丸」も次から次へと懐かしい顔が登場し、どっぷりと海堂ワールドに浸る事が出来た。

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東城大学病院に導入された新型MRI「コロンブスエッグ」を中心に起こる事件の数々。更には、病院長・高階権太に収賄と殺人の容疑が掛けられてしまう。殺人現場に残されていた弾丸には、巧妙な罠が張り巡らされていた。
不定愁訴外来
の担当医師・田口公平が、駆け付けた厚生労働省の逸れ技官・白鳥圭輔と共に完全無欠のトリックに挑む。
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現役の医師だけ在って医療関連の用語が到る所に用いられているが、ド素人でも判る様に説明がされている。医療関連だけでは無く、理数系の用語もチラホラ出て来るし、典型的な文系人間の自分には其れだけで「凄いなあ。」と思ったりも。

「司法&警察vs.医療現場」という根深い対立が、今回の小説の1つのテーマ。既得権益を死守せんとする者達の、醜い争いが描かれている。
田口・白鳥シリーズの第1弾「チーム・バチスタの栄光」では「此れ以上は無い!」という位の不快感を覚えさせた白鳥だが、新作が出る毎に少しづつ沈静化されている感が在る。特に今回の作品は、初登場時の白鳥以上の嫌悪感を覚えさせる新キャラクターが登場する為、白鳥の存在感が非常に薄れてしまった・・・と思ったら、最後はしっかりと強烈な存在感を放ってくれた。

殺人の目的や真犯人に関してはズバリ当てられたが、メイン・トリックは「遣られた!」と感服。メイン・トリックに用いられたグッズに付いては、登場した時点で「ん?」と注意を払ってはいたのに。或る物が減らされている事は予想していたものの、まさかああいう方法で減らされていたとは・・・伏線の張り方は御見事!
殺人の目的や真犯人を当てられなかったら星4つは与えられたのだけれど、総合評価は星3.5個とする。
